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第42話

 リューイの魔術によって【マガツカミ】は動きを止め、そして灰すらも残さず全てを燃やし尽くした。まるで、最初から存在しなかったかのように。

 その様子をリューイやオズ、フレイが【マガツカミ】が燃え尽きた後もしばらく何も言わずに見ていた。


「これで時間ができましたね。お兄ちゃん」


 未だフレイの腕の中から脱出できていないリューイがことさら明るい声で言った。


「そうだな」



 オズはそう言ってフレイを見る。

 突然のことに放心していたフレイは急に我に返ったように動き出す。無論リューイを抱いたまま。

 しかし、フレイは何を聞いたものかと迷い、口をパクパクと動かすだけで意味のある言葉を紡げなかった。



 リューイは、フレイの様子を見なくてもどういう状況にあるのかを何となく理解し、困ったように言葉を掛ける。



「えーっと。一応初めましてというべきですかね。この状態で会うのは初めてですし」

「……リューイはリューイよね?」

「…はい。そうとも言えますね」



 フレイの問いかけにリューイは、少し考えてから答えた。オズはリューイとフレイがおかしな雰囲気になってきたのを感じ、助け舟もとい説明をすることを決めた。


「はぁ。フレイ【門】についてはどの程度知ってる?」

 オズに急に問いかけられたフレイは、少し考えながら答えを口にした。


「様々な場所に現れて、おかしな場所に繋がっている門のことよね? 簡単に言えばそこにあってそこにはない場所だっけ?」

「まぁ。専門的な事を言わなければ、それであっているその門」

 フレイのわざと曖昧にした説明をわざと受け入れたオズは、フレイの腕の中にいるリューイの頭を撫でながら魔術を発動させた。



「【子守唄】」

 リューイは兄であるオズに頭を撫でられて安心していたのか、素直に魔術にかけられスヤスヤと眠り始めた。

 リューイがしっかりと寝付いたのを確認したオズは新たに魔力を練りながら、フレイに合図を出し、直ぐにでも戦える状態をつくる。



 しかし、それが意味のある行動かと言われれば、あまり意味をなさなかった。

「本当にこちらであっているのですか?」



 オズとフレイの耳に聞こえてきたのは、疑うようなリースの言葉だった。

「あたしの言うことが信じられないのか?」

「でも、こちらの方から異常なほどの魔力の高まりが、感じられますよ?」



 次いで聞こえたのはエニスが誰かを小馬鹿にしたような声であり、リオンはエニスの言葉を信じている感じで話していた。

 その3人の声を聞いてオズは、他に誰がいるかを探ったが、他にはいそうになかったのでこちらから声を掛けようと考えていた。



「フレイ」

「あぁ、わかった」

 オズが魔力を練っていたのをやめ、フレイは3人に場所を知らせるために声を出そうとした。



「あ、いましたよ」

 エニス、リース、リオンの内リオンが最も早くフレイ達を探し当てた。

「フレイ様。さっきのなんか変な感覚がしたのってもう倒したのですか?」

「エニス。キモイ」



 エニスがフレイに対して猫撫で声で聞いたところ、リースは鳥肌が立ったのか腕をさすりながらエニスを罵倒していた。

 リースはエニスの耳に聞こえるようにわざと言っているため、当然エニスは怒った。



「はい。そこまで。報告したいこともあるからさっさと本陣に戻るわよ」

 怒れるエニスを制しながらフレイが手を叩きながら、この場を離れるように促した。

「それもそうだね。疲れたしボクはさっさと本陣まで戻ることにするよ」

 オズはそう言うとフレイがリューイをうまく抱えてオズの肩に手を置いた瞬間3人の姿が消えた。



「……私たちは連れて行ってもらえないのですね」

 エニスとリースが呆然としている中、リオンが呟いていた。







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