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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第5章〜〈人魚姫の微笑み〉
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青い女性



 槇はゆっくりと光の届かない深海へ沈み続ける。

 その奥にはこの海の主が同様に深海へ落ちていっている。


 海の主の威厳か、そのふたつの姿以外の影を見ることはできなかった。



「……あれ? イクスウェル?」



 遠目にその姿を見つける、人の姿があった。

 安全確認をするために自ら怪物の周りを泳ぐ。



「気絶してる? でももう、起きるぞよ」



 そろそろ離れようと怪物から少し離れる。



「……!!!」



 槇に気づき急いで近づく。

 槇の胸に手を当て、弱いながらも鼓動していることを確認する。

 しっかりと掴み、全速力で水面へ向かった。




 槇はゆっくり目を開けた。

 焦点を合わせていき今いる場所がどこなのか把握し始める。


 見たことない青い天井。

 タイルを綺麗に並べたような光沢のある天井。


 気持ちいい日差しと風が入り込む窓では白いシルクのカーテンがヒラヒラと遊んでいる。

 外は緑が見え、人の気配は特にない。

 町外れだろうか。


 寝ている場所は思いのほか快適なベッドである。右も左もぬいぐるみが置いてあり、それだけで女の子の部屋であろうと判断できた。


 現状をもっと把握するために槇は体を起こす。

 それによりベッドが深く沈んだ。



「すごい……、ふかふかだ」



 思わずこぼれるほどの弾力に、ベッドの値の高さを感じた。


 辺りを見回せば間違いなく女子の部屋であった。

 大きな三面鏡には化粧道具が並び、本棚には分厚い書籍もあれど、ほとんどが雑誌のように薄く、小説のようであった。


 扉はその奥にあるのだが、どうやらそこから出られる訳では無いようだった。


「お主、目が覚めたか」



 その声に顔を窓の方に向ける。

 それは人であった。

 

 槇はその姿に見とれた。



 華奢な体つきの肉付きは素晴らしい曲線を描く。

 来ているワンピースは南国のビーチのような美しい碧。

 外国人のような美しい顔立ち。

 海より青く、腰まである長い艶やかな髪。

 雪より真っ白い肌。

 そしてなにより不思議な魅力を醸し出す、右が水色、左が緑の瞳。



 誰が見ても美しいと感じる容姿であった。



「なんじゃ? 気持ちが悪い。わらわをそんなに見つめるでない」



 その言葉で槇は我に返り目線をそらした。



「す、すまん」



 その女性はベッドに座り鼻が当たりそうな程顔をちかづけ、槇の顔をまじまじと見た。



「ほぉ。こんなにいい男だったとわ」



 その発言に驚いた槇はまた女性の方を向く。

 その表情にニヤリと笑みを浮かべた。

 そして小声で呟く。



「なに期待しとるのじゃ、この変態が」

「テメェ、言わせときゃ……ッ!」



 女性の人差し指が槇の唇を縦に塞いだ。



「騒ぐでない。お主がいることがバレたら一大事じゃ」



 女性は扉を睨みながらそう告げた。

 槇は舌打ちをし、寝っ転がった。



「ふふふ、ふてくされた顔も可愛いのぉ」

「テメェ、友だちいねぇだろ」

「テメェとは誰じゃ? わらわにはシセリアというちゃんとした名前があるのだが?」

「テメェはテメェだよ」

「お主は口が悪いのぉ」

「テメェに言われたくねぇよ」



 お互い言う言葉を失うと、急にシセリアは笑いだした。



「どうしたんだ? アホにでもなったか?」

「いやなぁ。まともに話しができる輩に生まれて初めて出会った気がするぞよ」

「あくまでも気がするなんだな」

「そうじゃ! お主、わらわについてこい」



 女性が人差し指を自分の方に曲げると槇は起こされる。

 まるで魔法であった。


 そんなことに驚いていると女性は手を握った。



「え? ちょっと待てよ。そこ玄関じゃない」

「細かいことを気にするでない! 男じゃろ」



 引かれるがまま、窓から外に出た。

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