5/8
百人一首・第5首
次の日。
「紅葉ちゃん♪錦くんのケー番教えて~」
錦はモテる。
そんな兄を持つあたしは毎日先輩達に追われて逃げ回る日々。
そんなあたしだったが…
「こっち来て!」
そんな声が聞こえあたしは手を引っ張られ教室に入り込んだ。
そこの教室は電気がついてなく暗い、別世界だった。
「大丈夫ですか?」
「ありがとう。あなたは?」
「奥山 声聞です。」
あたしは感謝の意味をこめて詠った。
「奥山に~紅葉ふみわけ~鳴く鹿の~声聞くときぞ~秋はかなしき♪」
すると声聞は口をポカンと開けて
「どうしたんですか?いきなり?」
「ううん。ここは暗いなと思って。さっきあたしが詠った詩は実は寂しいと感じた時の詩なんだよ。音しかわからなくて寂しい。そんな気持ちがこめられた実は悲しい百人一首の一つなんだよ。」
すると声聞は
「寂しい…か…」
と呟き涙を流した。
「寂しい…そうだよ。私、寂しかったんだ。音しか聞こえないこの世界にいて…」
あたしは声聞の手をつかんだ。
「じゃあ、行こうよ。光のある風景の世界へ。」
そしてあたしは声聞と暗い教室から飛び出した。