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第33話

 中継砦にオルテシア王国の主力が来るまでの間、会議室の一室をフレイが借りて、フレイの魔術教室が開かれていた。主な参加者は初日から出ていた、リース、リオンの姉妹にシュライブの義理の娘メリルが出席していた。尚、オズは、フレイに無理やり連れて来られては、その度に脱走を繰り返し、リューイに至っては、いつの間にかメリルと仲良くなっており、進んで参加していた。


 そんな比較的まったりとしていた日々が続いていたが、パロット帝国との国境に近いオルテシア王国の中継砦には、徐々に兵士たちが王都から続々と転移陣で来はじめていた。


 そして、王子であり、今回の戦の総大将を務めるエドワードも中継砦に到着しており、今回の戦いの決着の時は近いという雰囲気になっていた。


「はぁ、疲れたなぁ」


 エドワードは、護衛の騎士に挟まれながら、中継砦の司令室ともいえる場所に向かう途中ぽつりとそうこぼした。


 ただこの場でエドワードの言葉が咎められるという事はなかった。騎士たちは、なんと返したらよいか分からなかったのだが……。エドワードとしても護衛の騎士に何か言葉を返してもらいたかったが、エドワードの期待は裏切られた。


 エドワードたちは司令室につき、シュライブ、フレイといった事務仕事をしている人との話し合いを始めた。


「ようやく来たか」


「これでも大分急いできたんですがね」


 フレイの愚痴に、エドワードは疲れたとアピールしていた。


 エドワードの無駄なアピールはやはり無視される。


「転移陣の改良でも始めるか?」


 フレイがぼそりと呟いた言葉にシュライブやエドワード、お付きの人たちはギョッとした表情をした。


「うん? エドワードが言い出したんだろ? 移動は疲れるって」


「えぇー、確かに言いましたけど・・・。簡単にできるものなんですか? あの術陣はブラックボックスが多いって聞きましたけど」


 エドワードが幾分、懐疑的にフレイに問いかける。


「そもそも、あの転移陣を創ったのは私だぞ? 改良くらいどうってことない」


 フレイは簡単に言う。


 しかし、シュライブが待ったをかける。


「簡単に移動できるということは、敵も動きやすくなるということだぞ? 秘匿しても、いずれはもれるものだ」


「あぁ、その心配はあるか・・・。エドワード頑張れ」


 シュライブの言葉に、フレイは簡単に納得を示した。というよりも後の態度から見るにそこまで本気ではなかったようだが。


 フレイの言葉に護衛の騎士たちは、ホッとしたような表情を浮かべ、エドワードも便利なだけではダメだと理解した様子だった。


「さて、これからどうする? 今は帝国の攻勢も落ち着いてはいるが・・・」


 フレイはそう言うとどこからかこの近辺の地図を取り出した。


「えぇ、ここ最近敵の攻勢は弱まっています。ですから一気に方をつけたいと思います」


 エドワードはそう言い切った。


「その考えには私も賛成だ」


 シュライブも同意を示した。


 エドワードがフレイに視線を向けると、フレイは目をつぶって何かを考えるような仕草をしていた。


「やれと言われればやるだけさ」


「では、3日後をめどに動きます。いったん休憩にしましょう」


 そう言ってエドワードは御供を連れて退室していった。







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