この世界の終わりを知っている
『相対すれば、死もその刹那のごとく』
リオイオによる世界の破滅は、もはや数刻まで近づいていた。
誰も止められず、誰も抗えず、誰も覆せない。
「そんな世界、オレが止めてやるよ」
かおりを襲っていた手は真っ二つに裂け、千切取れると、奈落の底へと落ちていく。
「槇!?」
「やっとここまで来たぜ。さっさとやっちまおうぜ」
赤く燃え上がる剣をリオイオに向け振りかざす。
「なんかよくわからねぇけど、止めてやるよ」
『全てを薙ぐ剣も、脆く砕け』
槇は飛びかかる。まだそこにある腕を伝い、懐まで向かう。
そのつもりだった。
「嘘だろ!!」
目の前には切り落としたはずの手があった。
その手に弾かれれば吹き飛び、そうなれば奈落の底は免れない。
『そんな世界の終わりを、ボクたちは知ってる』
そう、ふたりで仲良く。奈落の底へ。
誰も止めることはできず。
誰も抗うことはできず。
誰も覆すことができす。
この世の終わりをただ見守ることしかできない。
『それは案外、ボクの独りよがりな考え方だったのかもしれないね。どう思う? 死んでやり直すのと、運命に逆らうのと、はじめから無かったことにするの。選んでいいよ、3人に任せるよ』
その声が響くと、誰かがすぐに言葉を出す。
「絶ッッ体に諦めないっつうの!!!」
その声を聞くと、かおりは戸惑った。
「え、なんで!?」
いるはずない。ありえない。そんな言葉よりも先に、翼の羽ばたく音が耳に入る。
そして、落ちていく2人の手を取ったのは、
「「康貴!!」」
「よっ!」
『運命に逆らうのか。よし、力を貸そう!』
ずっと聞こえているこの声の主が未だに誰かわからない。
ただひとつわかるのは、ここに3人揃っているということだけ。
「よし、これで……」
「泣くのは後ね。とにかくあいつを黙らせないと」
「でもどうやって」
「背中の触手、あれを同時に落とす」
かおりがつぶやくと槇は疑問符を頭に浮かべた。
「何度もあれを1人で切ってたんだけど、ものすごい勢いで再生するの。ただ、なんとなくだけど、あれが回復の元な気がして」
「ならやってみよう」
「おし、いっちょやってやるか」
『あと、数分で世界が終わる。それと同時だ。この運命が変わる時間は』




