そんな綺麗な
長老から約束の地を教えて貰った一行は、船で移動をしていた。
片道8日。果てしなく長い船旅になっていた。
そのとある夜。
二つの満月が海面にも写るほど空気の透き通っていた。
その様子をかおりは何気なく見ていた。
そこに、康貴がふらっと来た。
思いふけているかおりを見て悲しい顔をし、その後意を決したのか近づいていった。
「どうしたの?」
かおりは視線を変えずに口を開いた。
「……なんか、落ち着かなくて」
康貴はかおりの隣で手すりに両手を乗せ、同じ月を眺めた。
「かおりらしいね」
「どういうこと?」
「また、みんなの事考えてたんでしょ。オレらのために死んでいった人とか」
「ま、まぁそうだけど」
「落ち込んじゃダメだって。何事も前向きにさ」
「そんなんじゃダメな時だってあるのよ」
今にも泣きそうなかおりを横目に見ると、今日言おうとしていたことを口に出した。
「オレら絶対に帰れるよ」
「そんな保証どこにもないじゃない」
「あるよ。かおりがそう望めば、オレが叶えてやる」
「へ?」
かおりは康貴の方を向いた瞬間だった。抱き寄せられる。
「オレ、かおりのこと大好きだ。ずっと昔から好きだ」
一瞬の出来事に、かおりの思考回路は飛んだ。
「だから、かおりが願う未来にしてあげるために努力するし、ピンチの時はどんなに離れてても助ける」
紡がれる康貴の言葉。
「ずっとこうしてたいし、手つなぎたいし、キスしたい」
康貴の顔が目の前現れる。
「いい?」
康貴は目を瞑る。
そしてゆっくりと近づく顔。
触れるその一歩手前でかおりは康貴を突き離し、背を向ける。
「ご、ごめん。今、その返事、できないよ」
「そ、そうだよね。えへへ、ごめん急に」
「う、うん」
かおりは逃げるように階段を降りようとした。
「返事……、落ち着いたら、……もとの世界に戻ったら聞かせて」
かおりは足を止めて頷く。
「絶対だよ?」
「うん。絶対」
そう約束して、駆け足で階段を下っていった。
よく考えれば、仕掛けられた死亡フラグなんてわかったはずなのに。