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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第9章〜〈ジンドゥム〉
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予選



 祭り初日。



 急に賑わい出した町。外に並ぶ屋台からは美味しそうな臭い。照る日をもろともせずに人は祭りを楽しんでいた。


 かおりとパージャはかき氷を片手に、ジンドゥムが行われる会場が見える位置に立っていた。



「すごい人……」



 この広場は人で埋まっていた。



「これがジンドゥムの人気よ」



 パージャは誇ったように胸を張る。



「大丈夫かなぁ?」



 ない心配を投げかけて氷を口に運んだ。



「心配ね。初日は4人が舞台で戦って生き残った1人だけを明日の本戦に出れる、いわゆる選抜戦よ」



 この戦いは味方をつくり、いかに体力を消耗せずに戦えるかが明日の本戦に響いてくる。



「頑張ってね」



 願う。せめてこんな所で負けないように。



「レディースアンドジェントルメン!! アンドボーイズエンドガール!!

 いよいよ始まりました、ジンドゥム!!

 世界中から最強を語る強者共が集まる決戦の日!

 この戦いを制し、英雄の称号を獲るのはだれなのか!!

 ルールは単純!

 目の前の敵を倒せばいいのさ!!

 みんな! 盛り上がってるか!!」



 湧き上がる観客席。かおりはそこ気迫に押される。


「さぁ先ず、この会場を盛り上げてくれるのは!!

 シーン!!」



 その掛け声と共にゆっくりと会場に上る槇。その容姿からなのか、女性の黄色い声が響いた。槇はその声の方に手を振る。さらに奇声に近い声は強くなった。かおりは思わず舌打ちを打った。



「続いてはーー!!

 ステク!!」



 次に上がって来たのは骨だけに見える体をくねらせながら軽々と会場にのぼる人相が悪い男。



「ねぇ兄さんなんかムカつかない?」


「続いては!!

 ドロイ!!」



 また同じような、しかしドロイは正装で、紳士的な雰囲気で会場に上がった。



「そうだね、ステク」


「最後は!!

 ドジャルガ!!」



 そして、最後に上がって来たのは図太い筋肉を見せつける、身体中にトゲをつけた男だった。



「弟たちよ、あの小僧をさっさとやって、オレのために棄権しろ!!」

「了解!」



 明らかに不利なところに入ってしまった。



「まずいわね。ステロイド兄弟だわ。あいつら、初日はなぜか必ず一緒で、残りの1人を再起不能になるまでやってはかならず長男のドジャルガに二日目の本戦のキップを譲る卑怯なやつらだわ。槇くん、かなり不利だわね」

「パージャ? どうしたの? まるで、解説じゃない」



 そんなこんなの会話のやり取りがあったことなんて、槇はわかっていなかった。ただ、初っぱなから本気を出さなきゃならないことを少しだけ悔やんでいた。


 始まりのゴング。



「さぁ、来いよ。一歩も動かねぇで倒してやるよ」

「あのやろう!」



 ステクが1人で槇に突撃する。槇は剣を鞘から抜きながらステクをドジャルガに弾き飛ばした。



「知ってるか? ジャパニーズ、居合い抜き」



 槇は剣を振り下ろし、剣先を地面につけた。

 ドジャルガは飛んできたステクを叩き落とした。その衝撃で、ステクは伸びてしまった。



「っく! 生意気な!」



 ドロイはナイフをどこからか出し、槇に向かって何本か投げる。槇は軽く全て弾いた。その刹那、ドロイは槇の後ろに回っていた。



「私の勝ちです!」

「あ゛? なんか言ったか?」



 槇は脇の下から剣を突きだし、ドロイの腹部を貫通させた。



「なんで……」

「取り合えず倒れろよ」



 剣を抜くと、ドロイは倒れてしまった。



「お、お前、弟たちを容易く……」

「はやくお前もかかってこいよ」


        

 会場はやけに盛り上がっていた。槇の華麗な戦い方に痺れているのだ。



「すごいです! 槇くんはあのステロイド兄弟をコテンパンにしています!」

「パージャ。うるさい」



 残った2人はまったく動こうとしなかった。



「まだか?」

「ふ。お前は一歩も動かないと宣言した。だから離れてりゃいいんだろ?」



 ドジャルガはポケットから爆弾を取り出した。



「ぎゃっはっは! 動かないで死ね!」



 無数の爆弾を投げつける。それは直線的に槇へ飛んでいく。



「下らねぇ。人を普通の剣士だと……」



 槇は、やる気のない目をカッと開いた。すると、槇からものすごい波動が発せられ、爆弾は方向を変えて、持ち主の方へ飛んでいった。



「ちょっちょっちょーー!!!」



 ちゅどーーん!!



 派手に爆発し、ドジャルガはどこかに飛んでいった。



「ったく。めんどくせー」



 槇はゆっくりと会場を降りる。



「勝者、槇!!

 見事だったぜぇ!!」



 歓声があがった。これを期に槇が世界的に有名になるのだろう。



 その後、何試合かを眺め、次に康貴の出番が来た。



「さぁ! 初日も後半戦!!

 次を楽しませてくれるのはコイツらだ!!」



 始まりのゴング。

 ゴングと同時に康貴は目の前の人に殴りかかった。



「バカ! ムダに体力消耗するだけよ!!」



 かおりが叫ぶ。だがしかし、康貴の振り下ろされた拳で一撃で相手を下した。



「ふぅ! さぁ、メンドイからさっさとかかってこいよ!」



 次に2人同時にかかってくる。

 右から来た剣を避け、肘で水落を殴り一撃でダウンさせ、左から来た槍を後ろに反って避け、その流れで二発顎に蹴りを入れた。

 瞬殺の劇。



「康貴くん……つ、強い!!」



 パージャの鼓動の高鳴りと共に、歓声は大きくなった。

 舞台上の康貴はそれ驚いた後、照れて頭を掻きながら歓声を上げている人に手を振った。



「スゴいね! かおりの彼氏2人とも本戦出場だよ!」

「う、うん」



 正直に喜べなかった。魔王には勝てないのだから。

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