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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第7章〜〈強さと弱さと〉
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どうして、強くなる?



 かおりは飛び起きるように目覚めた。

 その瞬間に身体中を走る激痛に顔を歪めた。



「起きたか! いや、起きるな! まだ安静だぜ!」



 目が覚めたかおりに直ぐ近づいてきたのはシフォンであった。

 シフォンは体当りしてかおりをまた寝かせ横に座る。



「いや、よかったぜ。まさかあの状態で『魔王』と対峙するなんて……」

「えっ!?」



 出血量のせいかまだ頭がぼーっとしているようだがそれでもしっかりとわかることがあった。



「私、『魔王』となんかと出会ってない!」



 シフォンは怪訝な顔をする。



「黒い魔力……感じただろ?」



 かおりはハッとした。

 その通りである。その魔力を感じてから直ぐの記憶がない。

 魔王に、やられた!?


 次に思考が行くのはもちろんあの2人だった。

 周りを見回すと2人の姿がないことに気づく。



「ねぇ! 槇は!? 康貴は!?」



 シフォンは溜め息を吐いた。

 かおりの焦る気持ちとは裏腹にシフォンは言葉に詰まったように話し出さない。



「ねぇ!」

「落ち着いて聞いてくれよ……」

「そんな前置きいらないから!」



「……外で特訓だってよ。全く、まだ安静にしてないと傷が大きいのに」



 シフォンはやれやれと首を横に振った。

 かおりは安堵にホッと胸を撫で下ろした。

 相変わらずの感覚に少し微笑む。



「私も特訓しなきゃ……」



 シフォンは起き上がろうとするかおりを止めずただ横目に彼女を見る。

 全身の傷はまだ彼女が動けるほどのものではないことくらい誰にでもわかった。



「なんでそんなに頑張るんだ? そこまで頑張らなくたってもう十分に戦えるぜ。何のために力をつけるんだ?」



 かおりはその問に少し考えてから答えた。



「もぅ、なにも失いたくないから。目の前で護れたはずの命をみすみす見過ごす事を、もうしたくない。だから強くならないと。誰よりも、もっと」



 痛みに絶えながら立ち上がる。近くにある長老のスペア杖を手に取り、ゆっくりと外へ向かっていく。



「全く……。どいつもこいつも。……バカは好きだぜ」




 康貴はひとりでかめ吉の岩を破壊し続けていた。



「あー、くそっ。いてぇなぁ」



 ぶつくさいいながら無数の岩を一瞬で破壊する。

 そこに1体の珍獣が現れた。



「どうじゃい? 気は済んだか?」

「んー、もうちょい」



 かめ吉は少し離れた場所でぽつんと座る。

 康貴の動きを見て、もはやこの特訓は意味を成さないのではないのかと思っていた。



「おい康貴! 休憩じゃい!」

「え、やだ」

「黙ってこっちに来るんじゃい!!」



 康貴は渋々斧をその場に置き、かめ吉の側による。



「傷が開いておるじゃい。手当するから動くんじゃないぞい」

「はいはい」



 康貴も何も無い場所にぽつんと座り、かめ吉の魔法に身を任せる。



「なぜ、そうまでする?」

「は?」



 意味のわからない質問にイライラする康貴。

 かめ吉は仏頂面のまま言葉を続けた。



「もう十分に強い。なのにどうして、強くなろうとするんじゃい?」



 康貴は空を仰いだ。

 雲一つない空に何の面白味もなく感じる。



「守りたい。命も、心も……。オレが強ければ出来たことなのに、弱かったから守れなかった」



 悲嘆な顔をする康貴に何も言わず治療を進めた。



「次は絶対にって思うほど悔しくて……。どんどん強くなる槇とかと比べたらなおさら惨めに思えて。だから、はやくあいつを……」



 キラリと光る瞳。

 康貴は空を見上げグッと堪えた。



「楽にしてやらねぇと……」




「槇。休憩だぜ」

「……あぁ」



 全身の激痛を耐えながらその場に倒れるように座る。

 シフォンは近くに座り空を仰いだ。



「今日はもうやめようぜ。ムリしても意味無いしよ」



 生きているのかわからないほど動かない槇に聞く。

 日向が温かい陽気にシフォンも丸くなる。

 このまま寝ようか、そう目を閉じる。



「やだ。やる」



 口だけが威勢を示すが、体は動かないようだった。



「ドクターストップ。流石に今日は許さないぜ。ただでさえ慣れない技使いまくって身体中の筋肉いたんでるんだからさ」

「オレより怪我してる奴らが頑張ってんだ。オレもやらねぇと」



 痛みの中ゆっくりと立ち上がる。

 剣を杖代わりにし広場の中央へ向う。



「なんで、そんなに強くなろうとするんだぜ!?」



 シフォンは槇の行動に驚き、飛ぶように立ち上がる。

 そして静止するように言葉を出した。



「こっちの人間じゃない。なんなら軍に立ち向かう必要なんて本当は必要ない。あの男に全部任せてれば……」


「わかんねぇよ! なんで強くなるなんかもうわからねぇ!」



 怒りのこもった声。

 シフォンは言葉を呑む。



「帰らなきゃとか、守らなきゃとか、はじめは思ってた。でも、今は、なんか止めなきゃいけない気がするんだよ。宝珠が揃ったら、良くないことが起こるんだろ。それを、止めなきゃ」



 槇の発言にシフォンは驚かなかった。

 視線を反らし、その言葉を受け止めるだけだった。



「オレらがここに、この世界に呼ばれた理由がそれな気がする。まるで、この世界が未来の終わりを知っていて、オレたちに救いを求めてるなら、今出来る事はある。……強くなること」



 槇はゆっくりと目の前の岩に近づいていく。

 杖替わりにしていた剣を振り上げ、岩を切りつけた。



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