―――郊外の工場跡地―――
「・・・・・・。」
不快だ。私、・・・・・・いや、俺は確かにそう思った。
どこからか持ってきたテレビには、奴が映っていた。いわゆる、伝記だとかインタビューだとかの類の番組なのだろう。少し前の映像だからか、少々ぶれたり色が悪かったりしている。それでも、俺の脳裏に奴の姿が浮かび上がるのには充分すぎる映像だった。
吐き気にも似た嫌悪感と、頭痛まで引き起こす程の苛立ちにさいなまれた。思わず歯ぎしりをしていたことに気づくと、自分らしくないな・・・、と髪を軽くかきむしった。
不快だ。何よりも、奴の存在が、不快だった。
チャンネルを変えようと、リモコンを手に取った。必ず、成し遂げてみせる。そう思いながらチャンネルを変えると、音楽番組だった。
偶然、クラシックの曲が流れてきた。はぁ、とため息をこぼしながらソファに座り込む。ぼんやりと遠くを見ながら、流れてくる静かな音に耳を傾けた。
ふいに、パタパタと軽い音が聞こえてきた。あぁ、彼女だ。そう思いながら、振り返ると少し拗ねたような表情をした彼女がいた。
「どうかしたかい、リリィ。」
「また気付かれた・・・・・・。」
何がだろう、と彼女をよく見てみると、片手にはネコじゃらしが握られているのが分かった。後ろからくすぐるなり、驚かすなりしたかったのだろう。それが分かると、思わずクスクスと笑ってしまっていた。それに対して、少し赤くなって膨れているのが目に映った。
こういう生活が大切だと思うことはある。しかし、もうこの生活が長く続くことはないのだ。
このことを彼女は知らないかもしれない。
だからこそ、今だけは奴のことを忘れていようとリモコンをテーブルに置きなおした。




