島の守護神
「マジかよ」
「シフォン、傀儡?」
「違うと思うぜ。完全に独立してやがるぜ。あんな巨大なエネルギー、見たことないぜ」
どうやら、かなり厳しい戦いになりそうだと判断したかおりはいち早く弱点を見つけるために情報を集めていた。
「槇、あいつ小回り効くと思う?」
「わからんなぁ。あの大きさなら効かないはずなんだが、あの足とか腕の駆動部分の感じから、スピードには着いてこれる気がする」
槇の解析をまとめてかおりは悩む。弱点はわかった。
しかし、そこを突けるかがわからなかった。
ゴーレムは赤い目を光らせ、3人に近づいていく。
「取り合えず逃げるわよ」
かおりの号令で、柱を中心にグルグル回り始めた。ゴーレムはなかなかの速さで走ってくるため余裕をもてなかった。
「かおり、弱点は?」
見切りをつけた槇が聞く。
「弱点は関節部分に見える駆動部。一ヶ所でも壊せばバランス失って倒れるはず。ただし、やっぱ曲がり具合からして狙うのはかなり厳しい」
走っているゴーレムを観察する。肩、肘、膝などの部分にはガードがつけられている。狙える場所は限られていた。
「取り合えず隙をつくらないと」
かおりは立ち止まり、槍をゴーレムの足下に向けて投げる。槍が刺さった所から氷が沸き上がり、ゴーレムの足まで凍らせた。
「槇、康貴、駆動部を狙って攻撃して」
「言われなくても!」
「駆動部ってどこ!?」
2人は向きを変えて走りだす。槇は飛び上がり腕を狙う。
が、ゴーレムの腕が槇を襲い中心の柱に強く打ち付けられる。
その中、康貴は背後から巨大な斧で殴る。
「あれ?」
弾かれた刃に仰け反る康貴。
そのまま容易にゴーレムに捕まり、壁に投げつけられる。
「使えないなぁ」
かおりは溜め息を吐きながらゴーレムに近づき、指をパチンと鳴らして槍を手元に戻す。
すると氷は嘘みたいに消えてなくなる。
ゴーレムはそれを待っていたかのように動きだし、かおりを踏みつけようとする。
「遅い!」
かおりはギリギリに避け、駆動部目掛け突くもゴーレムが少し動いただけでそこが閉じられてしまった。
「うそでしょ」
かおりは再び襲いかかる攻撃を避けながら、攻撃の機会を伺うが、まったくチャンスが巡ってこない。
次の瞬間、康貴がゴーレムに一撃加え、見事に転倒させる。
「ねぇ、かおり。そんな細かいところ狙わないでガッツリいっちゃおうよ」
康貴が笑みを浮かべながら言う。
「でも、あの装甲簡単に壊せないわよ」
「壊すんじゃないよ。貫けばいいんだよ」
「それ、名案かも。康貴のクセに」
槇が2人に寄りながらそう言う。
「最後のやつ余計じゃね?」
「かなり重要だろ」
冗談をかましつつ3人は立ち上がるゴーレムを眺めた。
「冷やしゃ脆くなんだろ」
作戦はそれだけだった。
かおりははっとなり、しかしすぐさまゴーレムに向けて槍を投げた。
立ち上がりの最中だったゴーレムはその槍を胸部に受け胴部がカチコチに凍った。
「おーらよ!!」
その次に康貴の強烈な一撃でゴーレムにヒビが入る。
「トドメ!」
槇は炎を纏い物凄い勢いでゴーレムに剣を突き立てる。キリキリという音と共に火花が散る。
「おりゃぁぁぁあああ!!」
ゴーレムの胴部に穴が開き、剣は主動部を焼ききった。
次の瞬間大爆発が起きた。辺りは黒煙に包まれた。
「槇!」
「ここにいる」
「あ、ごめん」
そんなこんなしていると宝珠がかおりのもとに転がってきた。
「お、ラッキーじゃん」
「そうでもないだろ……っ!」
槇は康貴を蹴り飛ばした。その刹那には岩が落ちてきた。
「おー。助かった」
「ここ崩れるぞ」
「え、なんで?」
「いや、おもいっきし柱壊れてるから」
急に地震が起きた。瓦礫も多く降ってくる。
「じゃぁ逃げよう」
「ずっとそう言ってるっつうの!」
逃げようと足を動かしたときだった。
あの黒い威圧が3人を襲ったのは。
「マジかよ」
「なんでこんな時に……」
「逃がさんぞ。お前らはここで死ぬ運命だ」
目の前に立ち塞がる、漆黒の重鎧が巨大な斧が雷鳴轟かせていた。
「やべ、足動かねぇ」
槇がそう呟いた。
完全体の『魔王』がその場にいるような感覚。
その姿は巨大に見える。
「さぁ、ここで瓦礫となるか、屑となるか……選べ!!」
それでも3人は武器を構える。
「生きて帰るっつうの!!」
「お願いだから邪魔しないで」
「ったく」