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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第9章〜〈ジンドゥム〉
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炎王・ジャダンジェ


 ダグラスを先頭に槇たちはディグロを追って火山を登っている。

 通常の登山路とは違い、洞窟の中を進む。道には動物かなにかの骨があちらこちらに転がっており、横には熔岩が流れ、草木の姿などなく、危険な肉食動物どうしが食物連鎖を作っているだけであった。

 空飛ぶ蛇の様な生物、鱗の堅いイグアナ、溶岩も泳ぐカバの様な生物。それらは4人を見つければ直ぐに襲って来る。それぞれはモンスターを蹴散らしながら目的地へ向かう。


 そして、まさにここにボスがいると思われる円形のフィールドに出る。その回りは溶岩が滝のように流れ込んできており熱さは尋常ではなかった。道はただひとつ。入ってきた道のみだった。


 この場の中央にディグロがなにかを探して地面を這っていた。



「あった!」



 ディグロが立ち上がった瞬間だった。空飛ぶ蛇の大群がディグロを囲み、襲いかかる。



「ディグロ!」



 ディグロはダグラスが叫んだ時にそのことに気づく。



「うわぁあああ!!」

「間に合え!」



 康貴は地面を蹴り、瞬間移動のごとくディグロの目の前に現れ、全てを叩き落とした。



「ふぃー! 間に合ったぜ」



 腰に手を当て、余裕ぶっていた。



「ねぇ、槇。ちょっと囮になってもらえる?」

「了解、軍師さん」



 槇はかおりの命令に従い、空中に手を向ける。たちまち火の玉が放たれ、1体の蛇に当たる。すると火の玉は激しい音と共に爆発した。

 そのことに槇自身が驚いた。予想以上の力だったのだ。

 爆発音に蛇は槇を危険視したようで槇に一気に襲いかかる。



「ちょっ! いやっ! それはきつい!」



 それを尻目にかおりとダグラスはディグロに寄る。

 腰を抜かして倒れているディグロを睨み付けるダグラス。



「ディグロ」



 低く怒の篭った声に視線を外すディグロ、



「なんだよ」



 2人の会話が終わるまでかおりと康貴は近い蛇を倒していく。



「危険だとわかっているだろう。なぜ入山した」



 ディグロは黙ったまま手を強く握りしめた。



「こんなことしても、パージャは喜ばないぞ」



 強く歯を食いしばる。



「安全な日にマルメリアをとりにくればよかろうに」

「……それじゃダメなんだよ」



 ディグロはボソッと呟いた。



「今日じゃなきゃダメなんだよ! パージャの誕生日の今日じゃなきゃ!」



 意思の強い瞳がダグラスに向けられる。ダグラスはディグロの威圧に怯んだ。



「お前……」



 その時だった。巨大な威圧を放つ叫び声が空から降って来たのは。

 全員空を見上げた。全員が驚愕した。


 黄緑に光る四つ目のをギラりと回し、侵入者を睨みつける。



「ジャダンジェ……!」



 空を覆う巨大な翼、岩も砕く巨大な鍵爪。溶岩のように赤い鎧を纏った巨大な竜。裂けた咆哮が体を震わし、心を折る。



「あれが、ジャダンジェ……」



 その生物が5人の目の前に降り立った。



「おいおい」

「どうしたら……」

「くそっ」



 槇たちが口々に漏らす言葉。武器さえ構えられないその威厳に今までの主たちよりも桁の違いを見ていた。



「全員、撤退だ!」



 ダグラスが叫ぶ。それと共に走り出す。

 その瞬間、唯一の道はジャダンジェの吐いた熔岩によって溶けていった。



「撤退? 出来るならしたいけど」



 かおりは踵を返すと氷槍を召喚し、槇は臆せず剣の形を変えた。



「まぁ、私たちは宝珠が貰えればそれでいいし」



 かおりは槍をジャダンジェに向ける。



「楽しそうだぜ!」



 康貴は斧を叩き、雷電を帯びさせる。



「かおり! 作戦!」

「取り合えず弱点探し! 毒使ってくるから顔の向いている方には気を付けて」

「らじゃぁ!!」



 3人は一斉に斬りかかる。しかし、岩のような翼、鋼のような鱗、一切攻撃は通らない。



「うわっ!」

「康貴!」



 ジャダンジェのテールアタックに突き飛ばされ、熔岩の方へ飛んでいく。


 何をやっても止められないことに焦る康貴。段々と近づいて来る熱に恐怖を覚える。

 それが唐突に止まったのは後数メートルの所だった。



「大丈夫か?」



 ダグラスの声だった。その硬い体から離れて汗を拭う。



「へへ、まだまだ」



 ダグラスはその背中に背負っていた自身より大きい斧を抜く。



「コイツは、こうやるんだ」



 ダグラスは足を大きく開いき、片手を地面に当てる。その場が歪むほどの熱量が蒸気を生む。まるで大地のエネルギーを借りているようだった。

 体は段々赤くなり、筋肉の光沢のある赤みとなる。

 次の瞬間にはジャダンジェの懐に入り、斧がジャダンジェを抉る。

 地響きに似た物凄い音と反動にジャダンジェの叫び声と共に腹部の鱗が砕けた。



「スゲェ」



 素直に感心する3人。



「ここを中心的に攻撃しろ」



 ダグラスは間合いを取りながら腰抜けディグロの所まで戻る。



「槇、康貴! やっちゃって!」

「わかってるっつうの」



 3人は鎧の剥げたところを重点的に攻撃する。効いているようで苦しそうに叫ぶジャダンジェ。そのまま前足を上げる。



「ヤバくね……」



 回避行動をとる3人だが、遅かった。踏みつけられた地面の反動により、3人は吹き飛ばされる。そして大きな地震と共に上からは無数の燃え盛る岩が落ちてくる。


 3人は体制を整えてもう1度近づこうとする。

 ジャダンジェの咆哮。強烈なそれは周りの溶岩を波立たさせた。

 どうやらジャダンジェは本気のようだった。



「うわぁ、つぇな」

「少し辛いわね」

「弱点ねぇかな」



 怯みながらも3人は冷静に立ち向かっていく。



「さぁいこうぜ!」



 康貴が一気に懐に潜り一撃を加える。

 しかし、すぐに蹴り飛ばされる。



「もらった!」



 かおりは、上げられた足に槍についている細い糸を巻き付ける。



「ほら!」



 そのまま強く引くとジャダンジェはバランスを崩す。

 その次に槍をジャダンジェの足下に投げる。そこから岩が突きだし堅い鱗を砕いていく。

 槇はチャンスとばかりにジャダンジェを突く。


 叫び声。


 槇は嫌な予感がして真上を見た。そこには口を大きく開けたジャダンジェの顔。



「槇!」



 かおりは糸をほどき、そのまま槇を絡めて引き寄せる。

 ジャダンジェは毒を吐く。

 ドロドロで紫の粘液が突き出た岩を溶かしていく。



「あぶねぇ。つか溶けるのかよ」

「あの毒は、岩は溶かし、生物の神経を殺す。厄介なもんだ」



 ダグラスがディグロから離れた。



「さぁ、オレも出よう」

「ディグロは?」

「ほっておけ」



 いまだ腰を抜かして呆然と3人の戦いを見ている。


 ダグラスは、ディグロを守るよりも、ジャダンジェを倒すことの方が被害は小さいと踏んだ。

 ダグラスはジャダンジェの顔目掛けて飛ぶ。完全な囮であった。


 槇、康貴は別の方から攻撃を加える。かおりは最悪の状態に備えて槍を構えている。

 ジャダンジェは口を大きく開ける。

 刹那、ダグラスの斧がジャダンジェの頭を割る。かおりは槍を顔目掛けて投げる。槍が頬をかするとその部分が爆発が起きる。

 堪らずジャダンジェは倒れる。



「今だ! 一斉攻撃!」



 4人は各々攻撃を加える。しかし、あまりダメージはなさそうで、軽く立ち上がってきた。ジャダンジェは飛び上がる。



「私に寄って!」



 全員かおりの後ろに隠れた。かおりの先読みが当たったようで、辺りにバリアのようなものを張る。ジャダンジェは空中から灼熱を吐く。



「かおりさすが」

「でしょ。もっと誉めて」



 灼熱攻撃が終わったようで、ジャダンジェは降りてきた。バリアを解除して4人は再びジャダンジェに襲いかかる。


 槇、康貴の連携を浴びせる。

 今度は2人に向けて口を開ける。

 かおりは軌道を反らすため、槍を投げ、爆発を起こす。が、その先にディグロがいた。

 腰を抜かして避けれないディグロが。

 もう間に合わない。確実に防げなかった。



「うわぁぁぁあ!!」



 ディグロは恐怖のあまり目を閉じた。

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