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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第9章〜〈ジンドゥム〉
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そのふたりはここで対峙する


 お祭り最終日。

 最終日には、火山の中に入れる。火山で最後の宝珠を手に入れられるのだ。

 それで、全てそろう。

 現実世界に帰るためのカギがそろうのだ。かおりは首から下げている羽根の刻印が刻まれているペンダントを握った。



「さぁ、向かえました!! 決勝ラウンドです。4人が頂上を目指して競い会う、まさにジンドゥム!」



 ジンドゥムの意味を切実に知りたくなったかおり。



「まずは、第1グループで見事な戦いを見せてくれたジンドゥムプリンス!! 槇!!」



 いつにも増して大きな歓声が槇に浴びせられる。かおりはため息をついた。



「そして、第2グループ代表!! 全試合10秒以内でノックアウトという異例な記録を残した、THE・キラー!! 康貴!!」



 こちらもなんだか盛り上がっている。主に中年の男性に人気があるようで、男臭い激励が飛んでいた。

 2人が舞台に立ち、睨みあっている。



「なんか、アニメみたいだな」

「アニメなら決勝戦に当てるだろうがよ」



 お互い武器を抜いた。



「お前、武器使ってなかったよな。なんでだ?」

「なんで? 槇と戦うときに不利だろ」

「たしかに、この状態だとオレのほうが不利なのか。色々と」

「安心して負けろって。オレがちゃんとかおりをエスコートしてやるから」

「絶対にお前になんかにはやらん」



 お互い武器に、火を、雷を、纏わせる。



「やべ、楽しくなってきた」

「あぁ、康貴と戦うの始めてだしな」

「ここでどっちが強いか決めとこうぜ」

「そうだな」



 ゴングが鳴り響いた瞬間、辺りに広がる圧力。

 金属と金属が交わった音と、雷が荒ぶる音と、火が燃え盛る音が出す迫力に観客は汗を握った。



「康貴……、お前強いな」

「槇には負けられねぇからな」



 2人はお互いを弾き、ある程度の間合いを取る。


 本番はここからだった。


 瞬時に剣を振り火の鳥を繰り出す。

 康貴は地面を蹴り、火の鳥の間を掻い潜りながら懐に入り、拳を腹部に入れ飛び上げる。

 そのまま空中に飛び上がり叩き落とそうとしたが、槇は体制を戻し、逆に蹴り離した。

 同時に柔らかく地面に降りるやいなや、槇が背後に回り斬りかかる。

 しかし、康貴が体を奮わせると共に電流を放ち、飛ばす。

 槇は一回転して柵に足を着け、諦めずに突撃する。

 その刃を振り向きながら弾き返し、再び殴り、地面に叩きつける。


 迅雷風烈の戦い。観客は瞬きもできず、固唾を飲むことも出来ず、この戦いを見ている。


 これを見てかおりは感じた。槇と康貴の圧倒的な能力の差に。



「槇、勝負ついたぞ。降参しろ」



 電撃を纏わせながら地面に這いつくばっている槇を見下す康貴。



「あんなぁ……、グへ……、負けられないんだよ」



 ゆっくりと立ち上がる槇。二本の足は、とても立っていられるほど確りしたものではなかった。



「諦めろって。オレには勝てない」



 槇はフラフラの剣さばきで斬りかかる。

 しかし、容易に避けられる。

 痺れを切らしたのか康貴は一瞬だけ力を放った。

 なにもしていないが、康貴から波動が放たれ、槇は吹き飛び柵にぶち当たります地面に倒れていった。



「しん!!」



 かおりの声。

 槇は立ち上がる。

 そこで歓声が湧くが、かおりはホッと胸を撫で下ろしていた。

 槇は後ろの柵に腰を預け息を整える。



「寝てればよかったのに」

「うるせぇ。……やっぱりお前に負けるのが嫌なだけだ」



 消えていた火がまたついた。

 槇は燃え盛る剣に触れ、鍔から先にさすり、形を変える。



「行くぜ」

「おぅ、来いよ」



 2人は互いに向かって地面を蹴る。

 その瞬間を一般人の目でとらえることは出来ない。

 気づいたら2人の矛は唸りをあげながら互いを襲っていた。



「まだまだ遅いよ、槇」

「準備運動中だっつうの」



 康貴が槇を押し飛ばし、間髪いれず斬りかかる。

 地面に足を着けた瞬間にしゃがみ攻撃を避け、勢いに任せて回転し、足を払う。

 こかされた康貴はバク転の要領で下がり立ち上がる。

 それを読んでいた槇の剣は、顔の目の前にある。

 康貴は波動を放ち剣を止め、電撃で吹き飛ばす。

 フワッと地面に立つ槇。



「どうした? さっきまでの殺傷能力大の攻撃が嘘みたいだぜ」

「へへへ。わかってるくせによ。苦手なラインをよ」



 槇は一発火の鳥を放つ。

 康貴はそれを斧で叩いく。

 予想以上の火炎に視界を奪われる。

 康貴はそれをもろともせず、体に電気を纏う。



「そこ!」



 康貴が振った先に、槇が斬りかかってきていた。

 見事命中し、槇は地面を数メートル転がり、立たなくなった。



「もう立つなよ。勝負ありだ」

「しん!!」



 また、かおりの声だった。

 康貴は思わずかおりを見てしまった。



「やっぱり、負けられねぇよ」



 槇は剣を杖代わりにして立ち上がり、まっすぐ康貴を見る。



「かおりとデートするのはオレだ」



 槇は剣をしっかり持ち、康貴に斬りかかる。

 康貴はそれに答えるように斬る。

 完全にクロスカウンターが決まった。

 2人は吹っ飛び、柵に激突した。

 康貴はすぐに立ち上がれたが、槇は立つのでさえギリギリであった。



「次で最後にしてやるよ」

「それはこっちのセリフだ」



 2人は地面を蹴り、次の瞬間には2人の立ち位置が入れ替わっていた。

 2人とも決着がついたのを知っているの武器をしまった。


 その数秒、風の音だけしか聞こえなかった。


 槇が膝をつく。

 そして、倒れたのは康貴であった。



「しーーん!!」



 かおりの声。

 嬉しそうな声。

 遅れて歓声が沸き上がる。



「接戦の末勝利を勝ち取ったのは槇選手!!」



 大逆転。

 人はそう言うだろう。だが、槇だけは納得しなかった。一番最後に、康貴の攻撃が入らなかった。どうせ振り遅れたのだろうが、やはり納得いかなかった。



 歓声の滝の中、槇は舞台を降りた。準決勝が終わった。

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