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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第5章〜〈人魚姫の微笑み〉
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正義と本意



「……どこにもいねぇよ」



 康貴が部屋に入り、かおりを一瞥して嘆く。

 この部屋にはいまだに鬱ぎ込んでいるかおりと、それをずっと見守っていたシフォンがいた。



「……しん、」



 康貴はかおりの寝ているベットに近寄り、座る。

 康貴の膝の上にシフォンが乗ると、シフォンはホッと息を吐いた。



「どこ探してもいねぇよ」

「海の中もいなかったらしいぜ。食べられた形跡もないし、流されるはずがないって変態が言ってた」



 シフォンの言葉を聞いて多少安心する康貴。

 まだ、生きているはずなのだ。この島のどこかで。


 その安心をかおりにも分けてあげたくて、頭を優しく撫でる。



「絶対生きてるよ」



 根拠はなかった。

 かおりは根拠が欲しかった。その姿を見たかった。

 あのぶっきらぼうな顔を見て笑いたかった。



「オレ、また探してくる」



 康貴はシフォンを膝からおろし、立ち上がる。

 こんな場所にいたくなくて、かおりの望みが叶って欲しくなくて、逃げるように扉を開ける。


 扉が閉まったと同時に壁を強く殴る。



「……ッ!」



 見つからない槇に対して、

 見つけられない自分に対して、

 自分を見てくれないかおりに対して、

 怒りを顕にした。



「あんなののどこがいいんだよ」



 歯を食いしばって、宿のロビーに足を向けた。


 そこはバーも含まれており、何人かはお酒を片手に今日の出来事を面白おかしく語っていた。

 その中に気になる会話が入ってきた。



「出てきたぜ、あの悪魔。しかも今度は知らない男を連れて回ってたよ」

「本当か!? どこに被害が?」

「あそこの店だよ。家族が皿をぶつけられそうになったんだとよ」

「またなのか! あぁ、早く“人魚の舞い”の日にならないかなぁ」



 康貴はその会話している人に近づく。



「なぁ、その話し、詳しく教えてくれないか?」

「ん? 旅の人かい?」



 康貴は頭を縦にふった。



「なら、左目が緑、右目が水色の女にあったらすぐに逃げることだな」

「なんでだ?」

「その女は誰彼構わず、自分が気にくわないと攻撃してくるんだ

。怪我した人は数知れないよ。ホント、人魚姫じゃなかったら警察に通報してやるんだが」


「人魚姫? 人魚姫が町にいるのか? 足があるってことか?」

「あぁ。人魚姫っつっても、普通の人間だからな」


「なんで人魚姫って呼ばれてんだ?」

「人魚姫は、数年に一度生まれてくる膨大な魔力の持ち主のことなんだ。この町では、その人魚姫を海に受け渡すことで海の怒りを抑えているっていう習わしがあるんだ」

「いわゆる、生け贄?」

「ド直球に言っちまえばそういうことになるな。その受け渡す日が、“人魚の舞い”の日だ」


「それはいつなんだ?」

「明後日だよ」

「明後日……」

「あぁ。気になるなら、来るといいよ。

 場所は川上にある湖だよ」

「川上だな。わかった。後、その人魚姫が連れ回してた男の姿ってどんなんだった?」


「残念だけど見てないんだよ。聞いた話しによると、イケメンだったとか」



 アバウトすぎる特徴だった。

 これを聞いただけで誰かなんて特定できるはずもなかった。


 だが、康貴はそれが槇である、と確信をもった。



「まだ一緒にいるなら、ここから東門を出て真っ直ぐ行くと大きな屋敷がある。人魚姫の住んでいる家だ。そこにいるかもな」

「ありがとう!」

「ちょっ! 待ちな! あそこには……!」



 やっと見つけた。

 そんな気持ちが顔に現れ、会話していた人の静止も聞かずにすぐさま走って行った。


 東門。

 そこから真っ直ぐ。

 着いた屋敷に槇がいる。

 槇に会える。

 かおりの笑顔がもどる。

 そう思っていた。



「ここから先は“人魚の舞い”の準備により通す訳にはいかない」



 東門には2人の門番が立っていた。



「なんでだよ! この先にアイツがいるかもしれないんだぞ!」

「そんなこと知らん! さっさと帰れ!」

「いいから通しやがれ!」



 門番に殴りかかる康貴。

 だが、すぐに弾き返されてしまった。



「さっさと帰れ!」



 また、無力を噛み締める康貴。

 尻尾を巻いて大人しく宿に戻った。



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