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雪の塔



「ねぇ、知ってる? もし、またあの悪魔が復活したときの、封印方法」



 緑髪が冷たい風になびく。塔の最上階で見下ろす銀世界は歪な山を作っていた。



「知らん。そもそも封印を解かなければ良い話だ」

「そうね。それが1番いいわね」



 漆黒の甲冑は音も立てずただただ健気な女性を見ていた。



「それでも、もし万が一それが起こるのであれば……」

「やめろ。お前じゃなくていい」



 メリーは振り返った。鎧の奥に見える瞳に怒りを乗せていた。



「知ってるんじゃない」

「……」





 讃夜まで57日。


 3人は雪道を歩いていた。

 見渡す限りの銀世界。ペガサスたちで高い丘を登ってから当たりを遮るものはなくなった。

 シフォンが言うには、昔巨大な国があったが天界戦争と呼ばれるもので全てを灰と貸したとのことだ。その唯一残った塔に向かっている。


 槇は出る白い息を追うように空を見る。

 晴天の聖夜のような神秘的な星空が、現実世界の領域を無視していた。絵の様な空。手を伸ばせば届きそうとまで思わせる空。

 それがそこにはあった。



「なぁ、宇宙ってあると思うか?」



 5センチは積もっている雪を踏み固めながら、槇はそう呟く。



「あるだろ」



 康貴は雪玉でお手玉をしながら、当たり前だと言った。



「なら、今見えるあれはなんだ?」



 康貴は幾億の星が並んでいる夜空を見上げ、白くなる息を吐いた。



「宇宙」

「空ね」



 康貴の言葉に被せたかおり。



「私たちが見ている空が、空と言う名なら、宇宙は空なのではないか? 私たちが想像している宇宙が、宇宙と言う名なら、空は宇宙ではないか? これ言ったの誰だっけ?」



 かおりは空を見る。



「知らねぇよ」



 槇は雪のように冷たく言い放ち、歩みを進めた。



「オレが言いたいのは、宇宙と言う無限が存在するならば、生命と言う有限が存在するはずないし、もし、すべてが有限で染まるならば、宇宙さえも生命だってこと。オレたちの体の中に、幾億の生命が存在するように、オレたちは宇宙の体内で生きてるってこと」



 なにが言いたいのか、かおりでさえもわからなかった。ただ、なにかを悟ったような言い方に違和感さえ沸かなかった。

 ただその言葉を聞くだけの人形であった。



「あったぞ」



 槇が見つけたのは、シフォンの言っていた塔であった。

 築何年かわからないボロさで、中に入ることさえ躊躇いたいぐらいだった。



「ん? 宝珠が丸だし? 誰かが主を倒したのかぁ?」



 シフォンの言葉にかおりは焦りを覚えた。



「まさか、エデレスメゼン軍じゃ!?」

「久しぶりに聞いたなその名前。よく噛まなかったな」

「エデレせむゼン。ああ゛! 言えねぇ!」



 槇と康貴はボケてるのか、暴走気味だ。そんな2人に躊躇なく発砲。



「さっさと行くわよ!」

「いえす……シンデレラ」

「誰がシンデレラ? 悲劇のヒロインなんてイヤよ」



 相変わらず仲良く、塔に走って行く。

 塔の中に入ると異様な雰囲気が広がっていた。いたと考えられた生物は破片となっていた。



「酷い」



 その中槇はなにかを見つけたように壁に寄った。



「なぁ、かおり、これ」



 静かな声に寄り、槇が眺めている壁を見た。

 そこには、何かで削られて描かれた絵があった。


 赤い髪の人と、

 金の髪の人と、

 緑の髪の人と、

 青い髪の人が描かれ、短い文が下に添えてあった。



「━━━━ずっと仲間だよ━━━━?」



 そのままだった。



「ねぇ、かおり! こっちにもあるよ」



 かおりは康貴が呼ぶ方へ走った。赤い髪の人が赤い翼を持って闇を斬っていた。



「━━━━焔劉の燕━━━━」



 その隣に、金の髪の人が、全てを包み込むように黄金の翼を広げて祈りを掲げていた。



「━━━━聖紀の鳳凰━━━━」



 その隣に緑の髪の人が、身に氷を纏わせ、護るように謳っていた。



「━━━━彪雅の雉━━━━」



 最後に青い髪の人が、雷を操って地面を掴んでいた。



「━━━━雷隠の鷲━━━━」



 全てなぞって思う。



「赤いの、あの人じゃないか?」

「緑はあの女の人」



 槇とかおりは同じことを口にする。



「意味がわからない。敵対してるんじゃ」



 かおりはわかっているのにわからなかった。そんなの、統治してる存在しかわからないのだから。


 その時だった。


 詩が聞こえたのが。槇は反射的に武器を構える。しかし、対象となる相手は今はいない。だが、その覇気が3人の身にビリビリと伝わっていた。



「……来る」

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