襲撃と迎撃
サクッと終わらせます。
〈スケルトン〉の脅威とは弓や鉄砲と言った飛び道具に強いと言う点だ。
門の上で防衛する兵士たちは勿論、高台からの攻撃と言うのはどうしても飛び道具に頼ってしまう。
「く!」
兵士たちの苦悩する表情が波の如く進撃する〈スケルトン〉に映る。
無機質な髑髏は単純な命令しか与えられていないのか、門に向かって突撃を繰り返すのみだ。ただ単純な力まかせ。
だがしかし、正面からの斬り合いでしか攻略できないのは事実。
「あ、あいつは!!」
指さす兵士は黒い濁流から一人の少女を見つけた。
仮面を付け、“和服を着る”その少女を彼は一度見たことがあるのだ。
少女を指さし、ゴクリと緊張を飲んだ兵士は叫んだ。
「黒の魔物!! ベガだ!!」
数千体もの死者が今まさにソルムードを襲撃しようとしていた。
幾多の死者が門にぶつかり第一戦は開かれる。
様子見の一触は正しく兵士たちの練度を見るのと彼らの注意を引き付けるため。
和服の少女は不動のまま戦況は動いて行き――。
「門はまだ、破られていないんですよね?」
「はい、敵が〈スケルトン〉と言うこともあり“今はまだ”大丈夫です」
「「「?!」」」
門の上へと繋がる階段を少女の声が登ってくる。
兵士との連絡をしながら少年――アレクと会話をし悠々とそれらは兵士の元に登り詰める。
期待に胸が膨らみ、希望の音は近づく。
黒い絶望は未だ門の下で蠢いているがそれでも彼女の登場は兵士たちの士気に大きく関わった。
つまり。
「それではメル様、俺がこのソルムードの全軍指揮官と言うことで」
「了解です。アレク様、私は少しの兵を借りてこの状況を打ち破る策にでたいと思います」
英雄たちの登場で兵士たちは勝利を確信したのだった。
最前線で指揮するのはアレクの仕事。
後方で策を練るのがメルの仕事となっている。
未だ戦闘音が聞こえる街の広場で彼らは。
「さて、どうしましょうか皆さん」
「「「……」」」
石畳の広場――門の内側詰め所前でメルは数十人の兵士を集めて策を練っていた。
と、言うのは少し語弊で策を尋ねていた。
メルの質問に一同は困りながらも可能性を探る。
「……逃げると言いうのはどうだろうか?」
「馬鹿を言え、市民を置いて逃げる兵士がここにいるか」
「こちらから打って出るか?」
「この少人数でどうしろと? 加えて市民を危険にさらすなどと言うのは――」
彼らの会話はとても意味のあるものだ。
なぜならば、彼らが必死に考えていると言うのが伝わり“無限を有限”に絞っているから。
物を探すにはまず初めに片付けなければならない。
可能性を探すと言うのは無から有と、有から良を見つけることなのだから。
パンと手を叩く音が聞こえた。
「分かりました。では条件を銜えます。住民を守れて勝つ方法」
メルは初めに目的を明確にさせた。
加えてその彼らの意識を領民へとむけさせる。
メルにとって悪い状況とは領民を守れず、この都市が破壊されてしまうこと。
メルにとって良い状況とは領民を守り、この都市が破壊されることなのだ。
「この状況下では建物の被害などは無視しましょう。建て直せばいいだけ、人命は決して戻らないことを理解してください」
「「「了解です」」」
かくして、彼らはメルと共に少しずつ可能性を削っていった。
今はまだ焦る時間ではない。彼らと共にこの状況打破を――。
「そう言えば、〈スケルトン〉って何なんだ?」
「あん?」
「……」
聞き耳を立てていたメルに新米の兵士とベテランの兵士との会話が聞こえた。
「ああ、そうだな。一言でいうなら骨の魔物だな」
「骨の魔物?」
「人の体が変異してなると言うのを冒険者時代に言われたことがある。他にも強い恨みが体を動かしているとかいろいろ言われているが本当のところは分からん」
このベテラン兵士はかつて冒険者をしていたころの話をし。
「魂石と言うので〈スケルトン〉の固有魔力を集める仕組みなんだが――」
「待ってください。彼らはやはり“魔力”で動いているのですね?」
「え? 嗚呼、はい。メル様」
突然会話に入ってきたメルにベテラン兵士は驚きながら返答した。
ともあれ、彼のいった事が確かであるならばメルは一つの策を思いついたことになる。
この功績は勿論、メルにもあるが。
「ありがとうございます。貴方のお陰でこの街は救われますよ」
「え? ええ!?」
ニッコリと笑うメルは彼のこれまでの人生を称えるのであった。
鳴りやまぬ戦の音は指揮を執るアレクにも十分に聞こえていた。
効果の薄い矢を射続け、登ってきた〈スケルトン〉を槍で仕留める作業が続く。
敵の数は減った。しかし、それは直ぐに補充される。
「っ!」
ジリリと電子音が鳴り、世界がひび割れる音が響く。
かつて聞いたことがある者ならばそれがどういった結果をもたらすのか知っている。
“世界に拒絶された証明”即ち“ズル”をしたと言うこと。
「まだ……。増えるのかよ!!」
吐き捨てるように呟いたアレクは術者を討たなければ意味がないことを知っている。
されど、そこに行くまでにはあの〈スケルトン〉を退治しなければならない。
葛藤と苛立ちがアレクの中に生まれていた。
今も必死に戦う兵士たちは疲れと負傷する者たちも多数出て。
「ご、ご報告があります!」
「どうした?」
「メ、メル様が門を開けろとのことです!!」
「?!」
驚くアレクであるが、それでも門の前に作られているバリケードを見てメルも無策でそれを言ったのではないと理解した。
魔物と言うのは“魔力を持った物”と言う意味がある。
例えばそれは手のひらに乗る小さなトカゲだったり、例えばそれは無生物のゴーレムであったりと広義の物をさす。
微量でありながら体内に魔力があればそれは魔物と認定されるのだ。
そう言った意味では確かに〈スケルトン〉と言うのは魔物と認定される。
しかしだ。
「魔力と言うのは使えば無くなります。人が食べては生きていけないように、魔物も“食べなければ”ならないのです」
メルは魔物とは何かをリングウッドに教えられていた。
魔物対策に昔リングウッドから知恵を貰っていたのだ。復興に向けて一番の障害となるのはお金でも盗賊でもない。反乱した魔物であるのだから。
「曰く、それは魔力を食べるそうです」
「魔力を?」
「はい、〈スケルトン〉は人を殺すことによって“食事”と“繁殖”をする魔物なんです」
人の負の念が魔力に作用して生まれる魔物だとリングウッドは言っていた。
だからこそ、生物を襲うのは当たり前で自然に生まれるものなんだと。
「憶測の域でしかない仮説でしたが、貴方のお陰で確証が持てました」
「あ、ありがとうございます。ですがそれが分かったところで――」
「いえいえ、〈スケルトン〉が魔物――獣と分かったことで罠を仕掛けることが出来ます」
「罠?」
ベテラン兵士は困惑しながら尋ねる。
罠……。
つまりキルゾーン。
「餌を用意しましょう。道を作りましょう。相手に知性の無い〈スケルトン〉であればこの罠からは逃れられない」
「え、エサに関しては……」
「その点は抜かり有りません。魔力を持った物であればいいので“これ”を使います。そして――」
メルは一番危険な役をレオジーナに任せる。
一瞬躊躇するメルであったが、それでも前を見て――レオジーナを見て命令する。
「“あれ”の使用許可を出します。……どうかくれぐれも無理しないように」
「ふふ、了解しました。英雄姫様」
レオジーナはそう言うと腰に差してある“もう一本の剣”を取り出した。
後出しが多くてすいません。




