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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第1章〜〈エデレスメゼン〉
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あそこ



「なに探してんだっけ?」

「カッコイイあそこだろ」



 探し回って30分。

 3人はあの形が落ちていないかを探しているはずなのだが、まったく進展がない。

 と言うよりやる気なんか無さそうであった。



「あれが落ちてんの想像できないんですけど」



 かおりは恥ずかしそうに顔を赤らめながら、不機嫌にそう言った。



「想像できたほうがスゴいわ」



 槇が平然と言う。



「やっぱり逃げね?」

「康貴、そんなに逃げたいなら後ろのピンクぶっ潰してから言え。つうか死ね」

「槇、その言い方酷くねぇか? オレ真剣に言ってんのに」

「真剣に言う前に、真剣に現状考えた方が言いと思うぞ。あ、そっか。バカだから現状がわかんねぇか。てか現状の意味わかるか?」

「槇テメェ! ぶっ殺してやる!」

「あ! あれ!」



 康貴が槇に飛びかかろうとした時、かおりが声を上げた。



「あれ?」



 2人はかおりの見ている物体に目を向けた。

 それはあの形ではなく、タケノコに似た、しかしなにか違う物体がそこに落ちていた。



「あ! ボキの!」



 後方にいたピンクの球体型人間もどきもどきが走ってそのタケノコを取る。



「あたりらしいぞ」

「カッコイイか?」

「変な想像してた私がバカだったわ」



 各々愚痴を漏らす。



「これないとボキ寂しいから」



 ピンクの球体型人間もどきもどきはそのものを頭の上にのせて、2回転させる。



「下じゃないのかよ!」



 そうつっこむ康貴の頭を思いっきし殴るかおり。



「っバカ」


「じャぁ次ハ鬼ゴッこだ」



 は?

 3人はゴリマッチョクンを見た。

 明らかに様子がおかしかった。



 丸かった目が半月状になり、怒りの本能があらわになっているようだった。



「ボキが鬼。逃げなイとボキのゴハン」



 そう言い終わるとあのボルトの如くマッハスピードで3人目掛けて走る。



「ギャーー!!」



 それから逃げる3人。



「つかボルトほど速くないし、マッハスピードも誤解を招くぞ」

「なに一人言ほざいてんだよ槇! さっさと走れよ!」



 なんとか逃げてはいるが、段々と近付いていた。捕まるのも時間の問題である。

 とにかく森の中を適当に走り続け、森の外を目指した。



「キャ!」



 かおりがなにかにつまずく。

 その影響で転け、急いで立ち上がろうしたが、肩にゴツい手が触れた。

 背筋が震え、体から熱が引く。



「ツーカマーエタ」

「かおり!」



 康貴は走りながら上手く振り返り、急いで近寄る。



「かおりに触れんじゃねぇ!!」



 黄金の右足でゴリマッチョクンの股間付近を蹴り上げ、そのまま星になる勢いで飛んでいった。



「ボキだよ!」



 キランと光り、意味不明な言葉が響く。



「意外と柔らかいな」



 蹴り心地を述べた康貴はそのあと、いつもの笑顔をかおりに向けた。



「大丈夫か?」



 不意に抱きつかれた康貴。



「ありがとう」



 子羊のように康貴の胸の中で震えているかおり。

 そんなかおりを優しく抱き締めた。



「ないすごーるでんれっぐ」



 拍手しながら、しかし冷たい目を向け、棒読みの誉め言葉を浴びせた。



「なんだよ槇」

「いや別に」



 康貴は槇を睨む。しかし、槇は康貴もかおりも見てはいなかった。

 かおりは康貴からゆっくり離れた。



「ごめん……」



 今にも消えてしまいそうな声だった。

 康貴は大きく首を横に振り、



「こんな硬い胸でいいならいつでも貸すよ」



 と相変わらずの笑顔で言った。



「うん。……ありがとう」



 その笑顔に救われていた。だからかおりは笑顔でお礼をしている。

 それがどんなに歪な笑顔でも。



「なぁ、それなんか書いてないか?」



 槇が指したものはかおりがつまづいた小さな石柱であった。

 かおりがそれを読む。



「……マール、この先」



 3人の頭の上に点が3つ並んだ。



「丁寧に矢印まで」




 3人は矢印の指すそちらを向いた。そっちは森が終わり、また平原が広がっていた。



「なんかあっけらかん」

「拍子抜けもいいとこだ」



 3人はその平原の真ん中にある大きな町、マールへと足を向ける。


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