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エピローグ

 とてつもなく薄暗い空。

 紅に染まった雲の欠片はどんよりと東へ向かっている。

 若干の汚れた空気が彼の鼻を通ると無性にむせたくなるが、これが普通であると身体が知っているらしい。

「帰ってきたのか……」

 カラスの鳴き声が時間を報せているようだ。いつからだろうか、ここで倒れているのは。

 槇は起き上がる。少しだけ動きの悪い身体は昔みたいに華奢であった。

「制服……直ったんだ」

 自分のあちらこちらを眺めて、ゆっくりと立ち上がり伸びる。ここに長時間寝ていたことを証明するように背中全体がバキバキと痛い。

「さぁ……てと」

 その場に一緒に寝ている、いままで冒険を共にした2人を眺める。

「変わりないなぁ。昔のまま? いや、そんなに時間が動いてないんだ」

 ポケットに入っていた携帯を取り出し、日にちを確認した。

「2月14日……」

「帰ってきたんだね。私たち」

 いつの間にか起き上がっていた彼女を見て小さく頷く。それがいいことなのか、良くないことなのか、判断もつかずに懐かしい風景を眺めた。

「なぁ、」

「やめよ。今日はさ。そういったしみじみしたこと、考えたくない」

 彼女は立ち上がりフェンスに寄りかかった。

「全部、夢。それでいいじゃない」

 なにかが変わる訳でも無い。所詮平行世界でのこと。

「私たちはここで寝てた。それだけ」

 そう。それだけのことだった。

 なにも変わらない、日常を過ごしているだけ。

「って思いたいんだけどねぇ。これをつけてると……説得力出るのよねぇ」

 彼女は振り返る。

「ねぇ、そう思わない」

 彼女は悲しそうに笑っていた。浮かべた涙は夕暮れ色に輝く。

 そして、金色のネックレスが輝いて見せる。それが何を意味しているのか、浅はかだがわかるように。

「そうだな」

 嬉しそうに笑み、一歩ずつ彼女に近づいていく。

「オレは信じているよ。オレたちが行った世界は、まるでオペラの悲劇に似た、お話の世界だった」

 そう呟いて康貴を蹴り飛ばす。

「おら! 起きろ! 帰るぞ!!」

「あと2日〜」

「アホか!」

「アホって言うやつがアホなんだよ〜アホ〜」

「お前……やっぱりアホだな」

 かおりはクスリと笑った。

「懐かしいなぁ」

 背筋を伸ばす。そして2人のもとへ向かっていった。

「もー! やめなさいってば!」

 3人の物語はここで終わり、ここから始まる。

『そんな期待に、ボク達は胸を踊らせるのだ』

 呟いた影は夕焼けに消えていった。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

5年前に友人だけに見せたことのあるやつを、少し改変してお送り致しました。

いやぁ、思ったより長くて直すのも一苦労でした。書き方も文体も違うから尚更……。

ってな理由でたいへん読みにくいとは思いますが、なかなかいい感じに仕上がってたのでここに掲載しました。

今後とも澁谷一希をよろしくお願いします!

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