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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第4章〜〈砂漠の番人〉
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砂漠の番人



「行くわよ!」

「おう!」



 かおりが弦を強く引き直ぐ離す。

 光の矢は一直線にドラゴンに向かう。

 バトルの開始の合図だ。


 かおりの放った、青白い光の矢をドラゴンは避ける。

 すでに砂を蹴っていた康貴はドラゴン直前で大きく飛び上がり、頭にハンマーを振り下ろす。

 ギロリと動いた瞳で康貴を睨む。



「うわっ!」



 ドラゴンはその巨大な手で易々と康貴を吹っ飛ばした。

 吹き飛ぶ康貴を横目に、槇はドラゴンの懐に入り、2つの剣で腹部を切り刻む。



『ギャオー!』



 痛みを訴えるように叫ぶと後ろに飛び上がる。

 風圧に怯むが、次にと剣を構えた。

 その瞬間、ギョロッとした目が槇をロックオンする。



「うわ、まず」



 わかってはいるものの回避できるものではなかった。

 ドラゴンは槇目掛け空中から地面に勢いよく突撃し、砂を巻き上げながら砂地を滑るように着地する。


 槇はドラゴンに掴まれていた。

 身動きも取れないほど強く握られていた。

 出来ることと言ったら、目を動かすことであった。

 目をドラゴンの顔に向ける。

 そこには鬼の形相があった。



「えっ! ちょっ!!」



 ゆっくり口を開けながら近づく。



「ちょちょちょっ! 食べても美味しくないから!」



 口が目の前に迫り、後は閉じれば美味しく食べられる状態。

 万事休すとじたばたと体を動かす。



「いーーやーーだーーー!!!」



 口が閉まる。

 瞬間、ドラゴンが体をのけ反らせ、顔が一瞬高く浮いた。



「もらったー!」



 康貴がその隙を逃さず、アゴにハンマーを叩き込む。

 なかなかいい音が鳴り響いたと思ったら、ドラゴンは宙を飛び、背中から落ちていった。

 そのおかげで槇は解放された。



「お前すげぇな」

「あったぼーよ!」

「私のアシストがなきゃいれられなかったクセに大口叩くわね」

「お! かおり。それは秘密だろ」

「なにが秘密よ」



 かおりは再び弦を引く。



「ちょっと退いて」



 槇と康貴はかおりの目の前から退く。

 かおりの指先はいつもより光っていた。

 それはどんどん巨大化していき、渦を巻き始めた。



「なんて名前にしようかしらこれ。強い技には名前が必要よね」



 辛そうな顔を見せ、片目をつむると、笑顔でこう叫んだ。



射舞(いむ)!!」



 指を離すと渦を巻いていた光はその瞬間に無数の矢となり、起き上がろうとしているドラゴンに向かっていき、容赦なくドラゴンに突き刺さっていく。



『ギャオー!』



 また身をのけ反らせる。



「すげーな」

「でも射舞(いむ)ってなんだよ。名前いらなくね?」

「いやぁ雰囲気必要じゃん」

「いやいらねぇ」

「あっそ」



 すでに勝ったかのような会話を広げる3人。

 笑みを浮かべてハイタッチする直前であった。



『ギャオー!

 ギャオー!

 ギャオー!』



 荒ぶる怒声。

 ドラゴンは再び3人を睨み付け、飛び上がって突撃してくる。


 3人は上手く避け、かおりは避けたと同時に矢を放つ。

 着地するドラゴンは矢を弾くために長い尻尾を振り、それがかおりに直撃する。



「きゃっ!」



 かおりは数十メートル飛ぶ。


 すでに近づいていた槇はドラゴンの手を斬り、背中に乗ろうと飛び上がる。

 しかし、ドラゴンは一度下がり間合いをとってしまった。


 それを見切っていたような動きを見せる康貴は、再び頭目掛けてハンマーを振り下ろす。

 刹那、康貴は吹き飛んだ。

 ドラゴンが息を吐き、それが破裂したのだ。


 戻ってきたかおりはそのままドラゴンを射ぬこうとしたが、矢が軌道を変えて外れていった。

 その後かおりは風を感じた。



「なにこれ……」



 ドラゴンは風を味方にし纏う。


 そのまま風に乗り、槇向けて鋭い爪を突きだし突撃してくる。

 辛うじて爪からは避けたが、ドラゴンの腕に当たり飛ばされる。



「ちっとヤバイね」

「ホント。ヤバイわ」

「つかあれ反則だろ」



 傷だらけの3人は再び武器を構えた。



「いい作戦思い付いたわ。康貴、頭狙って。でもどうせやられるからガードね」

「うぃ。ってなんでそん……」

「槇はその後追って頭突き刺して」

「その前にかおりの矢が入るのか?」

「正解。わかってるわね」

「当たり前だ」

「よし行くわよ!」

「いやいや! 痛いのオレだけじゃん!」

「いけ」

「は、はい」



 康貴が先に砂を蹴り、追うように槇が走り出す。

 かおりは弦を引き、タイミングを見計らう。



「おりやぁ!!!」



 康貴は飛び上がり頭目掛けてハンマーを振り上げると、やはり手が伸びてきた。

 瞬間的に康貴はガード行動をとる。


 手が次に槇を狙うと、矢がドラゴンの目に突き刺さる。

 ドラゴンは絶句するが、そんな隙さえ、与えなかった。



「名付けて、砂漠の三連星ってね」


 槇の剣が頭蓋を貫通する。



『ギャァ!!!!!』



 ドラゴンはその場にゆっくりと崩れていく。

 倒れた風に巻き上がる砂に目を瞑る2人。

 決着は槇がいち早く知っていた。


 槇が剣を抜くときにはもうドラゴンはピクリとも動かなかった。



「うっしゃー! 勝った!」



 砂がおさまり、いち早く声を上げたのは康貴であった。


 康貴ははしゃぎ、槇とかおりはほっとする。

 お互い顔を見合わせて微笑んだ。



「いたっ!」



 突然落ちてきた物がかおりの頭に当たり、ムダにカワイイ声を上げた。



「大丈夫?」

「いったぁーー! なによこれ!?」



 かおりは落ちていたそれを拾い上げた。

 茶色いが透き通っており、触れるだけで力がみなぎる宝石のようなものだった。



「綺麗だね」

「汚くないか」

「槇はもっとロマンチックになれないの?」

「ムリだな」



 そんな会話をしていると、急に地面が揺れ始める。



「なに!?」



 それを答える前に、地面が浮き上がり、クジラのような生物が口を大きく開けて3人目掛けて迫っていた。



「えっ」

「うわっ!!」

「ムリ……じゃね?」



 3人は動くことも出来ず、クジラのような生物に食べられる。

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