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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第7章〜〈強さと弱さと〉
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大空翔る



 食後、どこかへ消えた康貴を探しに辺りを歩くかおり。

 山の上であることを忘れそうな平地と、時折見せる山の陰影に足腰が強くなりそうだと思う。



 洞穴付近は畑や飲み水の出る穴など緑が栄えていたが、少し離れれば岩山である。

 草木は所々を染めるだけでほとんどが岩であった。



「こんなところに良く住めるわね、あのジジイは」



 悪口を吐く。

 その途端に気になるへこみを見つけた。



「何かしらこれ」



 まるで足跡だった。

 女性の様な華奢な足跡と、足袋だろう靴跡。


 この場で話し合ったのかと思わせる様に向かい合っていた。



 不さほど気にすることもなく、康貴を探すためにまた歩き出した。



 山の端まで歩いたがどこにも見つからないので戻る。

 覚えたての風の魔法で追い風を起こし、負荷を軽減しながら来た道を戻る。



「ガオーー!」



 喉太い鳴き声が聞こえた。

 それは間違いなくキメラのものであった。



「あ、そういえばあそこに行ってないわ」



 進む方向を変え、その方向へ向かう。


 岩に囲まれた平地、そこはキメラやペガサスが放牧されている牧場のような場所であった。

 キメラもペガサスも中央にいて、1人の男を囲っていた。



「あ、いたいた」



 ゆっくりと近づいていく。

 近づくにつれて、康貴になつく2匹の可愛い表情が見れるようになった。



「康貴」

「お、かおりじゃん。どうしたの?」



 2匹から離れ、 かおりの目の前に出た。



「いや、いなくなったから探してただけ」

「そっか、ごめん。コイツらに餌あげろって長老に言われてね」

「そうだったんだね」



 2人の会話にペガサスが割って入る。



「なんだよ」



 ペガサスに話しかけるとペガサスは頭を振った。



「え? 乗れって?」



 頭を縦に振る。

 それに満面の笑みで返す。



「ありがとう! かおりも一緒に乗ってだって」

「……康貴、なに言ってるかわかるの?」



 驚いた表情のかおりに笑いを返した。



「雰囲気だよ。そう、言ってる気がするってね」

「……そっか」



 視線を落とした。


 動物と話せる。

 それを思い出す。


 もっと早く長老に出会えれば、あんなことにならなかったのかもしれない。

 過去に縛られたように今までのことを思い返す。



「私、何人殺したんだろう……」



 急な言葉に康貴はかおりの手を取って両手で挟む。



「今更悩んだって、何にもならないよ」



 その手の傷が目に入る。

 古傷、新しい傷。

 無数のそれらが今までの過酷さを物語った。

 それと同時に、あの時よりも強くなっていると感じられていた。



「こんな見ず知らずのオレたちのために、命をはってかばってくれたんだ。

 それに後悔して欲しくないと思うし、オレは後悔させるつもりはないよ」



 手を離すとペガサスに乗る。

 そして、かおりに手を差し伸べた。



「ほら、暗い気分を晴らしてくれるって。一緒に行こう」



 ペガサスに乗る王子様。

 そんな少女漫画のようなことが起きないかなんて考えた時もあった。


 過去は過去。

 今は今。


 それは誰も教えてくれない当たり前。


 彼女は手を取り、ペガサスに乗り込んだ。



「よっしゃ!! 行くぞ!」



 ペガサスは気高く鳴き、翼を羽ばたかせた。



 爽快な速さで飛び上がる。

 風を切りながら、大空を舞う。


 雲の上の幻想。

 一面に広がる運河は大陸のように広がり、太陽は高く、本当に天空の世界があると思わせる。



 それと同時に、無限の可能性を教えてくれていようだった。



 地面に戻ると、槇が羨ましそうな目で2人を待っていた。


 かおりはゆっくりと降りるとニヤリと口角をあげる。

 次いで降りてきた康貴に抱き着いて顔をスリスリとする。



「楽しかった!」

「お、おお! そうだな!」


「よかったな」



 かおりは嫉妬している槇の顔を見て面白く思う。



「んなことより、朝の続きしろってよ。かおりは午後別のことやるから早く来いってよ。まぁ、ずっとイチャイチャしててもいいけどな」



 言葉を捨てて踵を返し歩いていった。



「槇ったらカワイイの」

「え? なにか言った?」

「なーんでもなぁい。早く行くよ」

「おう!」

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