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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第11章〜〈はじまりは勇者の導き〉
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導く者

 傷ついたその身を治すことは出来ても、深く負った心の傷は一切癒せない。

 それをわかっていても、かおりは悔しくて泣いている槇の傷を魔法という形で治していた。



「なんだよあれ。勝ち目ねぇじゃんか」



 かおりは小さく頷く。



「なんだよ。どんなに頑張っても、無理なもんは無理じゃねぇか」



 治療は終わった。それでも動く気になれなかった。

 動いたところで、無駄。

 圧倒的な力の差にそんな感情が2人の中で交差していた。



「どうしたらいいんだよ。教えてくれよ!」



 絶望の果てに行く道を失った。

 そんな時に今まで導いてくれていた人が、今ではどこにもいない。

 かおりは暗い表情を落とした。こんな弱気な槇ははじめて見た。だからなおさら強くいなければと思った。



「行こうよ」



 そう口にするかおりの表情には迷いがなかった。

 まっすぐと槇を見る。



「天凱の中央。勝てないかもしれないけどさ」



 立ち上がってこの場所から外へ出た。


 おかしな行動に槇は何も考えず、かおりのあとをついていった。



 何も無い場所。この場所には無数にあるそれ。

 その中心でかおりは神器氷槍(ジギタリス)を取り出し、天に掲げる。



「やらなきゃ。皆が預けてくれた私の命だもん。絶対に諦めたくない」



 槍を振る。まるでキャンバスに色を塗る筆のように。


 神器氷槍(ジギタリス)から出た氷の粉は星の用に輝き、そして消えていく。



「ねぇ、槇。槇がやらないと、アイツは止められないから。だから、絶対に諦めないで。絶対に生きて帰ろうよ」



 槇はうつむく。



「オレが……いけるか?」



「いけるよ。槇なんだからさ」




 根拠もない言葉にふっと笑う。



「そうだよな。ここで飽きてたら、あいつに申し訳ねぇよな」



 急に自分の頬を思いっきり殴った。

 其の反動で倒れるくらいの力で。



「えっ」

「いってぇ」



 その光景に少し引くかおりを気にせずにまっすぐかおりを見た。

 ゆっくりと立ち上がり最後に気合を入れる。



「おし、やってやる。やってやるよ!」

「その言葉を待ってたんじゃい」



 声の主。聞き覚えのある語尾に気持ちの悪いフォルム。




「かめきち!」

「よしじゃい!」

「生きてたの!?」



 ゆっくりと近づくかめ吉に安堵の声を漏らす2人。



「長老に助けてもらったんじゃい。お前らを天凱の中央に連れていく案内人として」



 かめ吉の言葉に続く力強い鳴き声。

 それはキメラ体であった。



「ありがたい」

「時間が無いんじゃい。早く乗れ!」



 2人は見つめ合って強く頷く。

 キメラとかめ吉。2体と共に最終決戦地、天凱の中央へ向かう。


 それが、本当の最後であると確信を持って……。

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