カナシミ
2日目
「ついに来たな。」
俺はそう思った。
自分の周りには金持ちがたくさんいたから「この間、ハワイ行ったんだ〜」なんて言葉を聞かされ続けたからってのもあるけど。
「一人旅って案外いいものかもしれないな〜。」
そして、俺はハワイの景色を見渡す。ついでにおなかもぐーっと鳴った。
「あーなんか食べたいなぁ〜。腹もなってるし、そろそろ昼飯にするとしようかな。」
「あ、先輩。卵かけ御飯はどうですか?」
誰か話しかけて来た。ものすごく自然に独り言の中に入ってきた。てか、先輩て何?・・・まぁいいや。取り敢えず返答しておこう。
「日本で普通に食ってんのに、ここで食べるとかアホだろ。むりな。」
と、突き放してみた。すると、
「いやいや、ハワイ、いや外国!
だからこそじゃないですか?なかなか外国まで行って和食にする日本人はいません。そう!先輩は伝説を作るのです‼」
と、返してきた。ありえない。これはないぞ。
こんな事って日本では無いぞ。もしかして、これがハワイの文化とかなんかかな?
取り敢えず、顔をみて話せば分かってくれるだろう。
そう思って卵かけ御飯の人の顔をみたら・・・・・・・・・知ってる顔だった。
「何でここにいるの?まさかついて来たの?あ・・れ・・・?俺、気配消したはず・・。」
「何ぱにっくになってるんですか先輩。
これじゃ、地元の人や観光客の人達に迷惑がかかっちゃいますよ。で、中2病みたいなボケかまさないでください。」
・・・・・
なんで後輩がここにいるのかな?
なんで今まで気づかなかったんだろう?
「葉山。何でお前がいるんだ?
ここはハワイだぞ。出かけるスポットとしては、ちと遠すぎやしませんか?」
葉山はほおを緩めた。
このほおを緩めた表情がいつも俺が見る葉山だ
「いやぁ〜。ずっと皆咲先輩をみてたら、こんなことになっていたんですよ。ところで、今さっき私の胸を見てたでしょ〜?「女の子にしては小さすぎやしないか?」とか考えてたりしてそうです。むー!」
「おれはそんな事考えないけど・・・・・・・。」
「そんじゃあ話を元に戻すよ。
結局何をしてこうなった?」
「私は皆咲先輩をつけてました。」
「公の場でストーカー宣言とはいい度胸してるな。周りがまた、騒ぎ始めたぞ。」
本当怖いわこの後輩。
「学校で先輩の目に光が無かったから気になって。もしや・・と思ったら、丁度町で皆咲君をみかけて。
それで、大きい旅行者用のケースを持ってるじゃないですか。
さらに、先輩の口の動きからして、ハワイと連呼していることが分かった。で、最終的には空港に辿り着いた。
これが何を意味するかが分かりました。」
ごくり、と唾をのんで俺は返答する。
「その意味とは?」
「一人だけハワイに行って楽しもうとしてたんでしょ?」
「え。」
「「え。」て何ですか「え。」て 」
「あ、いや、その通り過ぎてね・・・あはははは。」
あぶないあぶない。この後自殺しようとしてる事がばれたのかと思った。
安心していると、突然疑問に思った事があった。
「てか、何故来る事ができたんだ旅行代は高いのに。」
「普通なら高いけど、先輩の持ってた券はペアの旅行用の物だったから、1人の皆咲先輩の真後ろをつければ入れました。」
「ペア券・・・そうですか。
で、一緒に来るなんてとんでもない事をしたわけだ。」
「いやぁ〜それほどでもないですよ?親に連絡取ってOK貰ったし。
さらに、数合わせ的に役に立ったし。あ、もしかして駄目でした?」
おせーよ!そりゃもう役には立ったけどおせえよ‼
「今更だなおい。・・来てしまったんだからもう駄目だとは言えんだろ。」
「ふふ、こうなると分かっていたからこそ、こっそり付いて来たんですよ。」
「葉山さんマジ怖い。」
「将来は恐妻家になりそうですね先輩。」
「いや、冗談じゃない。」
「そういえば、冗談じゃない事故がこの間ありましたよね。」
え、突然何を言い出すんだ?
「トラックの突然の暴走で300人重傷を負って、100人死亡者が出た事故の事か?」
取り敢えず返答してみた。
あれはテレビでみても恐ろしかった。見たと言っても事故の後の街の光景の事で、街の家の294つが、トラックの暴走によりほぼ全壊していた。
「あの事故はまだ解決してないんですよね。だって、事件が起こる前にトラックの運転手は死んでいた事になるから。」
「死亡推定時刻が、事故が起こる1時間前になってるだなんて、謎だからな。」
「しかも、一人しかトラックに乗って居なかったなんて、どうやって暴走してたんでしょうか。」
「さあな」
「私たちの町で起こらなくて良かったですよね」
「やめろ。フラグが立つ。」
ド─────────────ン
手遅れだった。
目の前に駐車されていたトラックが突然に動き出した。
トラックはプロ並みのキレのあるカーブを見せUターン。
こっちに突っ込んでくる。
俺は、もう助からないかもしれない。そう思った。
ひたすら俺は願った。トラック止まってくれと。でも、トラックが止まってくれる事はなかった。
突っ込んでくる。
俺は、目をつむった。
大きな音が響いた。
ド────────ン!
トラックは止まった。
突然横転し、葉山を押しつぶした。
涙がこぼれた。
「葉山っ・・・葉山ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
涙は止まらなかった。