うざいゆかり金太郎編
童話の内容に細かくケチをつけるうっとうしい少女の話です。
※不快な言葉遣いが含まれます
※本来ゲーム用に作成していた文章のため小説然としていません
「ひろこ」
妹の幼稚園で朗読会やるんだけど、私が読む『金太郎』練習も兼ねて聞いてもらってもいいかな?
「ゆかり」
金太郎かぁ、有名だけど読んだ事ないんだよね。楽しみ!
「ひろこ」
ありがと!それじゃ読むね。……むかしむかし、あしがら山の山奥に、金太郎という名前の男の子がいました
「ゆかり」
え……?それだけ?
「ひろこ」
それだけって何が?
「ゆかり」
山奥に男の子がいましたって、野生児って事?
「ひろこ」
知らないけど、普通の男の子じゃない
「ゆかり」
普通の男の子がどうして山奥に?当時は野生動物の恐怖が現代とは比べ物にならないんだから、安全な場所に住居を設けるでしょ。金太郎の両親はどこに?
「ひろこ」
一緒に住んでたんじゃない?
「ゆかり」
じゃあ金太郎の両親と金太郎が動物に襲われても平気なぐらい頑丈な住居で生活していましたって書かないと。それから山奥なんて不便な場所だと物流についても疑問が残る、食べ物はどうしてるの?
「ひろこ」
お父さんがハンターとかなんじゃないかな
「ゆかり」
当時は英語が無いから猟師だろ、何がハンターだ
「ひろこ」
…………
「ゆかり」
武器は?
「ひろこ」
さあ……猟銃じゃない
「ゆかり」
いや、そんな曖昧に答えられても……鉄砲伝来って知ってる?その時代の前後どっちか判断しないと、金太郎だって自分の生きてた時代を間違えられるのは嫌だと思う
「ひろこ」
もうどっちでもいいよ、じゃあ弓って事なら問題ないでしょ
「ゆかり」
命を託す道具なのに軽いノリでお父さんの得意武器決めたらかわいそう。弓が得意ならその練習風景だとか、腕前を描写する事で金太郎への造詣が深まるのに
「ひろこ」
…………次行くね。金太郎の友だちは、山の動物たちです。金太郎は毎日毎日、動物たちとすもうをして遊んでいました
「ゆかり」
あのさぁ……動物と相撲なんて取れるわけないでしょ、作者頭おかしいんじゃないの?四足歩行なんだから始まった瞬間動物の負けでしょ
「ひろこ」
そこは特別ルールで前足はついてもいいって事になってたんじゃないの……
「ゆかり」
相撲っていうのは重心移動が物凄く大事な競技なのに、それじゃあ金太郎が不利でしょ、お前ウマと駆けっこするか?
「ひろこ」
お、お前……いや私はしないけど
「ゆかり」
金太郎側にも特別ルールで有利な条件付けるべきだよね。お父さんの使ってる弓を使用してもいいとかにしてあげたら?
「ひろこ」
それもう相撲じゃなくて殺し合いじゃん
「ゆかり」
人間と動物が殺し合わないで済むようになったのは近代からだよ。当時は相撲と称して至近距離デスマッチしてたと考えるのが妥当だね……という事は金太郎は相当頭狂ってて、毎日命の奪い合いのスリルを味わってた危ない子供って事か
「ひろこ」
そうかもね……次行くよ。はっけよい、のこった、のこった。金太郎、がんばれ、クマさんも負けるな
「ゆかり」
私こういうの一番嫌い。残った残ったって金太郎が言ってたと思ったけど、違ったんだ。いつの間に他の人物出てきたの?
「ひろこ」
さぁ……お父さんが見に来てたんじゃない?
「ゆかり」
お父さんは金太郎のデスマッチを容認してるどころか、煽って焚き付けてるんだ。金太郎、お前がこの弓であいつらを殺せ って実は命令してるんじゃないの?
「ひろこ」
何でそんな事を……?
「ゆかり」
それは当時、武力だけが他者を支配する時代だったんだから、息子を小さい頃から最強の戦闘マシーンにしたいと思うのは当然でしょ
「ひろこ」
そんな父親いるの?
「ゆかり」
平和な時代に暮らすひろこには理解できないかもしれないけど、いるでしょ。というか実際ここにそう書いてあるじゃない
「ひろこ」
お父さんが弓使いで戦闘教官とは書いてないよ
「ゆかり」
何も書いてないよね、この童話。クマさんも負けるなって、父親が言ってるんでしょ?クマって知ってるよね、凶暴で強力、人間がタイマンで勝てる相手じゃないよ。現代でも猟友会の人が単体じゃ危ないのに、当時の素手の、ましてや子供が戦ってるの?
「ひろこ」
当時は動物も心優しかったんじゃないの……
「ゆかり」
生物は常に進化する、動物が今より知能が高いとは思えない。殺伐とした現代より当時の方が安寧だったって言いたいの?戦争ごとに何万人も人が死ぬ世界なのに?この金太郎って子、アダマンチウムの骨格を持つとか書いてある?
「ひろこ」
書いてるわけないじゃん……
「ゆかり」
じゃあ普通の子供?軽く噛まれただけで死ぬよ。このクマどこかおかしかったんじゃないの?父親から毒矢で射られて、口にクツワされて噛めないようにされて、その鋭い爪や強力なパンチを封じるために腕切り落とされてたんじゃない?
「ひろこ」
ちょっと、童話でそんな残酷な事あるわけないでしょ
「ゆかり」
じゃあ金太郎がクマと組み合っても死なない理由を考えてよ。何らかの外科手術か薬物による脳の機能低下がないと話は通らない
「ひろこ」
分かったよ、じゃあこのクマは腕もないし頭もおかしかったんだね
「ゆかり」
ハァーッ……次
「ひろこ」
…………。だけど勝つのはいつも金太郎で、大きな体のクマでも金太郎にはかないません。こうさん、こうさん、金太郎は強いなあ。でも、次は負けないぞ
「ゆかり」
嫌な予感って当たるよね……やっぱり喋ってたのはクマだったんだ?最強の父親がいると読者に期待させておいて肩透かしか
「ひろこ」
父親の存在はゆかりが勝手に妄想してただけでしょ……
「ゆかり」
ひろこは動物がいきなり話してもおかしくないと思うんだ……
「ひろこ」
こないだの桃太郎の話のときは犬が喋っても納得してたじゃない
「ゆかり」
よく考えたらおかしかったわ。犬と人間の声帯や舌は全然違うのに、明瞭な日本語が話せるはずないでしょ。脳だって人間ほど高度じゃないんだから、それぐらい分からない?
「ひろこ」
…………。童話の世界だからある程度のファンタジーはありだと思うよ
「ゆかり」
ファンタジーだからで済ませたらどんな話も何の感動もないよね。はよ次行け
「ひろこ」
…………。今度は、つな引きです。金太郎一人と、山中の動物たちの勝負です
「ゆかり」
言いたいことはあるけど、私もそのファンタジー要素はある程度飲むことにしたよ
「ひろこ」
そっか……。動物たちの中には、体の大きなクマやウシやウマやシカもいましたが、金太郎にかないません
「ゆかり」
文章長いなぁこいつ。クマやウシや……何?
「ひろこ」
クマやウシやウマやシカ
「ゆかり」
大型哺乳類が一堂に会してるって言いたいだけでしょ、要するに。クマが4頭いました でいいでしょ
「ひろこ」
それじゃ画的に寂しいと思ったんじゃない?
「ゆかり」
しかもクマ以外の動物が綱引きっておかしいじゃん。どうやってんの?首にでも縄巻きつけられてんの?
「ひろこ」
口で縄くわえて引っ張ってるんじゃない?
「ゆかり」
そんな汚いことして、あの残忍な金太郎が許すとは思えない。ひろこはヨダレでベトベトになった縄をこの部屋に持ち込みたいと思う?
「ひろこ」
私は嫌だけど……当時の人は慣れてたんじゃないの
「ゆかり」
クマも含めて、大型の哺乳類は1頭でも体重100キロは余裕で越えてるよね。筋肉量だって人間とは比べ物にならないのに、そんな面子相手にどうやって勝てるの?やっぱり何らかの身体的ハンディを相手に強要してたんじゃないの?
「ひろこ」
さっきの話の流れで言うと、そう考えるのが自然かもね
「ゆかり」
動物達を遊び相手と称して、体を損傷させ逃げられないように縛り付けてたんだ。この童話とんでもないね
「ひろこ」
それはゆかりが脚色しまくった結果じゃないかな
「ゆかり」
私は設定のつじつま合わせてただけ。あんた文句ばっか言うけど子供たちから何か聞かれてもまともに答えられないんじゃないの?帰るわ
「ひろこ」
…………