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第13話

「あ、やばい、寝過ごした」


 オルテシア王国王都オルテシウムの高台にある大きな屋敷の一室から若い男性の声が聞こえた。


「やばいけど、まぁ、仕方ないか」


 若い男性は、そう言いながら準備をし始め学院へと向かっていった。



☆★☆



 王立学院の1年特待生クラスには8つの机が置かれておりそのうち7席が埋まっていた。


「ヴェルダンディ先生。空席があるようですが」


「あぁ、今は気にしなくていい」


 眼鏡をかけた神経質そうな少年の質問に対してフレイは答えた。


「とりあえず、ここにいるメンバーだけで自己紹介をしてもらおうかな?」


 フレイは、教室を見渡しながらそう言う。


「では、私から。シャロン・オルテシアです」


「わ、私は、ア、アンリ・オルテシアです」


 シャロンが名前だけの自己紹介をした後すぐにアンリも同じような内容の自己紹介をした。アンリに至ってはおどおどしていたが……。


双子の簡単な自己紹介にフレイは眉根を寄せた。その様子に目ざとく気が付いた耳長族の少女が席を立ち名乗る。


「え~と、私はイルミア・ブランディアです。得意な魔術は治癒です」


 イルミアと名乗った銀色の髪を一つにまとめ、肩へと流し、とがった長い耳の少女がシャロンとアンリよりもちょっと詳しく自己紹介をした。


 イルミアは今までの自己紹介の流れを変えようとしたのだろう。フレイは顔に出ないように喜んでいた。


「オレは、パース・ウルティアだ」


 フレイの喜びもつかの間にパースと名乗ったスキンヘッドの大男が、イルミアの作った流れをぶった切った。


 パースは蒼い目をしたスキンヘッドだった。


 フレイは、心の中でパースに対して悪態をついていた。


「えとえと、リコルは、リコル・クァンジュなのです」


 若干嫌な雰囲気になりかけたところ、赤い長い髪をツインテールした幼げな少女が涙目になりながらリコルと名乗る。


「イグニール・ケミングです」


 金髪黒目でメガネをかけた神経質そうな少年が立ちあがりイグニールと名乗った。


 フレイは、とりあえずホッとしていた。一応問題なくリューイ以外の自己紹介が終わったから。そして、ふとフレイは、リューイのほうを見た。


 なぜかリューイは窓から外を眺めていた。その表情を言い表すなら、どうして自分はここにいるのだろうという表情だった。


 フレイの顔がわずかにだが引きつった。そしてそんなフレイの様子に気づく学生はいなかった。


 フレイは思った。オズがいないと周りに興味すら持たないのかと。


 誰も口を開かなかった為に教室内が嫌な静寂に包まれる。


「えーっと、リューイ自己紹介をして?」


 フレイはその静寂を破りリューイに話しかけた。


「ん、リューイ」


 リューイは立もせず視線を外に向けたままそう言った。このことにイグニールが何かを言おうとして立ち上がる。


しかし結局は言おうとして言えなかった。


 リューイが急にキョロキョロとしだし、落ち着きを無くしたからであった。


 その様子の変化にほかの学生たちはどうしたのだろうとざわめきだした。


 そしてリューイが急に立ち上がり教室のドアのほうに走り出した。


 リューイが教室のドアの前につくちょっと前にドアが開かれた。


「すみませーん。遅れましたぁ」


 長身痩躯にボサボサな白い髪をした、紅い眼の少年が教室に入ってきた。


 まったく悪びれていないような声のトーンにフレイは、頭を抱えたくなった。しかしここで頭を抱えてはならないと考え、フレイは目が笑っていないとても良い笑顔でオズに話しかけようとした。


 しかし話しかけようとしたところリューイがオズに対して抱き着き、頭をグリグリとオズのお腹に擦り付けていた。


「にぃ、おそい」


 若干涙声でついでに頬を膨らませたリューイは、オズに対して言う。


「ごめんなリューイ」


 リューイの頭をなでながらオズは言うのであった。その様子を学生たちは興味深そうに見ていた。


「オズ、自己紹介をしろ」


 フレイはこの件について諦めの境地に立ち、そう言うのであった。


 言われたオズは何故か教壇に上り、室内を見渡す。


「えーっと、オズです。得意な魔術は特にありません。趣味は読書に料理、後は身体を動かすのが好きです。それと、今ボクに引っ付いているのは妹です。リューイって言います。リューイは、人見知りが激しいので注意して接してください。後―――」


「オズ、それくらいでいい。空いている席に座れ」


 オズが自己紹介とリューイの他己紹介をした。リューイの話をし始めると長くなると判断したフレイが途中で止めた。


「本当はもっと話したいのですが、しょうがないですね」


 オズはそう言いながら空いている窓際の席へついた。


 なぜかリューイは、オズの膝の上に座っていた。


「リューイ、なぜ兄ちゃんの膝の上に乗っているんだい?」


 オズが優しくリューイに問いかける。


 リューイは、なぜこういう事を言われたのか分からないとでもいうように首を傾げ膝の上から動かなかった。


 実際わかっていないんだろうなぁっとオズは、考え始めた。そして、オズ自身も仕方がないかと思い始めた。


 その様子を周囲の学生たちがどのように感じるのかは、学生本人次第だった。微笑ましいと思う者、関心を持たない者、そして当然イライラする者などがいた。


 しかしフレイが先手を打つ。


「では、皆知っていると思うが講義の概要について説明する。するといっても、一定以上の単位さえとればこの特待生クラスというものは基本的には、自学自習になる。それと講義に一切出ず、研究をして一定の成果を出すというのもある。成果が出なかったらその時点で一般クラスに落ちるし、下手したら退学になるから注意するように。まぁ、芽が出無さそうな研究は学院の承認が出る前に弾かれるから安心しろ。研究したいことがあれば、学院の事務課に資料を作って提出するように。それと、半期ごとにある試験に受からないと一般クラスに落ちるから注意するように。私からは以上だ。質問があればいつでも聞きに来るように。それでは5年間良い学院生活を」


 フレイはそう言い、教室を出ていった。





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