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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜プロローグ〜〈バレンタインデー〉
3/115

プロローグ-3-



 昼食も終わり、チョコを渡す頃合いの時間になった。



「ねぇかおり。悪いんだけどチョコ渡しに行くのに付き合ってくれない?」



 かおりの友だちはかわいいラッピングが施されている袋を持って立ち上がった。



「いいよ」



 かおりはなにも考えずに返事をする。



「ありがとー」



 かおりも立ち上がり、そのまま2人は教室から出て行った。


 それを確認した康貴は予備もなく立ち上がった。



「みんなごめん。用事があるんだ。また後で話し聞くから」



 女子たちが不満の声を上げた。



「ごめん。ホント。ホワイトデー楽しみにしてて」



 不満の声が一気に黄色い奇声に変わった。

 女子たちの間を通り、机に突っ伏してる槇に近寄った。

 槇の肩を強く叩き、耳元で呟く。



「おい槇。起きてんの知ってんだよ。ちょっと面貸せ」

「……イヤだっつったら?」



 やけに低い声。



「お前に拒否権なんかねぇよ」



 それに苛立つ康貴。

 槇はスッと立ち上がる。



「そうかよ。くだらねぇことなら殴るぞ」



 威圧的に見下ろす槇に、康貴はガンを飛ばす。



「くだらなくねぇよ」



 康貴は振り返り、歩き教室を出ていく。

 槇は溜め息をつき、無造作な髪を掻き、その手をポケットに手を突っ込んでダルそうに康貴を着いていく。

 教室で見ていた人全員が、その光景を理解できず、目で追うだけだった。






 屋上に2人。

 槇と康貴が互いを見合い、十分な距離をとりながら立っていた。

 まだ2月の冷たい風が2人のブレザーをなびかせる。



「槇はかおりのこと、どう思ってんだよ」



 康貴は単刀直入に聞く。

 それに槇は溜め息混じりに呟く。



「別に。ただの幼馴染みだ」

「そうか。……オレは違う」



 槇を睨みつけ意を込めて言葉を突きつける。



「オレは、かおりが好きだ」

「それ、オレに言って意味あるか?」



 槇はまた溜め息混じりに呟く。



「あるよ」



 怒りで気持ちよりも足が動き距離を詰める。



「かおりが好きなオレにくれたチョコと、かおりが好きじゃない槇にあげたチョコ。どうして一緒なんだよ」

「幼馴染みだからだろ?」

「ちげぇよ! ホント、お前わかってねぇんだな」

「さっきっから何が言いてぇんだよ!」



 槇の言葉に康貴は俯く。



「くだらねぇことなら殴るっつったよな?」



 槇も一歩出す。



「          」



 康貴は何かを呟いた。



「あ゛?」



 そこに、クラスの人から2人で教室を出ていったことを知らされ、あちらこちら探し回っていたかおりがようやく屋上に着く。



「槇! 康貴! やめて!」



 息を整える暇もつくらずかおりは叫ぶ。

 しかし2人には聞こえないようだった。


 2人の間に割り込み、止めようと走る。

 康貴は顔を上げ、目の前の男を睨む。



「この……、わからず屋が!!」



 康貴は足に力を入れて地面を蹴り、握りしめた拳を槇の顔目掛けて突き出す。



「ダメ!」



 槇はそれに反応し、ポケットに入れてた手を出し、向かってくる康貴に拳を突きだした。





 槇と康貴の拳が、

 お互いの頬にぶち当たろうと、


 かおりが、

 2人の間に入ろうと、



 した時、




 3人の視界は無くなった。




 真っ白な虚無に呑み込まれ、


 なにも考えることができず、


 なにもすることができず、




 視界が戻った時、3人とも青い空を見ていた。


 芝の上に寝転んでいたその事実さえ、まだ把握できていなかった。





 槇は頭痛のする頭を押さえながら、ゆっくり起き上がる。



「……ここ……どこだ?」



 かおりも同じように起き上がり辺りを見回す。



「え?」



 康貴は勢い良く起き上がり、辺りを見回した。



「……あれ? オレたち、学校の屋上にいたよな?」



 3人が見たものは、



────学校の屋上から見える市街地ではなく、


────ビルの建ち並ぶ都会ではなく、


────果てしなく続く草原と高い青空だった────



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