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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜第4章〜〈砂漠の番人〉
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砂漠を行く



 夜明け。


 それ自身が幻想かつ魅力を放つのに、やけに開けた砂漠に最も近いこの町から眺める日の出は、さらに力強く神秘を放つ。



「ほら、起きなさい! 先急ぐわよ!」



 そう叫びながら、康貴に被せた布団をひっぺがした。



「うぅー。あと5分」

「なんて言わせない!」



 康貴を蹴ってベットから突き落とす。

 それでもしぶとく寝続ける康貴に溜め息を吐いて、耳元に口を持っていく。



「ボキだよ」



 なるべく似せるように裏声で甲高く呟くと、康貴は飛ぶように起き上がり、ハンマーを取り出して辺りを見回す。



「どこだ! ピンクやろう!」



 槇がケラケラ笑う。



「ほら康貴。早く行くよ」

「う、うん」



 まだ寝ぼけているのか、理解力が足りないのかは知らないが、康貴はキョトンとしていた。



 3人はチェックアウトし、砂漠に向けて歩いて行く。

 康貴が寝ているうちにすでに買い物を済ましている。

 故に後は歩くだけだった。



「あ。ちっと武器屋寄っていいか?」



 槇が唐突にそう言った。



「いいけどなんで?」

「なんでもいいだろ」



 ひとりでに歩いて行く槇を追って足早に武器屋へ向かった。



 武器屋に着くなり槇は店主にナイフを突き出した。



「売る」



 かおりと康貴はすぐに理解できなかった。



「ちょちょちょ! 槇、武器無くなっちゃうよ」

「お前の目は節穴か?」

「だって、買えないし」

「だから、持ってるっつうの」



 かおりは槇の腰付近を見る。

 すると、両端に少し剣の入った長い鞘があった。



「え?」



 槇は溜め息を吐く。



「戦利品だよ」

「あぁ……そぅ」



 かおりは理解した。

 康貴はボケッとしているが。



「まいど!」



 ナイフを売り、今度こそ砂漠へと向かう3人。

 果てしない道なき道を進む。

 その先にある山に向かって。

 この世界での道のりはもう少しだった。






「あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーつい!!!」



 叫べど跳ね返る突起物のない砂漠。

 業火の太陽によって焼かれる砂地はまさに灼熱のフライパンであった。

 現在40度付近。


 その中叫んだ康貴の声は虚しく広がるだけだった。



「おい、バカ黙れ。耳に毒だ」

「んなに暑いのに黙ってられっかよ!」

「ほら。ケンカしないの」



 相変わらずのやり取りにもこの状況下だと一触即発状態だった。


 槇は落ち着く為に買い溜めた水を飲んだ。

 汗は出ていないのに減る水の量はとんでもなかった。


 3人は水を片手にダラダラ歩く。

 その様子を、鋭く光る目が見ていた。


 歩くこと数十分。

 まだまだ砂漠ど真ん中だった。

 目的地は見えるのに、果てしなく歩いていた。



「あれ、蜃気楼じゃないか?」

「あり得るわね」

「まじ蜃気楼。まじ勘弁」



 と言いながらも真っ直ぐ歩いて行く。


 砂がうねりを上げ3人に近寄っていく。

 そのことに未だに気づかない。


 獲物を範囲内に入れると噴水の如く砂が吹き上がり、巨大な影が3人に覆いかぶさる。




『ギャオォーー!!』




 怒号の鳴き声に3人は一斉に振り向く。


 爬虫類の目がギョロリと獲物を確認し、二本の巨大な牙が無双を物語らせる。

 水掻きのような翼を体と腕の間に持ち、長い尻尾の先端は無意味に膨らんでいた。


 それはまさに、ドラゴンと呼ぶのが相応しいモンスターであった。



「なんだよあれ」



 康貴がそう言う。



「どっかで見たことある気が……」



 かおりが頭を回す。



「考えんのは後だ。まず、逃げるか、殺るかを考えようぜ」

「せいので一斉に言いましょ。せーの」



「「「殺る」」」



 3人の意見が一致すると同時に各々武器を構える。

 槇は二本の剣を両手に持ち、康貴はハンマーを構え、かおりは一歩下がり、目標に向けて弦を引く。



「さぁ、始めるか」

「かっけぇなぁ!」

「いくわよ!」



 お互い睨み合う。



「ギャオォーーー!!」



 バトルの始まりの合図。

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