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老人と少女

投稿が遅れました。

 〈スケルトン〉とは怒りや恨みを原動力に襲う魔物である。

 魔物と言うことでその怒りや恨みに具体性は無いものの、それらを発散させる力は持っている。

 即ち魔力で死体を動かし破壊をもたらすと言うことだ。


「カラカラ」


 骨の身がなる。

 飢餓や渇きなどと言った状態はあり得ないにしても、少なくなった魔力は確かに飢餓や渇きと言った感情を覚えさせる。

 生き物のように疲れることは無いにせよ。

 人間のように喜びが無いにせよ。

 彼らはそう――魔物であるのだから。

 ギギィ。


「……」


 食事をしようとしていた〈スケルトン〉に門の開く音が聞こえた。

 いや、実際は聞こえていないのかもしれない。

 しかし骨に響いた重低音とそこから流れる魔力を辿れば彼らの行動は自ずと決まってくる。


「カラカラ」


 知性が無いからこそ躊躇は無い。

 本能的に刹那的に門をくぐり抜ける。

 道は広く徐々に狭くなっていくつくり、バリケードによって作られた道に彼らは沿っていく。

 なぜなら道の先に“大量の魔石”――餌があるから。

 その渇きを潤そうと、満たされぬ負の感情を発散させようと彼らは魔石へと向かう。

 だから――。


 魔石の奥に立つ、女性に彼らは目がいかない。

 そして。


「魔剣アグニス――〈烈火の嘲笑〉」


 “魔剣”を一振り、一列に効率よく殺されに来た〈スケルトン〉は成す術も無く燃やされるのであった。




「なるほど、これが対〈スケルトン〉用の罠ですか?」

「はい、〈スケルトン〉は“特別に知性が無い”魔物です。大量の魔石で〈スケルトン〉をつり、魔剣を持ったレオジーナが彼らを焼く」


 メルはアレクと共にその光景を眺める。

 門を乗り越えようとする〈スケルトン〉は未だ存在するが、それでも殆どの〈スケルトン〉はレオジーナの元へと向かう。

 そのお陰でアレクとメルは余裕が出来たわけだが。


「やはりこれはベガの仕業か……」

「……分かりません」

「? どうして?」

「ベガちゃんの〈スケルトン〉は使役式……のはず。ベガちゃん自身が魔力で操っているのでこの様な罠には引っ掛かりません」

「……」


 それでも、というアレクの疑問が確かにあった。

 確かにベガであればこのようなことにはならないのかもしれない。

 しかし。


「アレク様の疑問にも理解できます。だからこそ、確かめに行くのです」


 ニッコリ微笑むメルは〈鎧天使〉を召喚して戦場へと赴いた。




 “少女”に与えられた役割はただ〈スケルトン〉を召喚するのみだった。

 仮面を付けて和服で着飾り、“恐怖を生み出す”。

 作業にも等しいそれは確かに重要な役に違いなかったが。


「退屈かな?」

「……」


 尋ねる少年が一人、それと天使を従える少女が一人いた。

 敵対の意思を見せる彼らに和服の少女は無言の反応を示す。

 そもそも、彼女には話す意味が無いのだ。

 会話すること自体に意味は無いがそれでも付き合うのは強者の余裕がそうさせたから。

 攻撃は加えず、先手を譲る。


「聞こえているのか、聞こえていないのか分かりませんが――その仮面は取ってもらいますね」


 メルの〈鎧天使〉が剣を振り上げ一閃。

 上空からの鋭き攻撃を屈むことで避けた和服の少女は続いてくるアレクを。


「〈ファング〉!」

「……」


 上下の斬撃を召喚した〈スケルトン〉を盾にすることで防ぐ。

 攻めの継続をメルは指示し再び〈鎧天使〉が攻撃を加えよとした刹那。


『〈死者の手〉』

「「!!」」


 二人は同時にその場から飛び去る。

 和服の少女の影が広がりその下から無数の骸の手が生えたのだ。

 白骨化したそれに掴まれた〈鎧天使〉は引きずり込まれるように闇へと溶けた。

 ビシリ。

 空間が少しひび割れた。

 引きずり込まれ砕かれた〈鎧天使〉は光の粒子となり空へと帰る。


「……」


 未だに会話は要らず。

 力の差を理解して引くのであれば追わない。

 更なる追撃を企てるのであれば――。


『〈囀る怨嗟〉』

「っ!」

「――アレクさん!」


 微かな予兆、アレクが剣を再び握る力を見た。

 ただ少し強く握っただけなのだがその敵意は十分に伝わる。

 地面から生えた顔の甲高い悲鳴によってメルらが動きを止めると同時に。

 バキっと世界が割れた。


「……」


 〈スケルトン〉を召喚する。

 度重なる力の行使は“チート”の証を刻んでいく。

 空間が割れる音はソルムードの市民に不安を覚えさせた。

 だが。


「〈主剣の大天使 アルビオン〉」

「この剣で我が道を作る――」

「……」


 自らの切り札を召喚したメルと闘気をためるアレクはお構いなく。

 世界の崩壊など彼らは知ったことではないのだ。

 同時に重い腰を上げたのはやはり“和服の少女”。

 やる気になったと言ったところだろう。底知れない力は世界を蹂躙しようとして――。

 ポン。


 肩を叩かれる。

 和服の少女の。


「「!」」

「……」


 驚いたのはアレクとメルの二人。

 気配が無かった。足跡も無かった。

 つまりそれは転移した。

 だがそれよりも驚愕したことは。


「……」


 ひび割れが収束していると言うこと。

 つまり、そのチートは抑えられたと言うことだ。

 少女の肩を叩いた謎の人物によって。


「終わりだ」

「……」




 ”老人”は終わりだと言った。

 つまり“ここにいる意味が無い”と言うことだ。

 突然現れた人物にメルは驚愕して動けない中。


「〈(「)道を切り開く(ロードオブカリバー)〉!」


 アレクは受け継いだ技を彼らにぶつける。

 逃がしはしない。

 ここで決着を付けるつもりで放った技は闖入者によって。


「〈ゴリアテの腕〉」


 地面に拳を突き立てる。

 それが合図なのか地面から生えた土の腕がその斬撃を食い止めた。

 ゴリゴリと腕を削るがそれは半壊もしないうちに止まり、終わる。

 渾身の一撃は彼によって止められた。

 そして。


「〈迷宮の(ミステリアミスト)〉」

「……」


 霧が辺り一面を覆う。

 紫色の作為的に発生した霧によってメルたちは一旦距離を取る。

 なぜならば。


「幻覚作用があります」

「ああ、分かっている」


 口と鼻を袖で押さえる。

 魔術的に生み出されたその霧は足止めの役割を十分に果たした。

 数分の時間が彼らの行く手を阻み霧共に彼らは忽然と姿を消したのだった。


チートについて書きたいと思います

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