『夜、また誓われん願い』
暖かい風が吹き抜け草木はなびき、沈む太陽は地平線の彼方に消えようとし、その朱が海を染めていた。
ゴウジェはその景色が見える、約束の地に立っていた。
崖ギリギリの所に、2つ、大きな十字架が建てられていた。
その周りには色鮮やかな花々が咲き誇っていた。
「ティエル、オレだけでアイツを止められるか?」
いつになく弱気だった。黒甲冑を脱いだその姿はいつもの威厳はなく、悲しみの波にに飲み込まれて出てこれないようだった。
「メリー、なぜ死を選んだのだ。まだ、我々にはやらなければならないことがあるではないか」
やりきれなかった。
「なぜだ、メリー」
愛していた者が先に逝ってしまった。
4人の物語に終止符がうたれたその時、今度は2人の物語が始まるはずだった。
ゴウジェはその時のために作らせていた、翼の刻印が入った指輪を自分の指から外し、そして、右にある十字架の中央に掘った穴に埋めた。
「メリー、愛しているぞ。直ぐにそっちに行く」
首にかけられた金のネックレス。それを強く握ってちかう。
「ティエル。これでいいのだろ。最後の約束、果たそうじゃないか」
その後、なにも語らなかった。
最愛の妻に黙祷を捧げ、振り返ってその場を去った。
後に金色の大戦争と呼ばれる争いがこの後行われる。
それはたった2人だけで潰れた国の話である。
「だが、その前にアイツは殺す」