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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第7章〜〈強さと弱さと〉
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VS長老



 長老がかおりの特訓場所にたどり着くと、8つの珠は粉々に砕けていた。

 かおりは膝に手をつき、苦しそうに呼吸をしていた。



「これは……、思った以上の様じゃな。まさか、珠を砕く程の魔力なぞ、他にあやつくらいしか知らぬわ」



 驚きが口をつく。

 そして笑い出す。



「これはこれは、たまらんのぉっほぉっほぉっほぉっ」



 汗を拭い声のする方を向く。



「ねぇ……、次は?」



 長老はゆっくりと近づき杖をかおりに向ける。

 杖が淡い光を放つと傷がみるみる治っていく。



「次は、ワシと魔法勝負するのはどうじゃ?」



 傷が癒えるとかおりは立ち上がる。

 服についた汚れを払い落とし、長老に顔を向ける。



「やっと実践ね。いいわよ!」

「ひとつだけルールじゃ。魔法のみで攻撃を行うこと。武器に属性をつけての攻撃などは禁止じゃ。わかったかの」

「おっけー」



 ふたりは間合いを取る。

 スタートの合図もなく互いに戦闘態勢に入る。


 かおりは両手を広げ、水のベールを纏う。


 対する長老は杖を地面に刺し、ぶつぶつと呟きながら集中している様だ。



 先手をとったのはかおり。


 水の塊を長老に向けて放つ。

 その塊は次第に形を変え、まるで唸る龍の様になる。



「ワシニシタガエ」



 その一言だった。

 それだけで水龍は雨となり地面を濡らした。



「嘘でしょ……。なによそれ」



 長老は左手をかおりに向ける。

 それに反応してかおりは火の壁を目の前に作る。



「あまいの」



 左手から放たれる突風。

 風は火に弱い。故にかおりの判断は正しい。


 そのはずだった。


 火の壁は跡形もなく消え、魔力を溜めていたかおりを吹き飛ばす。

 後方にあった岩に背中を打ち付け、地面に倒れる。


 それを確認すると左手をゆっくり下げ、今度は右手を上げた。


 かおりは自身の傷を回復させながら立ち上がる。



「なんなのよ。チートじゃない。次は……」



 指で空をなぞる。かおりの周りに突風の膜が出来上がる。



「土!!」


「相手の魔力で属性を判断できる……かの」



 魔力を込める。地面から無数の石の槍が飛び出る。

 しかし、槍は膜を突破できずに砕け散る。



「まだまだっ!」



 かおりは土を力強く踏む。

 すると無数の蔦が長老目掛けて伸びていく。


 それを見て長老は息を深く吸う。

 目の前に迫る蔦に向かい息を吐く様に炎を吐く。

 業火により蔦は一瞬で燃え尽きる。



「これは怖いのぉ」

「いやいや、長老の方が」



 お互い睨み合いながら魔力を練る。



「やっぱり、これじゃないとかしらね」



 再び水を纏い、長老に手を向ける。



「同じ技は無意味じゃぞ」

「それはどうかしら」



 再び水龍を長老に向けて放つ。

 やれやれといった表情で左手を前に出す。



「ワシニシタガエ」

「上!!」



 龍は真上に上がる。

 その瞬間長老によってただの雨と化した。



「しもうた!!」

「ビリビリするわよ!」



 かおりは電撃を指先から放つ。

 電撃は雨を伝って目標に向う。

 ガードに入ろうとするが、電光石火の出来事。一瞬にして体が動かなくなる。



「ちっ、電力足らなかったわ」



 すぐさま風を圧縮して長老目掛けて放つ。

 それが被弾すると地面に倒れる。

 そこに土の壁を生成し押し潰す。



「これでどうかしら!」



 ゆっくりと近づく。警戒はしているが勝利を確信していた。

 いつでも応戦できるように水を纏う。



「ほら、どうせ死んでないでしょ。降参しなさい」



 返事が帰ってこない。

 それはそれで不安になるかおり。



「死んじゃった?」



 冗談半分で土壁の中を覗く。



「……っ!!?」



 中には長老の姿はなかった。

 すぐさま振り返り水の玉を放つ。



「遅いの」



 かおりの目の前に巨大な岩の犬のようなモンスターが現れた。



「ゆけ」



 水の玉をもろともせず大きな前足でかおりを踏み潰そうとする。


 風を使いながら避ける。

 踏んだ瞬間に起こる突風と粉塵と石がかおりを襲う。

 腕でガードするが、体中を石が切り裂いていく。


 石が収まると、火の玉をありったけぶつける。

 モンスターはそんなのお構い無しだった。



「……なんで! 弱点のはずなのに」



 再び巨大な足がかおりを襲う。



「こうなったら……」



 風を使って避ける。

 粉塵の舞う踏み切った足に飛び込み、その岩に触れる。

 すると足は赤く熱を持つ。


 かおりはすぐに離れる。

 それと共に足は爆発し、モンスターはそのまま倒れていく。

 自身の体重に負け、モンスターはどんどんと崩れていく。

 それは粉塵となり辺りの視界を全て遮る。

 しかし間違いなく、バケモノを倒したのだ。



「よっしゃ!!」



 喜びのあまりガッツポーズを取る。

 その瞬間だった。




「爪が甘いの」



 辺りの粉塵が消えると、かおりの喉元に土の刃が突きつけられていた。

 それは負けを意味した。


 かおりは力なく膝から崩れる。

 それと同時に土の刃も崩れていった。



「ふぉっふぉっふぉっ。まだまだじゃのぉ。あの場で声を出したら狙われるということくらいわからねばなぁ」

「はぁー。そうよね。まだ決着は付いてなったものね」



 平手で自分のおでこを叩く。



「あー、諸葛亮孔明が先生だったらめっちゃ怒られるだろうなぁ」

「……誰じゃ? それ」



 可愛く首を捻る長老を見て乾いた笑いしか出なかった。



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