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第27話

 一瞬の浮遊感の後に先ほどまでいた王城の術式場とは違う術式場の風景が見える。


「ここが、前線への中継砦か」


 リース、リオンの双子とリューイがキョロキョロと術式場を見回していた。術式場に詰めていた兵士がフレイに声を掛け一言二言話すと兵士は、術式場の外へと出ていった。


「どうしたの?」


 その様子を目ざとく見ていたリューイがオズの後ろに隠れながらフレイに聞いた。まだ先ほどまでのフレイのお説教が答えているのだろう。


「うん? あぁ、私たちはしばらくここを拠点にしながら帝国の様子を探る」


「そうなんだ」


 フレイがこれからの予定を話し、オズと双子が納得を示していた。すると先ほど出ていった兵士とは別の身綺麗で厳つそうな兵士が、副官と思しき幼さの残る兵士を連れてフレイに話しかける。


「ヴェルダンディ公爵と宮廷魔術師の皆さまですね。これからの予定を砦の中をご案内しながら説明します」


「頼む」


 フレイが問いかけに答えたが、身なりの良い兵士が名乗らなかったので双子が訝しんでいた。しかし、フレイは一切気にしてはいなかった。


「あぁ、名乗り忘れていました。自分はパロット帝国方面軍中央補給砦責任者のシュライブ・ディンクスと言います」


 シュライブの目が一瞬、フレイ、そして荷物と一緒に横たわっているエニスを捉えていたが、問題なしと判断したのかほぼほぼ無視をしていた。そしてフレイに聞く。


「ご案内いたしますが、そちらの女性はこちらで運んでおきますか?」


「あぁ、オズ」


 フレイがオズに声を掛けた。オズは面倒臭そうに寝ているエニスのそばまで歩いていくとエニスの鳩尾をためらいなく踏んづけた。


「う゛ぉ」


vエニスが女性にあるまじき声を上げた。そして、痛かったのかエニスはうずくまりながら呻いていた。オズはいい仕事をしたとでもいうように実に清々しい笑顔だった。


「いってぇ」


 しばらくして、エニスは顔を盛大に顰めながら、お腹、特に鳩尾部分をさすっていた。


 一連の流れを見ていた物資を運ぶ兵士たちや双子は、オズの容赦のなさにドン引きしていた。


「ようやく目が覚めたか?」


「あ、はい」


 フレイが未だ顔を顰めているエニスに声を掛けた。エニスが不機嫌そうな雰囲気を出していたが、声を掛けたのがフレイだとわかると途端にビビっていた。


 フレイを何度もキレさせたことがある経験からか、今の状態はヤバいとエニスは感覚的に理解していた。


「な、何でしょうか?」


「とりあえず説明はいるか?」


 未だにビビっているエニスが、フレイに怯えながら声を掛けた。そんなエニスに対してフレイは、今の状態について質問はあるかと答えた。


「いえ、問題ありません」


 エニスは周囲を見渡し兵士もほれぼれするようなきれいな直立姿勢でそう答えた。


「そうか。ではシュライブ殿お願いします」


「はい。では、会議室にご案内いたします」


 シュライブが頷き副官を連れて、術式場を出ていき、その後にフレイ達が続いて行った。



★☆★



 砦の中慌ただしく動き回っている兵士たちが多い中、シュライブに挨拶する一般の兵士たちが多く、その様子を見ていたフレイがシュライブに言う。


「随分慕われていますね。シュライブ殿」


「ありがとうございます」


 フレイが妙に突っかかるように聞くが、シュライブは若干だが口角をあげて嬉しそうにしていた。この様子に目ざとく気づいたオズは、噂通り実直な人なのだろうなと思っていた。


「ここが会議室になります」


 オズやフレイの主観で幼さが残り、士官用の制服に着られているように見える兵士が、シュライブに到着したと言った。


「あぁ、ありがとう。後、お茶の準備を頼む」


「はい。分かりました」


 シュライブが幼さの残る兵士に続く指示を出し、幼さの残る兵士も指示のため準備に走る。


「では適当におかけください」


 会議室に入るやいなやシュライブがそう言って席をすすめ、自身はいつも座っていると思われる席についた。フレイ達もシュライブに倣い言われた通り適当に席についた。


 しばらくして、幼さの残る兵士がお茶を人数分運んできて、各人の前に置いていく。そして給仕が終わるとシュライブの後方に移動する。しかし、シュライブがその動きを止めさせる。


「長くなりそうだから、お前も座れ」


「あぁ、そうだな。座るといい」


 シュライブの言葉をフレイが支持をする。この場でもっとも上位にあたる二人に座れと言われ立ったままでは、納まりが悪くなる。そう判断したのか、幼さの残る兵士は、失礼しますと頭を下げて椅子に座った。






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