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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第11章〜〈はじまりは勇者の導き〉
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激戦の紅



 灼熱と共に現れたその男は大地を焦がし、最後の宝珠を片手にゆっくりと燭台に向かっていた。



「やっとだ。やっとこれで……。」



 笑いを堪えきれなかったのか、口が大きく開く。



「歓喜だ! まるで歌劇(オペラ)の第1幕にあるような歓喜だ!」



 高らかな笑いはバケモノの威嚇のようによく響き渡った。

 もちろん、2人のところにも。



「近づいてるね」

「あぁ。……最後は頼むぞ」

「……。絶対に死なないでね」



 2人は武器を構えた。


 紅く燃え上がる剣。

 凍てつく美しさを纏う槍。


 その武器は金に光るネックレスに共鳴して強く光っている。



 それは急に始まった。


 紅き剣同士が競り合う。



「おっ、強くなったな。」

「るっせ。不意討ちじゃなけりゃ対等に戦えんだよ」



 強力な熱波。側で出方を伺っているかおりの肌はひりひりと焼ける。



「絶対に奪う」



 意を決して、槍を握る手に力が入る。


 作戦開始。


 矛先を地面につける。

 すると男を中心に魔法陣が浮かび上がる。



「っ!!」



 男はすぐさま剣を弾きその場から離れる。

 そこに浮かび上がったのは無数の氷の槍。

 間一髪避けた矢先、氷の柱と化した槍から弾が放たれる。



「やるねっ!」



 男は左手を前に出す。

 目の前に火の壁が立ち上がり弾を無力化する。



「力はそんなにある訳じゃない。いけるよ」



 距離を取っていた槇がかおりに耳打ちして火の壁に向かう。



「やられてばかりじゃねぇんだよ!」



 槇が剣を突き出す。

 火の壁から飛び出てきた男はゆっくりと見えているかのようにそれを左手で反らした。



「えっ!!」

「あまちゃんだな。」



 鳩尾に膝蹴り。

 浮き上がった槇に剣を振る。



「誰があまちゃんだ!」



 斬った瞬間の感覚。

 それが人のものではないとすぐに気づいた。

 氷と土が合わさった人形はその役目を果たして砕けていく。



「終わりだ!!」



 後ろからの斬撃。

 それは必勝の一手に違わない。



「それが普通の奴だったらな……」



 振り返りニヤリと口角を上げた男。

 振り下ろした剣の感覚は無く、その影はゆらゆらと揺れて消えていった。



「蜃気楼!!」

「槇! 気をつけて!」



 かおりの声で辺りを見回す。



「よく考えろ。蜃気楼の原理を……」



 槇は耳をすませる。意味の無いことだとわかっていてもやらざるを得なかった。


 落ち着くために。



「おら!!」



 槇は真上に火の鳥を飛ばす。

 まっすぐと夜空へ向かっていく。



「大正解だ!」



 それはあっさりとかき消された。

 本当の鳳凰(ひのとり)によって。



「やっと本気出したな」

「あぁ。あんなガキどもがこんなに強くなってると思ったらワクワクしてきたぞ。」

「あぁ、これでオレ達の勝ちだ」

「は?」


絶対無力化(マジックグラビティ)……的な!」



 かおりの最大級の魔法。

 それは放った魔力を無力化するものだった。



「くそ、なんだ……!」



 燃え盛る炎は消え、浮くことさえ出来なくなり真っ逆さまに落ちていく。

 着地も出来るはずもなくただただ地面にぶちあった。



「槇! 早く!」

「おう!」



 落下した男に近づく。とどめを刺すために。

 近づき、確認もせずに剣を振り下ろす。

 感触はあった。

 勝利を確信した。


 かおりの悲鳴が聞こえるまでは。



「きゃぁぁ!!!」


「かおりっ!?」



 腕でかおりを首を締め上げている男。

 紅く光らせる瞳が槇を睨んで笑っていた。



「なんで!」



 矛先を見ると、そこに居たのは大きな鳥だった。



「今のは正直驚いた。何の魔法だ? 見たことないぞ。まぁいい。」



 そう言ってかおりの首を強くしめる。



「うっぐっ!!」

「はなせ!」


「あぁ、はいはい。じゃぁ剣置いて。」



 槇は黙って従った。



「そのままでいてね」



 男の声に頭を上げる。

 紅い目が強く光る。


 火を纏った岩が槇の回りに無数に浮かんだ。



爆弾(デコイ)



 次の瞬間、それらは連続的に爆発する。

 右往左往し、時に岩に頭をぶつけては爆発に弄ばれる。


 全ての岩が爆発を終えると、槇は起き上がってこなかった。



「はい。おしまい。」



 男は腕を緩める。



「槇!!」



 涙を流して叫ぶ彼女の鳩尾を力いっぱい殴る男。



「うるさい。まぁ、君は可愛いから生かしてあげるよ。いいものも見せてあげたいしね。」



 地面に力なく倒れるかおり。

 もう何も出来なかった。ただただ、あの男の思うようになる。


 それが運命だったのかもしれない。



「結局はこうなったな、ジーク」



 地を揺らす声。

 微かに聞き覚えのある声にかおりは視線を上げた。



「ったく。またお前か。いつも邪魔する」



 黒い重甲冑。

 紫に光る瞳。

 闇を纏う覇気。


 この国を守るエデレスメゼン兵の長、『魔王』の異名を持つ男。



「ゴウジェ! ここで決着をつけようじゃないか!」

「こい! ジーク」



 聖剣(デュランダル)智鎧斧(ドゥボザルグ)が激しく響き合う。



『未来の終わりは変えられないのか。ボクはどうしたらいい?』

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