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オレたちが来た世界は、未来の終わりを知っている。  作者: kazuha
〜プロローグ〜〈バレンタインデー〉
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プロローグ-1-

久しぶりのファンタジー?です!

若干テンプレくさいですが、昔書いたものを手直ししてお送りさせて頂きます。

大分長いので最後までよろしくお願いします。


 キーーン


 コーーン


 カーーン


 コーーン





 やけに間延びするチャイムが西日の入る校舎中に鳴り響いた。

 6時限目の終わりを告げるチャイムである。同時に今日の授業が全て終わったことを告げるものでもあった。

 この教室のほとんどの生徒は帰り支度をし、半数は帰宅し、半数は部活に向かう。



「ねぇ、かおり。今日は一緒に帰らない?」



 教卓付近でかおりと呼ばれた少女は、鋭いつり目の奥に光る黒目を話しかけてきた少女に向けた。



「ごめん」



 かおりは両手を合わせて申し訳なさそうに静かにそう言った。



「またぁー!?

 まったくあんな男のどこが良いのよ?

 忠告しとくけど、あんなのとつるむのやめといて康貴君と仲良くしてた方がいいって、絶対」



 少女はそう言って、なにか用事でもあるのか足早に教室を出ていった。



 かおりはその言葉を気にも止めず、大量の教科書が入っている重たいスクールバックを左肩に通して、机に突っ伏して微動打にしない、1人だけこの場から沈んでいる男に近寄る。

 その男を上から下まで眺める。

 反応のない事を確認すると足を上げる。

 そして、がら空きの脇腹を足の裏で力一杯蹴った。


 スカートが綺麗に舞い、ドスッという鈍い音だけが教室中に鳴り響いた。

 足を地面につけ、仁王立ちの状態で男を眺める。

 しかし、数秒反応がなかった。



「……あ゛あ゛ーー」



 気だるい、獣の唸り声のような声が男から上がり、起動し始めた左手でボサボサの髪を掻きながら上体を起こす。

 まだ眠たそうな目をキョロキョロさせながら言葉を発する。



「ん? まだ授業始まってないのか?」

「バカ(しん)。もう放課後よ。さっさと帰るわよ」



 間抜けな質問をかおりは冷静に返し、槇に背を向けて歩き出す。



「ん? おう」



 気の抜けた声を上げる。

 槇は大きく欠伸を吐き、流れ動作で机の横に掛かっているなにも入っていないスクールバックを持ち上げる。

 立ち上がるのと同時にバックを右肩に担ぎ、先に教室を出ていったかおりを追うようにだらだらと歩き始めた。



 2人は玄関にあるロッカーを開け、慣れた手つきで上履きから下履きに履き替えるとしっかりと鍵を閉め外に出る。



「お! ヤッホーかおり!」



 外に出て校庭の横を通っている時だった。

 手を大きく振りながら、かおりのもとに走ってくる、サッカー部のユニフォームを着た短髪な男。



「今帰り?」



 かおりの目の前でそう聞く男の顔は、汗でビッショリ濡れていたが、背後にある太陽より眩しく清々しい笑顔をしていた。

 かおりはその男の笑顔につられて不馴れな笑顔を作り、うんと呟いた。



「そっか。寒いし、気を付けてね」



 そう言って振り返り校庭に戻ろうとしたが、急に立ち止まり振り返る。



「あ、そう言えば! 明日バレンタインチョコ頂戴ね!」



 かおりは思わず笑ってしまった。



「わかったわよー!」



 かおりの声を聞いて「よっしゃ」とガッツポーズを取った。



 今度こそ男は校庭に戻って行った。



「相変わらず元気だな康貴(こうき)は」



 溜め息混じりに呟く槇。



「槇が元気ないのよ。少しぐらい笑ったら?」

「お前に笑ったらって言われたらオレは終わりかな」



 冗談を平気で言う槇をかおりは、はいはい、と軽く受け流しつつ、ムリヤリ手を引っ張る。







 帰り道の商店街。

 2人は50センチの間隔を開けて歩いていた。


 商店街はバレンタインを盛り上げるために、チョコを大々的に売り出している。

 色とりどりの包装や綺麗に飾りづけられているチョコ。

 多様なモチーフをかおりは横目で見ながら、どんなチョコを作ろうか悩んでいた。

 一世一代の勝負所であるから手は抜けなかった。


 急に槇が立ち止まる。

 不意を取られかおりは驚き止まる。

 そして、もうか、と呟いてしまった。



「じゃぁな」



 槇はかおりの顔を横目で見ながら、左手を軽く上げた。



「うん……。じゃぁね」



 それをしっかり聞いて槇はゆっくりと歩き出す。

 槇がいつも曲がる、あの曲がり角を曲がるまで見届ける。

 見えなくなると、いつの間にか着いていたマンションの中に入る。

 そして、またどんなチョコを作ろうか悩むのであった。



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