自然の摂理
テンプレ的展開が続きます。
森を進むのは僅か100人余りの騎士だ。
完全武装の騎士が40人とチェーンメイルなど少し質の落ちた装備が60人。
剣と槍を持った彼らは森を進む。
その中で目立つ馬は二頭。
白馬とゴーレムの馬だ。
「面白いものをもっておるのぅ。シフォン」
端的にゴーレム。
しかし馬の形をしたそれはオリジナリティある品物だと言えるだろう。
その燃料は魔石であり、食べさせることもできる。
「ベガちゃんこそ……それ何?」
「ただの白馬じゃよ。のぅ?ペガシウス」
メルはベガと一緒に乗る。
聞かれた白馬は元気に返事をした。
……言葉を理解しているのだ。
「いやいや、ただの馬が他の馬に敬われることしないでしょ……」
それは朝の出発での出来事だ。
出発することになったベガ。
当初、他の者が馬を貸そうとしていたらしいが、何処からともなく現れたこの馬がベガをいたく、気に入りベガの馬となった。
ここまでなら「まあ、そういった偶然もあるのか」と思うが、その馬が馬小屋に入ったことで異常が起きる。
どの馬も頭を下げていたのだ。
ベガの馬が一つ鳴くことで彼らは姿勢を戻す。
……明らかに王や目上の者に対する態度であったのだ。
「ま、まあ、白い毛は確かに綺麗で触り心地も座り心地も抜群ですよ?」
メルはペガシウスを軽くなでる。
触り心地は確かに良く、手に絡みつく抜け毛は細く綺麗で――
「……」
白い毛と金色の毛であった。
そして、触ったそこには小さな凹凸があり、羽があった。
「……ねえ、ベガちゃん。この馬やっぱりペガs「ヒヒーン!」……」
「む、どうしたのじゃ?」
しばらくの沈黙が支配する。
聞こえるのは馬が歩く音。
「やっぱりペガs「……」」
ペガシウスは睨んだ。
ただ、睨んだ。
「……」
「……」
「どうしたのじゃ?」
軽い疲労感を覚えたメルは「なんでもない」と首を振った。
行進速度は思ったよりも悪くない。
というのも彼らが訓練された兵であると同時に、〈スペース〉の魔法のおかげだ。
装備などはいつ魔物が襲ってきても大丈夫なように常に身に着けているが、テントなどの旅道具や食料は〈スペース〉の魔法でしまってある。
〈アイテムボックス〉と違い、時間を止めることはできないが、それでも便利なことに変わりない。
小川の畔で馬に水を与えている。
一番高く登った太陽が水面に光を反射する。
休憩している彼らはのんびりしている。
顔を洗い、すっきりとしたメルは呟く。
「〈森喰らいの巨蟲〉がでたときはビックリしましたよ……」
そういうメルは先ほどのことを思い出す。
魔物に対抗するため木々の成長や毒はより強力に、進化している。
けれどもやはり、それを食べる物が現れるのは自然のサイクル、営みとして当然である。
「木を喰っておったのぅ。まあ、そのおかげで道が出来て森の奥に光が差し込むようになるのじゃ」
それは二階建ての家が動いている感じだ。
それでもここはまだ、安全な場所である。恐ろしいところになると木々が襲ってきたり、雨雲が意志を持ったかのように襲ってきたり、と厳しい自然が待ち受けている。
「それよりも、思ったより魔物の襲撃が少なかったな」
シフォンはそうつぶやき、ペガシウスの方を見る。
とぼける様にまた水を飲み始めるペガシウスにため息をついた。
「まあ、早く目的地につけてよかったぞ」
「ああ、そうだね。魔物の襲撃が少なく、この調子だと――目的地?」
そう。ベガは目的地に着いたと言ったのだ。
そしてその言葉と同時だった。メルを含め彼らの頭上に何かの気配を感じたのは。
監獄に行くまでに結構時間がかかるかも




