罪
イクスウェルが激しく光る。
かおりは反射的に目をつむった。
まぶたの上からでもわかる眩しさ。
その激光がおさまるのを感じるが、目を開けようとは思えなかった。
周りのドタドタという音が気になり、身の危険を感じまぶたを開けると自分を掴んでいた衛兵たちは軒並み倒れていた。
「なにこれ……」
大きく動いたイクスウェルが目に入り、かおりは小島を見る。
人魚姫がイクスウェルに捕まっていた。
手元には弓があった。
直ぐに拾う。
━━━━人魚姫を助けてくれ!
槇の言葉が脳内を反射する。
━━━━今ならまだ間に合う。
言葉を呑み、かおりは弓を手に持ち、弦を引く。
魔力は掴んでいる所に集まり青白く光る。
キリキリと音を出す弦。
絶対に当てる。そう思うほど軌道はぶれた。
ようやく射程にイクスウェルを捕らえる。
その今しかなかった。
━━━━助けなくてもいいんじゃないか?
邪念がかおりを惑わせていた。
かおりは人魚姫を助けたくなかった。
彼女に、槇が取られる気がして。
そんな考えを起こすのはおかしいとわかっていた。
「でも私……」
青白い光が弾けて消えた。
涙を流す。
自分のエゴで人を見殺す。
自分が冷静にそれを『罪』として認めた。
我と能の間で自分を傷つける。
イクスウェルが小島にその身の底部を出し、触手の付け根にある巨大な口を開いた。
ゆっくり、ゆっくり、その中に運ばれていく人魚姫。
━━━━まだ間に合う。
それなのに魔力を紡ぐことができなくなっていた。
本当に、いなくなればいいと思っているから。
もう、間に合わない所まで行ってしまった。
後悔し、さらにその後悔に後悔した。
人魚姫がイクスウェルの口に入れられ、その口が閉じた。
━━━━人を見殺しにした。
かおりは力なく崩れた。
━━━━今すぐに死にたい。
かおりが声を上げて泣き出したその時だった。
「間に合え!!!!」
一閃の雷光がイクスウェルに向かって放たれる。
それはイクスウェルの頭部に突き刺さり、その瞬間イクスウェルが悲鳴を上げた。
あまりの苦痛に口を開けたイクスウェルの口の中に人魚姫はまだいた。
そこに近づき、彼女の手を取ってその場から離れる。
その時には人魚姫の視界は戻り始めていた。
「間に合ってよかった」
シセリアはまだ眩む目を凝らして、目の前にあるその顔を確認する。
「し……ん……!!」
シセリアをお姫様だっこしながら、小島に降り立つ槇。
「間に合ってよかった」
槇はシセリアに笑顔を見せた。
「オレが護ってやる。別世界からだって、牢屋からだって、どこからでも助けてやる」
シセリアを地面に降ろし、護るように一歩前に出た。
そして、振り向いて言う。
「だから、コイツ倒して、オレと一緒に旅をしようぜ」
シセリアは瞳に涙を浮かべ、それを拭いながら決心、強く頷いた。
「もちろんじゃ!!」
2人は巨大な敵に矛を向ける。




