始まりは勇者の導きに
暖かな光がかおりを包んだ。
赤、緑、白、青、黄。
懐かしいその感覚と臭いは彼女を裂け目から遠ざけた。
「危ないところだったな」
「かおりお姉ちゃん! 大丈夫」
「このくらいで音を上げないでね」
「まったくじゃ。わらわの手を煩わせおって」
「フォッフォッフォッ。パンツ見せてもらえんかね」
「ちょっと私の感動返して。エロジジイ」
それは今まで死んでいった人たちだった。
ダグラス、ミー、メリー、シセリア、長老。
その半透明な光の石が、守護神たちが各々の武器を担ぎ巨大な闇を睨みつける。
「かおり、私たちは道を開けることしかできない。後はあなた達に任せるわ」
「ありがとう」
「ふふ、たくましくなったわね」
メリーがその槍を裂け目に突き刺すと、裂け目は弾けて消えた。
「ほら、行きなさい!」
かおりは進む。
行く手を阻む裂け目は5色の光が消していく。
かおりは強く握った槍に魔力を込める。
「ほら、謳って。それが、あなたの強さ」
メリーの声に自然と口を開ける。
それが合図と言わんばかりに。
雑魚の排除に困っていた康貴。
それを赤い光が一脚する。
「お、すげぇ」
「何をぼけっとしてる。先を急げ」
「うわ、おっさん!」
「生きてたら説教食らわせるところだ。そんな時間もないな。さっさと行け」
「おう! ありがとう」
誰かの歌声に康貴の斧に魔力が乗り移る。
巨大な相手の攻撃を避けるだけで精一杯の愼。
「そろそろ疲れたんじゃい」
「んなこと言われてもな。ってくる!」
巨大な口から放たれるレーザービーム。
「もう力が」
「そんなこと言ってる場合かよ!!」
もはや避けられない。
その直前だった。
「やはりわらわじゃなきゃダメなようじゃな」
あの強力な攻撃を防いだのは、間違いなくシセリアだった。
「え、なんで」
「そんな不躾なこと言うでない。先を急ぐぞ。攻撃はわらわが防ぐ。心配せずに突っ込むのじゃ!」
「おう! いくぞ! かめきち!」
「よしじゃい!」
歌が聞こえた。それが力をくれる。間違いなく、あいつを一撃でやれる力を。
何も気にせず突っ込む。全て守ってくれている。
今までの全てが守ってくれている。
そう感じられた。
「3人、早くするんじゃ! もう時間がない!」
長老の声に焦るのは間違いない。だが、それでも確信する。
絶対に間に合うと。
「そう、ペガサスは左。キメラは真ん中、かめちゃんは右。そこに向かって」
ミーの誘導にまっすぐ進んでいく。
世界が壊れる音がした。
「うおおおお!」
「間に合え!」
「おりゃぁぁぁ!!」
触手が同時に落ちたのはその手前のことだった。
「「「よし!!」」」
喜びとともに強風が3人を中央の端まで飛ばされた。
打ち付けた痛みを我慢して立ち上がる。
「よくやった。ようやくボクの出番だね。やぁ、またせたね。因縁深き、リオイオ。最後にボクが相手するよ」
目の前には金色に光る女性がいた。
そう、ずっと自分たちをピンチから救ってくれていたその光。
「よく頑張った、異端者たち。でもまだ出番だよ。僕と一緒にあいつを倒そう。え? ボクが誰かって? ティエル。君たちにはシフォンと言ったほうが良かったかな?」
あまりに眩い光のその力は3人を魅了する。
この場所に神が舞い降りたかのような、そんな輝きに。
「さあ、行こう。始まりは、勇者の導きに!!」




