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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第4章〜〈砂漠の番人〉
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大空へ



 クジラのような生物の口から吐き出される3人は、砂の上に尻餅をつく。



「いったーい」



 かおりは打ち付けた腰付近を擦りながら立ち上がる。

 ふと目に入った、すでに立っていた槇の見ている先が気になり、視線を移す。

 切り立った壁が果てしなく続き、来訪者を拒む。

 見上げても天守閣は望めず、まるで天まで伸びているようであった。



「着いたみたいだな」

「これがそうなの?」

「登んのか」



 ため息にも似た言葉を呟く3人に影を落とす者がいた。



「登るんだよ、ガキども」



 あの声が飛んできた。

 ずっと待ち望んでいた、その声が。

 これでようやく逃げずに済む。

 そう思うと自然と涙が出るかおり。

 喜びをひまわりのような笑顔で見せる康貴。

 

 ようやく来たのだ。

 あの、勇者が。



「やっとここまで来たか。待ちくたびれたぜ」


「生きてたんだ……」



 かおりの一言につばのひろい帽子を深く被っているその男はゆっくりと3人に近づいていく。



「積もる話しは後だ。取り合えず長老の所に行くぞ」



 そう言い切ると口笛を吹く。


 その音を聞いて、3つの影が旋回している。

 それは間違いなく上空から高速で地上に向かっている。

 その存在に3人は見上げると、直ぐにその3体が地上に降り立った。

 その姿を見て、3人は感動という衝撃を味わう。


 一体は、純白の毛並みに身をまとった白馬。

 ただの白馬ではない。

 白鳥のような大きな翼をもつ白馬。

 いわゆるペガサスである。


 一体は、ライオンのような姿見に、大鷲の翼、ヘビのように鱗の見える尻尾、いわゆるキメラ体である。


 最後の一体は犬程のカエルであり象のような足をもつ、なんだかわからない生物である。



「スッゲー!! ペガサスじゃん!」



 康貴が一目散にペガサスに向かっていき、輝かせる目で愛らしいその青目を覗いた。

 するとペガサスが康貴の頬に自分の頬を擦り付ける。



「お! お前かわいいな」



 思わず頭を撫でる康貴。



「おら、コイツらの背中に乗れ。一気に天辺まで連れてってくれるからよ」

「じゃぁオレコイツ!」

「えぇー。私もペガサスがいい!」



 珍しく欲求を口にしたかおり。

 しかし、言って恥ずかしくなったのかすぐに顔を赤らめる。



「べ、別にこれだっていいんだから……!!」



 と言って指差したのはカエルだかなんだかわからない生物だった。

 ツンデレか、とツッコミながらその生物に近づく槇はそれをじっと見る。

 なんだか不快な感覚を覚えた。

 微動打にしない生物。

 興味本意に背中に乗ると、コインを入れるような穴があった。



「なぁかおり、お金」

「え? は、はい」



 かおりは麻袋からコインを出し槇に渡す。

 貰ったコインを謎の穴に入れる。


 すると、ヤケに音程のずれた音楽を奏でながら、ゆっくりと砂地を動いていく。

 それ以外なにか起こるわけでもなく、ただそれだけであった。


 変な絵図らである。


 堪らず笑ってしまう一同。

 音楽が中途半端に切れると稼働時間が終わったのか、バックしながら元の場所に戻る。



「デパートとかにあるやつじゃねぇかこれ!」



 変な生物を蹴って倒し、破壊しにかかる。



「おら、かめ吉。さっさと出てこい」



 帽子の男がそう叫ぶと、岩影からまったく同じ生物が出てきて、



「はいよ、兄さん呼んだかい?」


「「「変なのが喋ってる」」」



 その姿を見て、突っ込まざるを得なかった。

 カエルっぽいが、足はゾウのようで、翼もある。

 そして首にかけている板には『かめ吉』と書かれている。

 不格好で気味が悪い上に喋るという、気持ち悪い要素満載な生物であった。



「めんどくせぇからさっさとしろ」

「あいよ」



 そう言ってかおりの近くで立ち止まる生物。



「はやく乗りな姉さん」

「いや」

「えーーー!」



 即答に大きく声で叫び、へこむ生物。

 帽子の男は笑いながら、



「ペガサスには2人乗れるから、そっちに康貴とかおりが乗ればいい。槇はそれな」

「まぁ、オレはなんでもいいけど……これ亀?」

「オレも知らん。取り合えずそれだ」



 康貴が面白半分で名前を呼んでみた。



「おーい! かめきち!」

「かめよしじゃい! よ! し!」

「え! 『吉』、きちじゃん」

「よしとも読むんじゃい!」

「はいはい、どうでもいいから」

「よくないんじゃい!」

「おら、さっさと行くぞ」



 帽子の男はキメラ体に乗り、康貴とかおりはペガサスに2ケツ。

 槇は嫌々かめ吉に乗り長老の待つ頂上に向け翼を広げる。

 3体ともゆっくり翼を羽ばたきはじめ、ジャンプして空へ登っていく。


 青く広がる晴天を目指しどこまでも続く青い風を感じ、昇天するように空を駆ける3体。

 それらの背中にまたがっている3人は、この興奮と爽快感を楽しまない訳がなかった。



「これ、やべぇ!」

「やっほぉぉ!!」

「すごい! すごい!」



 今までいた場所が見えなくなるとそろそろ頂上が近い。

 手が届きそうな太陽に手を伸ばすかおり。

 それに沿うように康貴も手を伸ばした。



「届きそうだな」

「うん!」



 2人ともハニカミ合い束の間のアトラクションを楽しんだ。


 ふわっとした感覚とともに3体は地面に足を下ろした。

 頂上に着いたのだ。


 数分のフライトにまだ放心している3人を帽子の影から見る男がキメラ体から降り、すぐさま叫ぶ。



「おら、着いたぞ!」



 その声にまず立ち上がったのは槇だった。



「ありがとうございやす。3680でございます」

「黙らないとハリボテと同じ運命たどらせるぞ、かめきち」

「よしじゃい!」



 かめ吉とジャレている内に、康貴がペガサスから降りて、かおりに手をさしだした。

 その手をとり、飛ぶように降りる。



「ありがとう」

「どういたしまして」



 その様子を見て槇は舌打ちをする。



「着いてこい。長老が待ってるぞ」



 帽子の男が3人に背を向けて歩き出した。

 3人はその後を追う。


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