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第12話

「たいした話ではなかったですね」


「オズ、そういってはいけません」


 アルタナの用事をオズがたいした話ではないと言い。リュディアがオズを窘めた。


 アルタナの用事とは今期の王立魔術学院新入生のクラス分けについてだった。具体的には、特待生クラスの担任に多くの講師が手を挙げ収拾がつかなくなった事だった。


 今期の特待生クラスは、稀代の魔術師と名高いフレイ・ヴェルダンディの関係者やオルテシア王国の双子の王女など優秀なものが多くいる。


 普段、自身の研究にしか興味のないもの、向上心が強い魔術師たちは、研究の発展、出世のためのチャンスだと考えていた。


 もちろんそのような邪心がある者にアルタナは学院長として新入生を任せるわけにはいかなかった。そこでフレイに任せようとした。


「たいした話じゃなかった」


「そうだなリューイ。ぶっちゃけ、ボクらには関係ない話だったしな」


 リューイとオズの辛辣な会話にアルタナはもう涙目だった。


「うーーん……そうねぇ。それでいいと思う」


「いいんですか?」


「本当はアウラに任せたかったんだけど……。仕方ないわね」


「フレイ。ありがとうございます」


 フレイがアルタナの持ってきた特待生クラスの担任就任に対して肯定した。アルタナは断られることも覚悟していただけに驚きの声を上げた。そして間接的に今回のことに対して、関わりがあるリュディアもほっとしたような声で感謝を述べた。


「それにオズ君とリューイちゃんにも関係があるんだよ」


 アルタナが拗ねたような声を出しながらオズとリューイに対して言う。


「という事は、ボクらも特待生クラスですか?」


「えぇ、そういう事よ」


 オズが吃驚したような声を上げた。その声に満足したかのようにアルタナが肯定した。


「はぁ、特待生クラスですか。そう言えばどんな講義があるんですか?」


「師匠。まだ言っていなかったんですか?」


「あぁ、忘れてたわ。オズ、貴方は基本的にはホームルームだけ出ればいいから」


 オズがふと疑問に思っていた事を口に出した。


 その言葉を聞いたアルタナが急にフレイに驚いたような顔を向けた。フレイはそんなアルタナを気にすることなく、忘れていただけと言い、要約をオズに話した。


「それってどういう事?」


「オズ、自分がどういう立場か忘れてはいないわよね?」


「うん。一応オルテシア王国の宮廷魔術師に任じられてはいるけど……」


「一応って、貴方は正しくオルテシア王国の宮廷魔術師でしょ?」


 フレイの問い対するオズの回答が、リュディアにはお気に召さなかったようだった。その証拠にリュディアは、オズに対して目が笑っていない笑顔を向けていた。オズは居心地が悪そうに身じろぎした後、話が変な方向に行かないように気を付けようとした。


「それでボクが、宮廷魔術師という事と基本的にホームルームにだけ出るのって……」


 そこまで言いかけたオズは、何かに気が付いたようだった。


「まぁ、今更オズ君に教えることなんてないですし。それなら研究室に押し込もうかな? なんて考えていたんだけどね。それだと流石に本来の意図に反するかな、と考えを改めたわけだよ。それにこの学院は試験至上主義だから、極論だけど講義に出なくても試験の点さえ良ければ進級も卒業もできるからね」


「そうねぇ。確かに学院の講義でオズが学ぶような事ってないわね」


 アルタナが、学院の説明をしながらオズが学ぶことはないと言い、リュディアもそれに追随した。


「じゃあ、任務以外は基本自由という事?」


 オズは何か考えるような素振りをしながら言った。


「……うーん。それでも別に問題はないが一応はホームルームだけは出てくれよ? それと、まぁ問題はないか」


「ボクはそれで良いとして、リューイはどうするの?」


 フレイが考えながらそう言葉にした。そしてオズが新たな問題を提起した。リューイをどうするかという問題を。当のリューイは、オズの膝を枕に寝ていた。


「リューイは普通に講義に出させるわよ?」


 フレイがさも当たり前のように口にした。そしてそれが当たり前のようにリュディアとアルタナが頷いていた。


「リューイは情操教育という意味合いがあるから、講義は極力休ませない方針よ」


「ボクとリューイの扱いに差があるけど……」


「当たり前でしょ? リューイは可愛いのだから」


「リューイちゃんはオズ君と違って素直だし~」


「ま、まぁ、オズもそこまで気にしてはだめよ?」


 オズがリューイとの差を悩み始めたところ、フレイ、アルタナが比べるまでもなくリューイが可愛いと言い、リュディアは気にしてはだめといいにくそうに言った。


 オズとしては、リュディアの中途半端に慰めるようなことが一番ショックだった。


「リューイが可愛いのは知っていますから。じゃあボクは、ホームルーム以外ではフレイかアルタナの研究室にいるようにしますね」


「大枠としてそれでいいわ」


 オズの確認にフレイが納得を示し、フレイが入れた紅茶を楽しんで帰途についた。







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