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第47話

　オズに無理をさせた王城での報告はつつがなく進み、オズたちは無事に王城から解放された。

オズはフレイの自宅の自室で安静にしている、そんな日が続いていたがフレイの自宅に珍しく訪問客が訪れていた。

「オズは大丈夫なの？」

　膝の上にどこか遠くを見つめているリューイと諦観とした表情を浮かべたイルミアを乗せて、尚且つ逃げられないように抱え満足そうなアルタナがフレイに聞く。

「そうねぇ、オズの魔力の回路がズタズタに傷ついているのよ」

　フレイのその言葉にアルタナの膝の上で全てを諦めたような目をしていたイルミアが、驚き顔色を悪くしていた。また、アルタナもオズの魔力の回路がズタズタに傷ついていると聞いて、目を見開いていた。

「慌てないの。オズの魔力の回路は修復されてきているし本人は大丈夫って言っているわ。それよりイルミアはどうしたの？」

「そうなの。この子、オズのことが気になるみたいでね」

「叔母さん！！？」

　オズの容態が大丈夫だという事が分かり、弛緩した空気が流れた。

　そして、アルタナの暴露によって、顔を紅く染めて膝の上で暴れはじめたイルミア。その様子をニヤニヤとしながら見ているフレイだった。尚、リューイはアルタナの膝の上で未だどこか遠くを見ていた。

「ほら、暴れないの」

「そうよ。いいじゃない。オズは優良物件よ？」

　自身の恋心を暴露され、泣きそうになりそうだったイルミアはアルタナに窘められ、フレイにはオズをすすめられていた。

　恥ずかしくてしばらく暴れたり、泣いたりしていたイルミアだったが、フレイやアルタナがなだめたおかげか、ようやく落ち着き始めた。それでも自身の恋心を暴露されたことでブスッとした表情をしていた。

「そんな顔をしないの。せっかくの可愛い顔が台無しよ？」

「ムー」

「せっかく来てくれたのだし、オズに会いに行ってみる？」

「っ？！！！」

「あら、それはいいわね。私も最近オズと会ってないし」

　フレイからオズに会いに行かないかと言われ、目を白黒させて驚いていた。アルタナもフレイの誘いに乗る。アルタナとしてはオズの学院生活について聞いておきたかったのだ。

　しかし、イルミアはアルタナがオズと話したいという言葉を曲解してとらえたらしい。

「叔母様！！」

　顔を紅く染めながらイルミアが焦ったように叫んだ。突然叫んだイルミアに大人二人は驚いたものの疑問が勝った。

「突然どうしたの？」

　アルタナが眉をひそめながらイルミアに聞いた。

「えーっと。叔母様は……」

　イルミアは目をぐるぐるとまわしあわあわとしながらもアルタナに答えようとしていた。

　その様子を向かい側から見てフレイは気づいた。イルミアがオズに対しての独占欲が出ているという事に。

　しかし、イルミアの様子を見られないアルタナは疑問符しか浮かない。

「まぁまぁ、イルミアには後で詳しく聞かなくちゃいけないこともあるし、ね」

　フレイのこの言葉にアルタナはニマニマと笑みを浮かべ、抱えているイルミアを抱きしめた。

　抱きしめられたイルミアは突然のことで、もがいたが諦めるように動かなくなった。

「そういえばさっきからリューイが大人しいけどどうしたのかしら？」

　抱えているリューイの様子が分からないアルタナが、フレイに確認の意味を込めて聞いた。

「そういえば先程から動いていませんね」

「そうだな」

　ボーっとしているリューイにフレイは何を思ったのか人差し指から魔力弾を撃ちだした。

　しかしフレイが撃ちだした魔力弾は、リューイにあたる前に霧散してしまった。撃たれそうになったリューイは変わらずにどこか遠くを見つめていた。

その様子にイルミアは驚いていた。

「っ！！　いきなり何をしているんですか？！！」

　イルミアがフレイの凶行に驚いて声を荒げてしまった。

「ん、ああ。リューイは大丈夫だな」

「イルミア、落ち着け。しっかりと加減されてたぞ？　それとよくあることだ」

　フレイは何事もなかったように言い、アルタナは懐かしさも覚えながら苦笑いを浮かべ、イルミアを宥めていた。

　そして、イルミアも宥められてか、落ち着いてきたらしくフレイに説明を求め、その答えが、

「誰でもああすれば何かしら反応するだろ？」

　とフレイは宣っていた。

　反応に困ったイルミアはアルタナを振り返った。

　アルタナは、首を左右に振るだけだった。

★☆★

　その後女性３人で姦しくおしゃべりをしている中で、リューイはいまだどこか遠くを見ていたが急に動き、喋った。

「うまれた」

　リューイが突然言ったこの言葉に周りの声が消えた。

「え、え、えーっと。ど、ど、どういうことですか？」

　案の定最初に反応したのはイルミアだった。

　まるで壊れた絡繰り人形みたく動きが硬かった。

「あー、やっとか」

「何が生まれたの？」

　フレイが何やら思わせぶりな事を言い、アルタナが素直な疑問を浮かべる。

　考え込んだアルタナの拘束が緩んだ隙にリューイは抜け出し、部屋から飛び出ていった。

「…え、ええ」

「…速かったわね」

　リューイの脱走劇に困惑し、唖然としたイルミアとフレイだったが、アルタナだけが反応が違った。

「まさか逃げられるなんて」

　抱え込んで逃げられないようにリューイも拘束していたアルタナだったが、一瞬の隙をつかれて逃げられることを予想してはいなかったようだ。

　そして、その言葉にハッとしてイルミアも脱出しようと動き出したが、脱出は叶わなかった。