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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第7章〜〈強さと弱さと〉
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火の魔法



 翌朝も槇が1番早く起きていた。

 昨日の復習とウォーミングアップ目的で薪に火をつけていく。

 もう慣れたもので軽く薪に火を灯す。



「準備はできたかの」



 そこにゆっくりと寄ってくる長老。

 目をやり、ようやくかと口角を上げる。



「あぁ、次頼む」



 薪を捨て体を向ける。

 長老は手を伸ばし、掌を空に向けると、掌から炎を出す。



「これをやってみるんじゃ」

「ちょっと待ってくれよ。媒体がないと燃やせねぇだろ」

「それが次の課題じゃ。これができんからぬしは火傷をするのじゃ。諸刃の剣の如く我が身に火を点けながらの戦法は危険じゃて」

「……何も言えねぇわ」



 槇は見よう見まねで手を伸ばし、薪に火を灯す感覚で気を送る。

 その場の熱気に汗が出る。

 しかし火は見えない。



「その方が難しいと思うのじゃが」



 長老は杖を突き出すと氷の結晶が槇の掌に乗った。



「え?」

「それ以上やると火傷するぞ」

「じゃぁ、コツは?」

「燃やすイメージじゃな」

「それがわからないから聞いてんじゃんか」



 辺りから熱が奪われていく。

 汗がすぐに引くのを感じ取るとまた手を伸ばした。


 再び念を込める。



「それじゃダメだぜ」



 頭に乗るモフモフした感触に集中を切らされる。

 辺りから熱気が飛び散る。



「んだよ。なにがダメだってんだ?」



 視線を上に向けるが尖った鼻しか見えない。



「イメージを温度上げることから火を出す事に変えないと、周りの温度が上がってるだけで火なんかつかないぜ」



 頭の上で激しく揺れる。

 あまりに激しく動くので槇はシフォンを振り落とした。

 綺麗に着地し振り返って楽しそうな顔を見せる。



「火は物性じゃなく、現象。そこを勘違いしてるぜ」

「んー。なんとなくわかったような……」

「早速挑戦だぜ」



 槇は人差し指を立てる。

 その指先に意識を凝縮する。


 槇の体から溢れる赤いエネルギー。

 その力は風の如く体中を伝い、指先に巡る。

 とてつもない魔力が槇の身体を渦巻いていた。



「ほぉ。英雄の力と言うやつかの」



 その勇ましいオーラに長老が笑う。



「其方の予言、的中じゃな」



 指先から、火は出ていた。

 見事なまでにそれは力として修得したのだ。



「なんだこれ。……熱くない」

「できたんだぜ! それが火の魔法だぜ!」


「━━━━火の魔法……か」



 思わずにやける槇。

 この世界に来て始めて、実感した力。

 自分ならできるという、自信。



「うむ。その調子で思い描く火の魔法の特訓をするのじゃ」

「言われなくてもやるよ!」



 すぐさま大釜に向けて火の玉を投げつける。



「━━━━ファイアーボール」



 そう呟いてニヤリと微笑んだ。

 次々に繰り出す火の魔法。

 ゲーム世界でしかなかったものが、できるようになるその快感に笑みがこぼれる。



「さて、ワシはかおりちゃんのところに向う。シフォンはもうひとりを頼んだぞ」

「ガッテンだぜ!」



 長老はゆっくりとその場から離れる。

 取り残されたシフォンは槇を何故か悲しい瞳で眺めた。



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