『瑠璃色の記憶は消え去りし日々』
帽子の男は歩みを止めた。
巨大な空間に生える1本の巨大な柱。それを辿ると光が粒となって降り注ぐ。
その彼方先には色鮮やかなステンドグラスが彼を迎え入れた。
地震か地響きか区別がつかない揺れに男は目だけを左へ向ける。
「ゴーレムか」
巨大な魔法陣から現れる巨大な石の傀儡。
男は背中から大剣を抜き、構える。
「おい、黒騎士! 出てこいよ。こんなバカデカイの動かせんのお前ぐらいだろ。」
広い空間に響いた声に返事をするものはいなかった。
「っけ。つれねぇな」
ゴーレムは帽子の男目掛けて動き出す。
巨体からは想像もできないほどのスピード。
旅人ではそれに驚き、回避行動さえ遅れる。
しかし、男は違った。
たった一振りてゴーレムを砕いたのだ。
「おい。出てこないと倒せねーぜ。こんなつまらないやつに任せてたらよ」
「黙っていなさい」
男の足が地面とともに凍りついた。
予想もしていなかったことに身動きを封じられた。
「今、捕まえてあげる」
ゴーレムの影からその者の姿が現れた。
リーフグリーンの髪は三つ編みで束ねられ、鋭く光るステンレスのメガネの奥に光るスカイブルーの瞳。
そして、凍てつく波動を放つ、三刃の槍。
メリーはその姿を見せた。
「メリー……!!」
「あら私でがっかりかしら?」
「……そんなことねぇよ」
ニヤリと笑う彼を見て、舌打ちする。
「なぜ今更なの? 今更またなんで宝珠を集めるの? それにあの子達がそこまで必要? ただの子たちじゃない。あんな子たちを私たちのいざこざに巻き込む必要はないはずだわ。彼女はそんなこと望んでいない」
冷静に紡がれる言葉に奥歯を噛み締める。
「黙れ、お前になにがわかる!」
「わかるわよ。仲間だもの」
「わかるわけがねぇだろ! 腐った軍人の仲間入りしたお前が! はぁ……、その腐った精神、潰してやる。」
男は激しく燃え上がった。
凍てついた空間が一気にヒートアップし、まるでマグマの噴火口のそばにいるのではないかと錯覚させる。
炎が弾けると、男の大剣が紅く光る日本刀と姿を変えた。
「いい加減に、目を覚ましなさい!」
メリーはその身に氷の鎧をまとわせ、槍を構える。
お互いの一振りで空間が裂けた。