そして受け継がれた
槇たちは荷物をまとめ、町の外に向けて足を動かしていった。
入り口付近で立ち止まり、見送りに来ている数人に挨拶した。
その中には、ディグロとパージャもいた。
「お幸せに」
満面の笑みのかおりが2人にそう言う。
「3人も旅の無事を祈ってるよ」
ディグロの言葉に3人は各々の反応を見せた。
「それでよぉ」
急にもじもじし始める。それを見てパージャがディグロの腰を強く叩く。
「しっかりして!」
相変わらず威勢もなく適当に答えるだけだったが、次の瞬間の目つきは覚悟を決めた目だった。
「あのさぁ、これ、持ってってくんねえかな?」
ディグロは康貴に、ダグラスが使っていた巨大な斧を差し出した。
「それ、ダグラスさんのじゃ!?」
「そうだよ槇。親父の斧だ」
ディグロはその斧をひとふりした。
「オレにはまだ重すぎるんだ。だから、オレが一人前になるまで預かっててくれ」
その言葉に迷いはないように感じられた。
「男に二言はないぞ」
「あぁ」
康貴はディグロに近づき、その斧を受け取った。
「これ返すときは、オレに勝ったときかな」
康貴は冗談混じりに言った。
「それがわかりやすいな」
ディグロは笑って返した。
「じゃ、世話になった」
「ありがとうございました」
「じゃぁね!」
3人は手を振り、長老のところに向かう。
宝珠を取り返すため、約束の地の場所を聞きにいかなければならなかったのだ。
いよいよ、魔王との決戦である。勝てれば帰る術が揃う。負ければどうなるかわからない。どちらにしろ、最後の戦いであった。