百人一首・第2首
「お兄ちゃ…お兄様。コレ…あたしが詠うの…?」
「それが百人一首部の部活内容だからな~」
ニヤニヤしながら言うお兄ちゃん。
つくづく嫌な奴だ。
「わかったよ!言えばいいんでしょ!」
そう言いあたしが息を吸った時…!
「すいません!」
と部室に人が飛び込んできた。
あたしは息がつまりゲホゲホとせきをした。
「大丈夫?!紅葉!」
心配して背中をさすってくれる露。
お兄ちゃんはとなりで爆笑してる。
「ああっ!ごめんなさい。少しかくまってもらえません…あーっ!」
その子はそうさけびあたしを指差した。
「…あたし?」
「百人一首部のハーレムちゃん!」
何そのあだ名?!
「で?どうしたんですか?」
あたしが聞くとその子はハッとして
「私、春過 衣美術部なんです。」
「ああ!美術部の期待の星ちゃん!」
「そうなんですよ~でも…期待されすぎてて先生が題材もすべて決めてしまって…自由な絵なんて一つも描けなくて…」
そうさみしそうに言い衣は空を見上げた。
「もう夏か…コンクールが近いのに…」
その時、あたしはピンときた。
あたしは百人一首をひっくり返して一つを衣に差し出した。
そしてあたしは息を吸い
「春すぎて~夏来にけらし~白妙の~衣はすてふ~天の香具山♪」
衣は目をパチパチさせて
「それは…?」と問う。
「時統天皇が詠った詩だよ。春が過ぎて夏が来たことを見たことで感じとるという詩なんだよ。昔の貴族は外へあまり出られなかったから…きっと体で感じることができなかったんだと思う。でも!衣はちがう。体、目、鼻、耳。全部で感じ取って大きな絵を描きあげることができる。これって現代人の特権だよ。衣にはまだチャンスがある。広い大きな絵を描いてね。」
衣は目を輝かせ百人一首を手に取った。
「うん!!私…頑張るね!!」
そう言う彼女の姿はとても微笑ましかった。