傀儡
約束の地についた。3人は船から降りる。緊張が表情からも伝わってくる。
約束の地。
そこは無人島のような場所で、目の前の遺跡以外人の住めるような建築物はなかった。
「あの遺跡から宝珠の反応があるぜ」
シフォンがかおりの肩に乗ったままそう言った。
「ありがとう。で、今日は来るの来ないの?」
「さすがに今日は行くぜ。オレがいないと道に迷っちまうぜ」
その言葉を聞いて3人はシフォンに刃を向けた。
「「「おい。危険が近いと何もいわないで逃げるやつがなにほざくか」」」
まったく一緒のことを言う3人。
「うぃ!」
シフォンは死の危険を感じ身震いしながら返事をした。
「んな、茶番してねぇで、さっさと行くぞ」
「案内よろしく」
「あいあいさぁ! 先ず中に入ってくれ」
シフォンが示した道を進む。幾度となく現れる分かれ道をシフォンは適当に導いていく。そのうち、広い空間に出た。3人は身構え、慎重に辺りを見回していく。
「上から来るぜ!」
シフォンの言葉にすぐに反応する康貴。巨大な斧を振り上げ、対象を吹き飛ばす。
「人形!?」
その姿形は泥人形のようで、数は槇たちの五倍以上いる。
「ちっ! しょぱなからキツいなぁ」
「槇、来るわよ!」
「わかってるよ!」
人形は槇たちに襲いかかる。槇は軽く人形を砕き、かおりは機動部を破壊していく。康貴は文字通り粉々に砕いていた。軽く全滅させられたことに驚いた。
「なんだつまんねぇの」
3人は次の部屋へ向かおうとした。
「後ろ!」
シフォンの言葉。かおりはすぐに振り向くと目の前には人形がいた。飛ばされるかおりを受け止める槇。
「なんだこいつら……」
人形はひとりでに組み立っていく。バラバラの四肢はおろか、粉々のやつまでくっつきもとにもどる。
「こいつら傀儡タイプだぜ!」
シフォンがそう告げた。
「普通に戦ってもさっきみたいに復活しちまうぜ」
「じゃぁどうすりゃいいんだよ!」
襲い来る人形と応戦しながら聞く槇。
「傀儡を繋いでる紐を切りゃぁいいんだ! 見えない紐を!」
「どこにあるんだよ!」
「オレにも見えねぇ……」
いきなり絶望に入った。3人は複数の泥人形と応戦しながら、傀儡の糸を探していた。
「がぁ! キリがねぇ!」
「康貴、騒いでないでさっさと糸探せ」
倒しては復活する泥人形に悪戦苦闘する。空中にあるだろう糸をやたらめっちゃら武器を振り回しても、広範囲魔法でも一体として倒せていなかった。
無線の傀儡といっても過言ではなかった。ただ、体力だけが奪われていく。
「コイツら糸なんてないよ」
かおりがそう結論付けた。
「でも復活するやつの特徴は傀儡だぜ。絶対に誰かが操ってるんだぜ」
シフォンの言葉に頭を回す。その時、槇があることを思い付いた。
「電波?」
「それだ! 康貴! 雷で攻撃して!」
かおりはすぐさま作戦を伝える。康貴は斧に雷を纏わせ向かってきた泥人形に攻撃する。すると爆発音と共に泥人形は砕け散った。その泥人形は復活しなかった。
「ビンゴ!」
かおりは槍を投げ地面に突き刺し、その周辺に電気を流すと複数の泥人形が動きを止め倒れた。槇は康貴の方に泥人形を蹴る。それを繰り返していたら泥人形を全滅させることができた。
「ふー。疲れた」
「さっさと次いくぞ」
シフォンの導きにより先を急ぐ。3人は先を急いだ。迷宮のような道をシフォンの導きにより進んでいく。
「次左! その先に広場がある! そこにあるぜ!」
先頭を走っている槇は剣を抜き、炎を纏わせて左に曲がった。先が見えない中、3人は出来るだけ最善の調子に上げていった。そして、辺りが開ける。
中心に巨大な石の柱が立っており、その先には果てしなく高い場所にステンドグラスが輝いていた。あまりに遠すぎて、立っている場所とステンドグラスとの間に星が輝いているような錯覚を生ませていた。
「なぁ、かおり。これ、なんつう現象だ?」
「わからない。目の錯覚じゃないかしら」
「きれいだなぁ」
三次元の芸術。約束の地と呼ばれたこの場所の名の由来がなんとなくわかった気がした。
「前!」
シフォンの声に3人は視線を前に戻した。飛んでくる岩。
「おんどりゃぁ!!」
康貴はすぐに反応し、岩の軌道をずらす。岩は後ろの壁にぶち当たり砕けていった。
「不意打ちか!」
「完全に油断してただけだろ」
槇はそうツッコミながら、あんな巨大な岩を投げてきた相手を確認する。さっきの泥人形とは違い、岩で出来た、ゲーム世界でゴーレムと呼ばれる兵器であった。