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仲間と共に

ここら辺はサクッと終わらせます。

 右翼と左翼、加えて中央の軍へと三つに別れた戦場に雪が降る。

 灰色の空を背景に戦う彼らは一つの問いが邪魔をした。


「ふぉふぉふぉ。お主らはなぜ戦う?」

「あん?」


 呟かれた小さな言葉はリングウッドも勿論、シュタイヤやフランシスにも聞こえていた。

 一瞬であるが彼らは耳を傾け、戦場に静寂が訪れる。


「種族も、思想も違ったはずのお主らはなぜ戦っておる?」

「「「……」」」


 沈黙が続き、答えは出ないまま――。


「「「?!」」」

「まあ良い。まあ良い。好奇心で聞いた言葉じゃ。答える意味などない」


 彼らの上空で魔法陣が輝き、そこから現れる土の腕。

 簡単に人を潰せるくらいの巨大なそれがいくつも降る。


「〈ゴリアテの拳〉」


 バッカスが魔法を唱えた。

 降る拳にリングウッド、フランシス、シュタイヤは各々対応する。

 辛うじて負傷なくしのぐこと出来た彼らではあったが、勝敗は目に見えたもの。


「きっとお主らのことだから。理由は無いのじゃろう」


 確固たる自信を持って宣言された。

 未だバッカスに魔力が尽きる気配は無く、劣勢であるのに変わりない。

 杖をコツンと地面に突き刺す。


「儂らは王国の為に戦っておる。半世紀務めた国に尽くすのは当然であり、それこそが与えられた役割」


 さも当然のように愛国を謳う魔術師バッカス。

 彼は王国に敵対などしていない。

 事実、革命とは市民が立ち上がるからこそ起きる現象であり市民でない彼らには当然分かり合えないことなのだ。

 加えて。


「今の役職に不満などない。儂らは儂らの“平和を守るため”に戦っておるのじゃよ」


 奴隷がいる世界を彼は平和と説いた。

 隣国同士がこぞって兵器を開発するのを見て彼は平和と言った。

 ――日常的に餓死者が出るのを見て彼らは平和であると説いていた。


「……なるほど、お前らの平和とは誰かの犠牲があっての平和か?」

「当然じゃろ? 肉を食べるには命を奪わねばならぬ。その理を基にすれば……な」


 リングウッドの言葉に当然のように返すバッカス。

 貴族間の常識、否。

 傲慢なものが上に立てばこのような国になるのは当然のことだったのだ。


「一つ聞きたい。アイネとは何者だ?」

「ふぉふぉふぉ。彼女は王国の繁栄の為に幾つもの画期的な政策を行った者じゃ。何処の者なのか。なぜこんなことを知っているのかは知らぬが――どうでもよいこと」


 シュタイヤとしゃべるバッカスは白く長い髭を撫でて。


「儂らは今の国に満足しておる。それで十分じゃろう?」


 黒い笑みを浮かべた。

 彼らは自分さえよければそれで十分であり平和なのだ。


「〈ファング〉!!」


 上下の斬撃を死角から現れたフランシスが放つ。

 だがそれは地面から生えた壁によって阻まれる。

 魔法による防御によってバッカスは無傷であり。


「さて、そろそろ戦いを再開しようか」


 火球を目の前にいるリングウッドに放つ。

 視界を覆いつくす程に放たれたそれをスキルで斬る。


「〈風牙〉」

「〈フレアボール〉」


 リングウッドの背後から現れたシュタイヤが焔の球を投げた。

 攻防一体に行われるそれは技をかけては返しての繰り返しだ。

 斬撃をバッカスは土の壁や氷の壁で防ぎ、魔法に関しては同じ魔法で相殺する。

 手数の有利があるとはいえ、バッカスは崩れない。それどころか持久戦は彼に分があるように思えた。


「はあはあ。どうして魔力が切れないのです?」

「ふぉふぉふぉ。自力が違うのじゃよ」

「……」


 バッカスは再び上級魔法を唱える。

 灰色を纏った小さな竜巻が左手に乗る。

 一見はただの風魔法。だがそれは真価を発揮していない状態だ。

 手乗りの竜巻をバッカスは三人を“巻き込む”ように投げた。


「〈灰を纏う大嵐(グリムサイクロン)〉」


 放たれたそれは徐々にその渦を大きくする。

 手乗りだったそれは数瞬の間に人の大きさほどとなり今や――城を包み込むほど。


「ちっ! 〈四閃炎舞(しせんえんぶ)〉!」

「灼熱を焦がせ。〈炎を燃やす(フレイムバーン)〉」


 踊る様に華麗に振るわれたリングウッドの剣から四本の紅い線が伸びる。

 細剣を撫でたシュタイヤは細剣に炎が纏ったのを確認する。

 四本の紅い線が竜巻と激突し鞭のようにしなる猛火がそれを後押しするように激突した。




「ゴホゴホ!」

「ゲフゲフ!」


 灰がリングウッドとシュタイヤを染めた。

 微かに残る粉塵とその独特な匂いは雪に彩られながら確かな灰色として存在する。

 視界が晴れ、未だ戦闘中のリングウッドとシュタイヤは気付く。


「はあはあ、皆さん。無事ですか?」


 傷だらけになりながらも二人を守っていた――フランシスに。


「何を……何をやっているのです?!」

「何をやってやがる!!」


 彼らはフランシスがなぜ自分たちを庇ったのか理解できなかった。

 今日初めて顔を合わせた彼が自分たちに命を懸ける理由など無いからだ。

 膝をつくフランシスは答える。


「仲間……ですから。目的も同じ……仲間ですから」

「「!」」


 彼らの関係は言わば赤の他人に近いものだった。

 差別的な軽蔑的な視線は確かにあったが、それは戦に置いて死に直結する故今はしていないが、それでも彼らの間にある溝は赤の他人という溝。


「私は……あなたたちを信用するしか……無いのです。私はそれしか……できることがないから」


 フランシスもそうであった。彼らは元王国軍であり敵対心を持つ者は今でも多くいる。

 それでも彼らがこの反乱軍にいるのは単にメルのお陰だ。

 一緒に彼らはメルの夢――戦争を止めることを願っているからだ。


「仲間のため……に戦いましょう……」


 フランシスは意識を失い、パタリと倒れる。

 いくらか汚れ雑兵に過ぎない彼の言葉は確かにリングウッドたちに届いた。

 彼らにも勿論、戦う理由は存在する。けれども今はもう一つ理由が増えた。


「ふぉふぉふぉ。答えは出たのか?」

「そうですね」


 コツンと杖を突き鳴らすバッカスは手を招く。

 その挑戦に挑むのはオールバックの若い男と歴戦のハーフエルフだ。


 彼らはそれぞれ、最大級の技を出す準備をする。

 これが彼らの最後の攻防になった。


見せ場はメルの登場なので。

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