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百人一首・第3首
「紅葉?ホラ。詠って。」
お兄ちゃんがせかす。
「わかってるよ。あしびきの~山鳥のを尾の~しだり尾の~ながながし夜を~ひとりかも寝む♪」
詠い終わるとあたしは顔を真っ赤にして顔をかくした。
「恥ずかしい…」
すると…
「ステキです!」
一人の生徒が部室に入ってきた。
あたしはついポカンとしてしまった。
「あ!すみません。部活中に。僕、足引 長名っていいます。柿本人麻呂のその詩は僕の名前の由来になってるんです。」
あたしはピンとひらめき
「確かこれは山鳥の尾を自分の恋と照らし合わせて詠った詩だよね。ロマンチックですね。恋心の詩が名前になっているなんて。」
すると長名は照れたようにして頭をかき
「父は山鳥のように大空を羽ばたくって意味だと思って名前をつけたらしいんですけどね。でも…僕はこの名前をすごく気に入ってます。百人一首の中の名前って…ステキですものね!」
あたしはその言葉に心を打たれた。
「長名…百人一首部に入らない?」