終止符
その剣が通らなかったのは何回目か数えても、既に負けは決まっていた。
槇は炎をまとわせた剣があの化身の剣にいとも簡単に防がれ、既に体力の限界を向かえていた。
「普通そうやって飲み込まれたら何かしらが弱点になるだろうがよ。残ってる精神とかそこら辺がよ!」
嘆いても響くはずない。
全て飲み込まれているのだから。
「どけ、小僧」
「え?」
言葉を返すよりも先にその巨大な斧が化身の姿を消した。
「そいつは、オレの獲物だ」
有無を言わせないその闇のオーラが槇の首を立てに振らせた。
「何度もすまない」
「早くいけ。やることが残ってるだろ」
「あんたも、できれば生き残ってくれ」
「貴様に言われたら終わりかもしれんな」
槇は走り出す。
その姿を見ずとも全てを託した男はその化身を睨みつける。
「まともなお前と、本気でやり合いたかったよ。さっきみたいな時間稼ぎじゃなくてな」
当たり一体に電流をまとわせる。それであらかたの雑魚は排除できる。
その化身だけはもろともせず己の獲物をよだれを垂らし狙っている。
「いくぞ!!」
電光石火の攻防戦。
剣は鎧を叩き、斧は風圧でよろめかせ、少しでも怯んだ瞬間に決着はつく。そんな勢いであった。
そう。決着は一瞬だった。
ゴウジェの斧は化身にヒットした。
吹き飛んだ化身は地割れによってできた奈落に間一髪手を乗っけ、残りは落ちるのみとなった。
「しつこいやつだ」
ゆっくりと近づいてきたゴウジェはその手を踏みにじる。
「いい加減くたばれ。お前の想像した未来は所詮そんなものだ。ティエルが死んだのを受け止めろ!」
踏む力を強めて行くがなかなか落ちない。
「あの時、ティエルが死んだのは、否、死を選んだのはお前のためだ。なぜ気付かない! お前のために、自らあれに飛び込んだんだよ。なのにお前はなぜ……」
「うるさい! うるさいうるさいうるさい!」
その闇の仮面が砕けた。
男は手を離す。
だが、直ぐ様闇の翼を広げゴウジェの前に出る。
「わかってるよ! だから、だから罪を償いたくて!」
「罪を償うために、さらなる罪を重ねてどうする!」
「オレはティエルさえまた……。」
「今のお前を見てティエルが喜んでくれるとでも思っているのか!?」
「っ!」
2人は再び刃を重ねた。
「お前、かぎかっこの前の丸、やめてなかったんだな」
「……。」
「まったく、なにも丸く治まってないぞ」
「……。」
「ティエルが好きなお前は、そんなお前じゃないんだよ!」
ゴウジェの鎧が電気を蓄え、暴電し始めていた。
「ティエルもメリーもお前にホレてた。なのにお前は、お前は!」
鎧の上からでも雷の衣がゴウジェを包み、その姿はまるで雷を帯びた獅子の如く堂々と輝いていた。
「いい加減気付きやがれ!」
重い一撃が男を襲った。
かなり飛ばされた男は一回転し羽根を広げて止まる。
その瞬間ゴウジェが中央を蹴り男を斧で殴る。
それを剣で受け止めるがそのまま崖下に飛ばされる。
ゴウジェは空を蹴り中央に戻り、斧を下ろした。
その瞬間下から男が飛んできて剣を突き出す。
辛うじて弾くが、そのままどんどん押されていく。
乱舞する剣を受け止め、拳で殴る。
少し怯むが、その距離から突きを繰り出す。
それが、ヘルムの一部を砕き、黒鎧に隠れていた顔が半分あらわになった。
ゴウジェは直ぐに斧で男を飛ばす。
「この甲冑を砕くのは、やっぱり生涯でお前だけだったよ」
青く短い髪の下の透けているような青い瞳が見据えているのは、
赤く長い髪と黒い瞳の男であった。
「ジーク! 最期だ! 受けやがれ!」
ゴウジェは全身に雷を集め、自分自身が雷と化した。
そのまま突撃する。
轟音。
共に雷光。
全てが無くなった時に、
2人は消えていた。




