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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第7章〜〈強さと弱さと〉
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岩の試練



「こんなところにいたんじゃい」



 かめ吉が準備運動中の康貴をやっと見つけた。

 寝ているかもとシフォンに起こして欲しいとの指示をいやいや従ったのに寝てもいなかったのだ。



「ったく、なにしてるんじゃい」

「んー、イメトレかな」

「どんなイメトレじゃい」

「あの黒甲冑を割るイメージ」



 そう言って力いっぱい斧を振ると近くにあった巨大な岩は真っ二つにさけた。

 かめ吉はそれを目の当りにして冗談ではないことを悟った。



「なっ!!?」

「こんな岩よりも硬いんだもんなぁ」

「ま、まぁ、とりあえず訓練じゃい。シフォンが待ってる。急ぐんじゃい」

「おっマジか! いっそげー!」



 そそくさと訓練所へ向うアホを見て溜め息が出る。



「まったく……。この岩はゴウジェしか割ったことないってのに、たまげたやろうじゃい」



 独り言を捨て、ゆっくりと訓練所へ向かって行った。



 康貴がたどり着いた場所は、1体の火の鳥が激しく燃え盛っている場所であった。



「なにこれ、スゲーじゃん!」



 近づこうとしたが、あまりの熱気に近づけない。

 その正体が知りたくて斧を抜いた。



「ふーきとべっ!!」



 一振り。

 それがとてつもない突風を起こす。

 火の鳥の体をかき消さんと猛威を振るう。

 なびく火は頭から小さくなり、その顔が出てきた。



「ちくしょっ! まだ安定させられねぇか」

「お!! 槇じゃん! なにそれ! 凄くね!」



 槇は火を全て消しその場に座った。



「あの狐が長時間纏えってうるせぇからさ」

「いい感じだったぜ槇! あれで消えなきゃ文句のつけようがなかったぜ」

「文句あるんじゃねぇかよ」



 ケラケラと笑いながらシフォンは康貴の頭に登った。



「よし、槇は自己練習! 今度は康貴の番だぜ」

「お! シフォンが相手してくれんのか!」

「もちろんだぜ! かめ吉!」

「よしきたじゃい!」



 かめ吉が四股を踏むと地面から無数の岩が突き出てくる。



「壊すの?」

「そうだぜ。全部壊したらクリアだぜ」

「そんな余裕だろ」



 そう言ってすぐさま壊しにかかる。

 それを見てシフォンは溜め息を吐いた。



「説明は最後まで聞けって」



 2個、3個、4個。

 順調に叩き潰していく。

 それが50を超えたあたりから、違和感に足を止める。



「あれ? 減ってない?」



 今まで通ってきた道を振り返る。

 獣道とも呼べる通り道はどこにも見当たらなかった。



「ほら、説明するぜ」



 ちょこんと頭の上に乗るシフォンに目を向ける。



「この岩、壊して直ぐに戻る様に作ってもらったんだぜ」

「えぇ!! それじゃぁ全部壊せないじゃん!!」

「それが問題なんだぜ。考えて考えて考え抜いて、全部壊すんだぜ」



 シフォンは康貴の頭を蹴り、飛び上がると槇の前に着地する。



「槇は次のことだぜ。なぁ、康貴。この程度できないと、槇にどんどん離されるぜ」



 その一言に康貴は姿勢を低く取る。

 斧を肩に担ぎ空気を深く吸う。



「それはイヤだ!」



 突風の後、ほぼ全ての岩が粉々に吹き飛ぶ。



「うぉ、凄いなぁ」



 かめ吉が呟くが、残った3本に目をやる。



「けど、あの3本はムリかぁ」



 岩が元に戻ると康貴が転がって岩にぶつかる。



「あーー! くそぉ! なんだよ! 触ったのに壊れなかったぞ!」



 立ち上がり、壊れなかった岩に近づく。

 触れ、斧で殴るがやはり壊れない。



「うぇぇへっ! 硬っ! どういうことだ?」



 振動で痺れた腕を振りながらその岩をまじまじと眺める。

 そんなことで解決するほど簡単な問題ではなかった。



「殴ってりゃ壊れるかなぁ」



 何度か殴るが欠ける程度でその程度すぐに戻ってしまう。

 あまりに硬く、腕が痺れ握力がなくなり斧を落としてしまう。



「なんでこんなに硬いんだよ!」



 疲労に座り込む。

 頭を悩ませるがなにも名案が浮かばない。

 そのことに地団駄を踏む。



「あーー!」

「これさ……」



 熱気を感じる。

 近くに槇がいるのがそれだけでわかる。



「殴っても壊れないと思うぜ」

「何でだよ」



 槇が岩に手を向ける。

 次の瞬間、岩が弾けとんだ。



「えっ!?」

「な」



 手をポケットに入れるとその場から離れていく。



「いや、ちょっと待てよ! 教えてくれよ」

「ん? 本気出せば? 殴るだけじゃなくてさ」



 それだけ伝えるとシフォンの待つ所へ向かった。



「意味わかんね。本気出しゃいいんだろ」



 うなだれながら立ち上がり、斧を拾う。

 そしてまた体制を低くとる。



「おりゃぁぁぁ!!!」



 先程と違うのは、体全体に電撃を纏うところであった。



「相変わらず癪に障るぜ!!」



 次の瞬間だった。

 目の前に広がった邪魔ものが全て消え去ったのは。


 突風の間を駆け抜ける電流は、炎を纏おうとしている槇を痺れされる。



「やべぇな、あいつ」

「もたもたしてると追い抜かれちまうぜ」

「はっ、怖いこと言ってくれるぜ」



 康貴は斧を地面に刺すとそのまま後ろに倒れていく。

 卒倒だったゆえにかめ吉が直ぐにそばに寄る。



「うぁっほい!! できたぁ!!!」



 急に叫ぶものだからかめ吉は反射的に飛び上がる。



「あっはぁぁ疲れたぁぁぃぃいやっほぉ!!」

「喜ぶか休むかどっちかにしろじゃい!」



 前足で蹴られると、えへへ、と笑った。


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