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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第7章〜〈強さと弱さと〉
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早朝と倦怠感



「のぉ……。

 主は何を考えとるんじゃ?


 あの様な者達をこちらに連れてきたのはお主じゃろうて。

 ワシらの問題にわざわざ巻き込まんでもよかったと思うのじゃが。


 なに?

 ほぉほぉ……。


 お主も辛い選択をしておるのじゃな。


 皆、悩んでおる。

 その最後を決めるのは、本当にあの3人なのかもしれんな」




 日が昇った。

 山頂から眺める空は紅蓮に光り、1日の始まりが産声を上げる。

 エデレスメゼン中で最長の山、ガザナの山頂であるこの洞穴には、傷だらけで帰ってきた若き3人の寝顔があった。


 まだ星も見えるなか、3人を起こさずに外で(かた)を取っている老人がいた。


 風を斬る音と共に次々と形を変えていくその動きから、老いという言葉は似つかわしくなかった。



 朝の体操を終え汗を拭うと、大量の肉を持ちエサを待ちかねている3体の所へ向かった。


 キメラは老人の足音を聞き取るとダルい体を起こし、すぐ様近寄る。



「おぉ、元気かね。ほれ、持ってきたぞ」



 肉を地面に置くとキメラは肉を頬張る。



「いいこじゃ、いいこじゃ」



 その音に釣られてかめ吉が近寄ってきた。



「おはようございますじゃい」

「おはよう。今日はよろしく頼むよ」

「あいよ!」

「ふぉっふぉっほぅ。久しぶりに腕がなるのぉ」



 老人は愉快そうに洞穴へ戻っていく。

 それを見てかめ吉はあることに気づいた。



「って長老! ワシのゴハン!!」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 槇は目を覚ました。

 疲労が溜まっていたのか、この場にたどり着くと直ぐに寝てしまった。



「あぁー。案外ダルいな……」



 久しぶりの熟睡がより一層体の疲労を教えていた。



「まぁ、普通の高校生だったもんな……オレら」



 寝返りをうった。

 その先には大いびきをかいている康貴がいた。

 戦友を見て元の世界のことを思い返す。



「そういや、お前に怒られてたっけか」



 かおりのことをどう思うか。

 そんな質問に答えられなかった自分がいた。

 照れくさい?

 恥ずかしい?

 何だかわからない感情に言葉を濁した。


 それが何なのか、今ならわかる気がした。

 しかし、その対象がいまはかおりではない。



「最悪だ……」



 苦い記憶。

 鮮明に思い出せる。


 あの時、守れなかった記憶。


 それを繰り返したくなかった。


 自分でもわかっている。

 戦いの初心者が、ここまで生き残れたのは、天才的な戦闘スキルと奇跡的な運だと言う事を。


 だけど、これからはそれだけじゃダメだった。

 不思議な声に貰った力を使えこなせていない今、緑髪の女からも『魔王』からも守れない。


 槇は立ち上がった。

 近くに置いてある剣を持って静かに外に出た。



「……強くならなきゃ」



 朝日が眩しかった。

 それだけで、槇は焦る。

 時間だけが刻一刻と過ぎていく中、こんなにも寝てしまったと。



「おはよう」



 急に投げかけられた挨拶に槇は驚く。



「お、おはようございます。早起きですね、長老」

「もちろんじゃ。かおりちゃんの寝顔をみるため……グフカスっ!!」



 鞘で長老の腹部を殴る。



「なんもしてないだろうな」

「してないしてない」



 槇は溜め息を吐く。



「まぁ、そんな事はどうでもよい。槇や、強くなりたくはないか?」



 その言葉に驚く。



「ワシについてこい。お主にうってつけの練習を用意しておる」

「なんでそんなこと……」



 槇は半信半疑だった。

 こっちの世界に来てから、至れり尽くせりな対応なのだ。

 自分たちになぜこんなにも加担してくれるのか、なにか裏でもあるのかと疑心暗鬼だったのだ。



「お主が望んどるからじゃ。そうでなければ、ワシのとこなんぞに来れんからな」



 シワの深い笑顔が槇を見た。



「ほれ、はよ来い。時間が無いのじゃぞ」

「よろしく……お願いします」



 槇は深く頭を下げ、長老に着いていく。


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