祭りの終わり
「てめーら、よく頑張った」
祭りも終わり当たりの人は散り散りになっていた。治療を2人とかおりはその様子を見て溜め息を吐いた。楽しかった時間も終わりなのだと。そして、ここからが本番なのだと。
そんな3人のもとにダグラスが来た。
「なかなかの成績だ。2人ともよく頑張った」
ダグラスが胸を張ってそう言った。
その言葉で槇は少し残念そうな顔を見せた。
「槇は惜しかったな。今回は相手が悪かった」
「そんな慰めいらねぇよ」
「こら槇!」
ダグラスは苦笑いを浮かべた。
「まぁともかくだ、試合の疲れもあるだろうから1週間くらい休め」
「ちょっ……! ダグラスさん!! 宝珠とりに行きたいんですよ! 今日しか山に入れる日はないんじゃないんですか?」
かおりの質問に顔を歪めながら答える。
「それがよ……。ここらの主のジャダンジェの産卵時期に被ったらしい。この暑さなら間違いない」
「ジャダンジェ?」
「んなの、ぶっ潰してやるぜ!」
槇は疑問符を頭に浮かべ、康貴が威勢よく叫ぶ。
「それができればいいんだが、流石にオレがついても全員が無事でいられる保証はない」
かおりはその名前を聞いて思い出した。あの日の記憶を。
「ジャダンジェって……、私がかかってた毒の持ち主ですか?」
「毒って……あのか!?」
ダグラスは悩むように目を閉じ静かに頷く。
「……そうだ」
かおりはわかっていた。あの毒の恐ろしさを。そこから感じる強さを。
「まぁ、単に延期になるだけで、来年まで待てとは言わん。取り合えず、ジャダンジェの卵が孵るまでの辛抱だ」
少しやる気になっていた3人は肩の力が抜けた。
「その代わり、訓練は付き合ってやる」
「「えーー!」」
男子陣は不満の言葉をたらたら溢す。
━━━━そんなときだった━━━━
「ダグラスさん!! ディグロが! ディグロが!」
叫びながら寄ってきたのは血相を変えたパージャだった。
「どうした。落ち着つけ!」
パージャの焦り様から、嫌なものが見え隠れしていた。
「ディグロが……、ディグロが1人で山に入って行ったんです!」
「なんだと!?」
響く声に周りの村人がただ事ではないことを察したようだった。
「バカ息子が! ジャダンジェが来てることぐらいわかってるだろうが!」
どうしようか悩んでいるダグラスを尻目に康貴は走り出した。
「康貴! どこ行くの!?」
「決まってんじゃん! 連れ戻さなきゃよぉ!」
「それはオレも同意だ」
槇は康貴の後を追いかける。
「友だちを失いたくない」
かおりは苦い顔をするが、やむを得なかった。
「オレも着いていく。バカ息子の躾は親の仕事だ」
「じゃぁ、私も!」
パージャがついてこようとした。しかし、それをダグラスが許さなかった。
「ダメだ! パージャはディグロが生きて帰ってこれるよう祈ってろ」
「でも、私!」
「信じろ。絶対に連れ戻してやる」
ダグラスを先頭に4人は山目指して走る。それを静かに見守るパージャは両手を強く握り合わせ、祈った。
ディグロの無事を。




