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異世界姉(兄)妹放浪記  作者: 一人貝
一章 幼年期
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一話 転生

「-----。---」


 目が覚めると、目の前に美人の女性がいた。何か喋っているようだが言葉がわからない。外国の人なのだろうか?

 その女性は今までに見たことなない透き通るような美しい金髪で、顔には優しそうな笑顔が浮かんでいた。

 さらに自分の居場所を確認しようとすると、自分の体とは思えないほどに不自由だった。まるで赤ん坊にでもなったような……


 そこまで考えたところで俺は戸塚の言葉を思い出した。

 たしか彼は『いいかい、今からいうことをしっかりと聞いておくんだよ。

 君たちが今から行く世界は剣あり、魔法あり、モンスターありのトンデモ世界だ。そしてその世界で君たちが生きていけるように僕たちは一つだけチートスキルを授けてあげる。ただそれは本人の一番本質的にあるところから来るものだから選ばせてあげることはできない。それにこちらから君たちが今から行く世界への干渉も出来ない。

 そして最後に一つ。君たちは0歳からの第二の人生を歩むことになる。どんな家の子になるかもわからない。そこは完全に運だね』と言っていたはずだ。


 それが本当のことならばここは異世界で、自分は0歳の赤ちゃんということになる。

 いまさらになって自分の血の気が引いていくのがわかった。


「------!? ---!」


 女性がこちらを見て何かを叫んでいるようだが言語が理解できない。だが、感じからして女性が俺を心配しているのであろうということはわかる。


「おんぎゃぁ! おんぎゃぁ!」


 俺の隣から声が聞こえてきた。どうやら隣に誰かいるらしい。横を見ると、女性によく似た色の金髪をした可愛らしい赤ちゃんがいた。

 多分この赤ちゃんが転生後の時雨なのだろう。姿は変わってしまっているが、俺に対して何かを言おうとしているのであろうことからそう推測する。


「----、-------」


 時雨を見て安心した俺を見てその女性は安心したのか俺たち二人をベッドらしき場所におろした。


 視界の端にあった扉が開いて男性が現れた。男性の身長は180㎝ほどで、体格もよい。髪は小説なんかでしか見たことのない銀髪で、短めにそろえている。

 それと、先ほどは女性の腕に抱かれていたため気づかなかったが、金髪の女性も女性にしてはかなり背が高めのようで170㎝はあるだろう。


 二人は日本語や英語ではない言語で会話をしながらこちらを見ている。どうやらこの二人の子供として俺と時雨は生まれてきたらしい。

 それに先ほどから家の中を観察していて分かったのだが、俺たちは転生物におけるテンプレ通りに、裕福な家に生まれてくることが出来たらしい。まだこの世界のほかの家なんかを見たことがないから断言をすることは出来ないが。


 それにしても言語がわからないというのは何かと不便だ。まるで知らない国に置き去りにされたかのような孤独を感じる(実際似たようなものだが)。


 とりあえずしばらくは彼らが使っている言語を解読することを目標にしたいと思う。




*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+




 俺と時雨が転生してから約二か月が経過した。もちろん地球での時間経過で数えた場合だが。


 とりあえずこの二か月で分かったことをまとめたいと思う。

 まずこの世界でも時間という概念があり、昼夜ももちろんある。それは部屋に時計と窓があったことからわかった。


 次にこの世界の文化は地球のものに通じるものがある。これはあの女性、というよりこの世界における俺の母親が童謡のようなものを(うた)ってくれたからである。二か月でだいぶこの世界の言葉を覚えることのできた俺はある程度は会話などを聞き取れるようになってきた。読み書きはまだできそうにないが。

 ちなみに童謡の内容はこうだ



 昔一人の勇者がいました


 勇者は―――へ行きました


 そこでドラゴンを倒しました


 その勇者は英雄になりました


 しかし勇者は消えました



 ここまで聞いたところで眠くなって寝てしまった(ちなみに時雨は一行目ですでに寝ていた)。

 ちなみに―――の部分は、まだよくわからない言葉のところだ。もう少し勉強が必要だろう。


 そして俺が気付いたことの中で最大級にやばいものがあった。それは――――――




















 どうやら俺は女として生まれてしまったらしい。


 俺が最初にわかるようになった言葉は『クリス』。最初はこれが時雨のこの世界での名前だと思っていた。しかし、言葉を覚えていくうちに、時雨のことは『アリス』と呼んでいるのがわかった。

 これだけならまだ男につけられた名前かもしれない、と思うだろう。

 しかし、それは間違いだった。


 これは少し下品な話になるが、ある日、まだ自分でトイレに行くことが出来ない俺はいつも通りおむつに小便をした。そしてメイドさん―――メイドがいる時点でこの家が裕福なのだということがほぼ確定した―――が俺のおむつを取り替えた時にたまたま自身の下半身を見てしまった(・ ・ ・ ・)。そこには男には必ずついているべきアレがなかった。

 俺はショックを受け、色々と現実逃避をした。俺の見間違いだったとか、実はこの世界の男にはアレが付いていないだとか、実は去勢手術をされていた、だとか…

 しかし、何度もおむつを替えてもらうたびにその幻想はぶち殺された。いや、ホントはわかってたんだよ?小便をするときに違和感があったり、母や父が俺を呼ぶときにも時雨と同じように『ちゃん』づけで呼んだりしてたからきっとそうなのであろう。


 はあ……俺はこの世界でしっかりとやっていけるのだろうか?

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