旅立ち
讃夜まで残り58日。
完全に傷の癒えた3人はそれぞれの動物に乗っていた。
槇はキメラ。かおりと康貴はペガサス。
「さて、次に向かうのは北の地じゃ。ちょうど吹雪が落ち着いた時期にはいる。安全に目的地につけるじゃろう」
「え? まさか1回寄れって、それを見込んで?」
「いや、かおりちゃんに……ぐふっ」
長老の喉に青白い矢が刺さった。
「ともかく行こうぜ」
「目的地はスティア。昔のお城の名残の塔じゃ。案内はシフォンがしてくれるじゃろう」
「おぅ、ありがとう」
「行ってくるぜ!」
「また、来るから。5つ集めて」
「……待っておるぞ」
3人は手を振る。
勇んで浮かび上がる2頭に手を振らず長老は眺めるだけであった。
「「「修行、ありがとうございました!」」」
それを最後に3人は北へ向けて飛んでいった。
感極まる長老にゆっくりと近づくかめ吉。
そばに寄り添いそして過去を思い返す。
「6人目じゃい。あなたの修行を乗り越えた子たちは」
「……そうじゃな。最後の3人じゃったのかもな」
名残惜しそうに呟いて空を見上げる。
まるで夏が到来したかのように美しく広がる青空と入道雲。
「あの3人になぜ技を託したんじゃい?」
「何故じゃろうなぁ。ワシにもわからん。ただ、あやつらの最後に言っておった言葉。何故強くなるのか。3人とも違うよで全く同じじゃ。それが強さでもあり、弱さでもある。それにかけてみたくなったのじゃ。ワシの見た、いや彼女が見せたこの世の終わりを……」
長老は洞穴へ戻る。
どことなく寂しげなその背中にかめ吉はついていくのであった。
「ワシも、もう少し長生きしてみたいのぉ……」
その言葉は空に響いた。